カーボンナノチューブの分散化技術を開発
―高速気流衝撃処理で、バンドル状態を球状粒子の集合体に―
清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、ナノ素材の代表であるカーボンナノチューブ(CNTs)の普及の鍵を握るCNTsの分散化技術を開発しました。この技術は、CNTsを高速気流中で衝突させることにより、バンドル(凝着)状態にある粒子を解きほぐし、球状粒子の集合体に変えることが特徴です。これまでは、界面活性剤や特殊な溶剤の添加、UV照射などにより分散化あるいは可溶化させていましたが、使用した薬剤が残存したり、CNTsの物性変化や素材処理費を押し上げる要因になっていました。
CNTsは、素材名の通り、太さがナノメートル(nm=10−9m)大の炭素繊維のチューブです。一重(単層)のチューブ(直径〜2nm)と多層のチューブ(直径〜80nm)があり、いずれも長さは最長で数mm、重量は鋼鉄の1/4 〜1/6程度ですが、引っ張り強度は鋼鉄の100倍、導電性は銅の1000倍もあり、「産業革命を引き起こす夢のナノ素材」と言われています。
CNTsは、こうした優れた素材特性を備えていますが、その利用が進まないのは、分散性・可溶性に欠けているからです。原因は、炭素繊維でできたチューブがからみあったバンドル状態にあることです。このバンドルを解きほどいて分散化あるは可溶化することができれば、CNTsと各種の樹脂・金属などとの混合・成型が容易になり、その利用・応用が飛躍的に進むと言われています。
そこで当社は、7年の歳月をかけ、CNTs分散化の研究と実験を重ねてきた結果、高速気流中でCNTsのバンドルを衝突させると、バンドルがほどけて球状粒子の集合体に変化し、すぐれた親水性(水中での分散性)が備わることを発見。この分散化技術を「高速気流衝撃処理法」と命名するとともに、最適な気流発生装置や気流速度、処理時間を求め、現在、特許申請中です。添加剤や溶剤、特殊な処理装置が不要なことから、CNTsの物性変化の防止と素材処理費用の削減が可能になります。
高速気流衝撃処理とは、ファンの回転で高速気流を発生させる装置の中にCNTsを投入し、10分程度の間、100m/秒の回転気流によりCNTsに衝撃を与える処理方法です。この処理を施したCNTsは、バンドル状態がなくなり、直径が 1〜5μm前後の球状粒子の集合体に変化します。親水性が向上する理由は、球状粒子の表面に酸素が付着し親水性の官能基(水酸基・カルボキシル基)が生じること、そしてゼータ電位(液体中に分散された粒子の分散安定性=凝集しにくさの指標)が上がることと考えています。また、この処理により、CNTsのかさ密度が未処理の場合の2〜5倍になるため、容器などへの充填性が向上するとともに飛散防止にも貢献できます。
以 上
≪参考≫
CNTsは、1991年に飯島澄男博士により発見された物質であり、ナノテクノロジー・サイエンスの中心素材(物質の一次粒子の直径が100nm以下)として注目されている。CNTsの特性を利用したナノトランジスタ、ナノ電子線、二次電池、燃料電池、エネルギー貯蔵材料、超高感度センサーなどの応用研究が進んでおり、すでにエレクトロニクスおよびコンピュータ産業においては「革命」を引き起こし始めている。
◇カーボンナノチューブの電子顕微鏡写真
清水建設(株)
http://www.shimz.co.jp/
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