大阪経済活性化の焦点となる梅田北ヤード再開発(約24ha)の、梅田貨物駅の機能の移転先が解決した。吹田 市と摂津市にまたがる吹田操車場跡地(約49.6ha)に貨物駅の機能を移転させることで2月10日、鉄道建設・ 運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)と吹田、摂津の両市、日本貨物鉄道(株)、大阪府の関係5者は合 意協定を結んだ。これによって鉄道・運輸機構は4月から(仮称)吹田貨物ターミナル駅(約27.2ha)を建設 する。残る跡地(約22.4ha)についても吹田、摂津の両市が次世代型のまちづくりを進める。 《鉄道・運輸機構らJR梅田貨物駅移転に合意》 梅田貨物駅の機能の移転問題は、1987年から論議され始めた。当初は貨物駅の全機能を吹田市、摂津市にまた がる吹田操車場跡地に移転する計画であったが、91年に吹田、摂津の両市が環境悪化を理由に見直しを決定し 一時停滞。97年に国鉄清算事業団が吹田、摂津の両市へ梅田貨物駅の機能の半分を移す計画を提示した。 その後、日本鉄道建設公団(鉄道・運輸機構)ら関係5者は移転計画の基本協定を締結している。今回、関係 5者は「(仮称)吹田貨物ターミナル駅建設事業」の着手合意協定書を調印した。残る半分の機能はJR百済 駅(東住吉区)へ移す計画で同機構と大阪市でほぼ合意に達しており、4月から同駅の改修工事に着手する。 合意協定書によると事業は、跡地に着発線2線、留置線4線、コンテナホーム2面、中継コンテナホーム1 面、保線管理室、駅本屋、倉庫、自動車庫などを備えた吹田貨物ターミナル駅を建設し梅田貨物駅の機能の半 分を移転させる。年間貨物取扱量は100万トン以内に制限。鉄道・運輸機構は4月の着工、2011年の完成、開 業を予定している。 --------------------------------
【記者メモ】 一方で梅田北ヤード再開発(約24ha)も大きく前進する。先行開発区域(約8.6ha)では道路、下水などイン フラ整備が進み、2011年春のまち開きをめざしている。地盤ができれば再開発の目玉となる未来生活の創造拠 点「ナレッジ・キャピタル」と位置づけて、ロボット開発やユビキタス、IT技術などを通じて新しい産業を 育てるという。 同区域には、松下電器産業(株)や大阪大学、(株)JTB西日本、学校法人立命館、サイバーストーン (株)、関西電力(株)、大阪ガス(株)、(株)りそな銀行、大阪市らが入居の意欲を見せているなど、業 界の枠を越えて熱い視線が注がれている。 梅田北ヤードは、大阪駅前の「最後の一等地」と称され立地、環境、経済と、どの条件をとって見ても恵まれ ている。焦点は、それらの条件をどれだけ生かし切って新しい価値を創造できるか、だ。新しい魅力づくりへ の意欲を欠いて、万が一、この国家的プロジェクトが頓挫すれば関西経済全体に大きな損失を与えてしまうだ ろう。 梅田北ヤード再開発は、関西全体の飛躍に向けたひとつの次世代型まちづくりとして意義深いプロジェクト。 全体開発着工にメドが立ち、これからのまちづくり案に迷いも見られるなかで、国や府、市、関西経済界らに は安易な活性化を焦らず、人も建物も大阪駅北地区の中に馴染める環境を、ゆっくりと着実に形づくるという 姿勢で取り組み続けてほしい。(池上健史)