大阪府建築士会・女性分科会ら主催 (社)大阪府建築士会では、「天満天神繁昌亭見学会・落語鑑賞会」を8日 に開催した。同士会の会員会勢委員会女性分科会の事業活動の一環として、 近畿建築士協議会女性部会との共催で実施されたもので、落語鑑賞と設計者 の狩野忠正氏(狩野忠正研究所)の講演、見学会が行われ、会員ら約170人が 参加した。天満天神繁昌亭は、落語の定席演芸場として、591・06?の敷地 に、RC・S造3階建て、延床面積589・93?、収容人数256人の規模で、錢 高組の施工により2006年8月に竣工した。 施設の建設は、天神橋筋商店街主催の街づくりフォーラムがきっかけ。狩野 氏は、都市機能が備わってこその商店街とし、天神橋筋商店街には「市」は あるが、「都」がないと指摘。都は文化・雅、市は市場・商店で、「この二 つがバランスよく備わって活性化する」と語り、文化の場として落語の定席 づくりが発案された。 敷地は天満宮が提供し、建築費は全て寄付で賄われた。狩野氏は当初、実験 的な仮設劇場を提案したが、寄付金の集まり具合により設計を変更。最終的 な建築費は約1億8千万円となった。寄付者・企業は場内に吊るされた提灯 とロビー銘板に名前が明記されている。植栽では、狩野氏が教鞭をとる大阪 芸術大学の学生と上方落語協会の若手落語家の総勢60人が植え込みを行っ た。
設計にあたり狩野氏は、東京中の演芸場を全て見て回ったとし、環境に配慮しながら日本の伝統技術を取り 入れた。舞台は通常より高めにしつらえ、正面ルーパーは客席からもよく見え、換気口の役割も果たす。ま た、舞台の吉野檜、座席は企業からの寄付を受けたほか、ロビーには初代桂春団次が使用していた人力車が 設置されている。 狩野氏は、「資金がなくても提案は必要」とし、「シャッター通りの商店街を救うのは建築士らの専門家の 力が重要で、今回のような活動を他でもお願いしたい」と建築士の役割に期待を寄せた。 落語鑑賞会では、桂福丸さんの「時うどん」と露の都さんの「初天神」を鑑賞したほか、繁昌亭のバックス テージや舞台を見学した。