清水建設(株)(野村哲也社長)はこのほど、沿岸部に工場施設を持つ企業 の事業継続計画(BCP)を支援する「津波被害予測システム」を開発・実 用化した。同システムを使うことにより、実際の敷地形状や建物配置などに 基づいて、マップ上で浸水状況を再現しながら、避難行動の動的把握や損害 の高精度予測が可能となる。 津波被害に関する従来技術は、都市・地域レベルの広域被害を予測対象にし ており、街区・地区レベルで実際の建物や避難者個々の情報を反映してリス クを評価する技術は、これまでなかった。
今回開発した「津波被害予測システム」は、実際の敷地形状、建物配置及び従業員の在館状況などに基づい て、津波リスクを精度高く評価・把握できるのが特徴。 同システムは?津波の遡上解析?避難行動のシミュレーション?施設の構造安全性評価―の3つの要素技術 から構成。同システムを使えば、津波被害や避難行動を街区・地区レベルで詳細に予測できるため、企業が 施設配置、防護施設及び避難計画などの策定に役立てることができる。また、津波の遡上状況や避難者個人 の行動をCGで動的に表示することで、ハード面・ソフト面の対策を講じた場合の効果などを視覚的に把握 しやすくしている。 《津波リスクを高精度に評価・把握》 このうち、津波の遡上解析では、対象敷地の形状や建物の配置状況に基づいて、敷地内各地点での浸水の深 さと流れの速さを予測し、津波の伝播・遡上をマップ上で動的に再現。建物が流れを遮蔽する様子や道路の 浸水状況が視覚的に詳細に把握できる。予測モデルのベースとなっている流れの方程式は、内閣府の中央防 災会議で使われている方程式と同じだが、建物の大きさや配置の影響を再現するため、対象敷地では細かい メッシュを使った計算を行う。 また、避難シミュレーションは、在館者の配置や歩行速度、避難開始時間及び避難場所などを個々に設定し た上で、個人単位の避難行動を予測するもの。個人の避難行動はマップ上の点で表示され、現実に近い避難 状況を把握できる。なお同機能は、同社と東京大学が共同開発した火災時の建物内での避難行動予測技術を 応用したモデルを用いている。 同社では今後、同システムを用いて津波の影響を受けやすい沿岸地域の企業を主な対象として、事業継続計 画の策定支援業務を受託していく予定。受託業務に要する費用は、個々の施設の条件やユーザーの要望する 評価のグレードに応じて異なるが、数100万円から数1,000万円が目安となる。また、受託後調査に着手して から被害予測結果を提出するまでの期間は、概ね数週間から半年の予定。
【写真:津波遡上解析イメージ図】