課題を克服し産学官連携強化へ 産学官の連携促進と成果の一層の活用を目指してーと題した「平成18年度国 土交通先端技術フォーラム」が19日、京都市左京区の京都大学百周年時計台 記念館で開かれた。今年は第一部の講演と第二部で防災の対策の取り組みにつ いて意見交換するパネルディスカッションに分けて開催。官公庁や関係自治 体、一般の聴講者ら約400人が熱心に耳を傾けた。
【写真】防災対策について意見交換する河田所長、布村局長らパネリスト 〜〜〜〜〜 パネルデイスカッション 緊急地震速報で防災意識高揚を 〜〜〜〜〜 冒頭、島有平近畿運輸局長の開会の辞に続き、鬼頭平三大臣官房技術総括審議官が「4回目を迎えた今回 は、新しい企画として緊急地震速報をテーマにしたパネルディスカッションを加えた。国民の防災意識がさら に高まることを期待したい」とあいさつ。 第1部の講演で、総合科学技術会議議員の本庶佑氏が基調講演「美しい国づくりへー京都の文化と科学技術 ー」、京都大学理事(研究・財務担当)で副学長の松本紘氏が特別講演「京都大学における研究推進戦略につ いて」、さらに総合政策局技術安全課課長の田村義正氏が国土交通省トピックス「国土交通省における産学連 携の取組みについて」、それぞれ講演した。 この中で田村氏は、国土交通省の技術開発は「社会的技術で、国民の生活・くらしへ還元するもの」と語り、 主要施策としての「地理空間情報ブラットフォームによる情報共有化」「防災行動に直結する予測情報の向 上」について詳しく解説。産学官連携の実用化に向けては、現在、資金面が不足していること、ニーズ発掘か ら実用化までの流れが分断されていること、画期的技術の開発・活用方策が不十分なことなど「連携不足によ る死の谷」を挙げ、今後は産学官のニーズに即した「明確な目標設定」と「連携強化」でこの死の谷は克服で きると強調した。 第2部のパネルディスカッションは、テーマに「緊急地震速報を契機に防災意識を高めよう」をテーマに開 催。コーディネーターを京都大学防災研究所の河田惠昭所長が務め、パネリストに日本放送協会大阪放送局の 堂元光局長、気象庁地震火山部管理課の西出則武課長、近畿地方整備局の布村明彦局長、南海電鉄の山部茂常 務取締役、京都府総務部の和田修防災監の五名が参加。 最初に河田所長が「市民・企業・行政の防災への取り組みの現況と今後の防災対策のあり方」として話題を提 供した。 河田所長は、いま分かっている活断層は全国で約、2000、伏在断層は約8000、地震活動期に突入して おり、今後30年以内に発生する確率は首都直下地震70%、直下地震の琵琶湖西岸断層帯地震9%、プレー ト境界地震の東海地震87%、東南海地震60〜70%、南海地震50%、宮城県沖地震99%と指摘。さら に近畿から中部地方にかけてマグニチュード七以上の活断層が全国でも圧倒的に多いと語り、「地震はいつ起 こってもおかしくない。市街地の広い土地で、安全な場所はもう日本にはない」と警告した。その防災対策で は「全国的に市町村レベルの危機管理能力が不足している。また、高速道路は命綱。コストだけでは考えられ ない時期にきている」と述べ、日常生活を支えている高速道路の建設促進を訴えた。 □□ 河田所長、布村局長ら意見交換 □□ 河田所長の問題提起を受けて各パネラーがそれぞれの立場で防災対策を語った。 気象庁の西出課長は、緊急地震速報の提供に向けて詳しく解説した後、「2月28日に運用開始に係る検討会 を開き最終報告をとりまとめ、有効に活用するための周知・広報活動を行いたい。早ければ最終報告のとりま とめから六カ月後には、国民に提供できるのではないか」との方針を示した。 日本放送協会大阪放送局の堂元局長は「災害報道はすべてに優先し、正確な情報をいかに早く伝えるかが原 点」と語り、放送と通信の関係では「いまはデジタル時代。ケイタイは有効な手段であり、緊急警報放送の実 用の段階を迎えている。年内にも実現の期待を持ちながら放送と通信の融合・連携を進めている」と語った。 近畿地方整備局の布村局長は「災害対策の基本は自助・共助・公助の総合であり、昔と変わらない」と強調 し、整備促進を図っている河川・道路・下水道による管理用光ファイバー網の活用などを挙げた。また災害情 報は「受け手の人にとっては、自分の行動や判断に使えてはじめて情報になる」と述べた。 南海電鉄の山部常務は緊急警報システムの概要を説明し、「緊急地震速報を受信した場合、列車無線で地震警 報を自動発報し全列車に非常停止を指示する」、また、京都府の和田防災監は「地震被害想定地図を8月ごろ までにまとめ市民に提供したい。災害防止は、顔のみえる環境が重要だ」とそれぞれ語った。