本音で語る行政のあり方 NPO法人地域デザイン研究会(平峯悠理事長)主催の2007フォーラム 「本音で語る行政のあり方 市民・住民のために改めるべきところと守るべき ところ 」が17日、平峯理事長はじめ約100名が参加して大阪市阿倍野区 の大阪市立阿倍野市民学習センター講堂で開催された。
【写真】フォーラム会場の様子
〜〜〜〜〜 白井尼崎市長らがパネルディスカッション 〜〜〜〜〜〜 フォーラムではまず、主催者を代表し平峯理事長が挨拶に立ち、同研究会の活動概要などについて「良いまち をつくるための新しいしくみづくりとは何か、を常に念頭に置いている」とし「パネリストの方々の本音を楽 しみにしている。真剣かつ活発に議論していただき、有意義な時間としたい」と語った。 パネリストに白井文氏(尼崎市長)、西村肇氏(前城崎町長)、杉立利彦氏(SIN生活空間研究所主宰)、 田村恒一氏(阪神高速道路?常務取締役)を迎え、コーディネーターを建山和由氏(立命館大学教授)が担当 したパネルディスカッションは、建山氏が提起した行政のあり方の問題点について、それぞれの立場での考え を主張する形式で進められた。 まず最初は先に行われた宮崎県知事選挙に触れ、首長が熱い思いを持つものの、行政のしくみを改革するには うまく運ばないケースが多々あり、その原因として役所の硬直化した体質にあるのではないかと建山氏が指 摘。その問題点や事例について、城崎町長を務めた経験を持つ西山氏は「実際に行政の現場に入ってみると、 優秀な職員が業務に当たっていることがわかったが、組織として全体を見た時、責任とスピードが致命的に欠 けているのを痛感した。スピードを阻害するのは予算主義。こんな行政システムは一刻も早く断ち切り、変え なければならない」、杉山氏は「たとえ予算がなくとも、知恵を出すことが重要なのに、計画段階からの仕込 みや、担当者が短期間で変わる経緯もあり、責任の所在が民間とは違うルールで動いていて仕事にロスが非常 に多い。成果に応じて給与が増える構造ではないことが行政の特徴であり、これからの行政を考える上でのポ イントになるのでは」、白井氏は「当市の職員には、現場がいのちだと徹底して話していて、必要な人材は市 民とのコミュニケーションを取るための引き出しと知恵を多く持っている人。あくまで市民の視点にこだわ り、できない理由や無理な理由ばかりを並べ立てるより、どうすればできるのかを考えてくれと言い続けてき た。そして現場においては全てを正しく掌握した上での正確な数字の裏づけや、その分析力が不可欠で、その 自負が市民との信頼関係構築につながり、説明責任を果たすこととなる」、田村氏は「世の為人の為、が行政 の大原則。その上に職員の改革マインドが求められる。行政の組織においては給与は無理でも人事を通してイ ンセンティブを上げるのは可能。責任とスピードの問題は民間のビジネスモデルを取り入れるべきであり、例 えば期限内に事業の成果が上げられなければ責任を取るなどのルール決めが可能な分野もある」とそれぞれの 立場からの見解を述べた。 また、常にユーザーの利便性を図ろうと民間は柔軟な姿勢を持っているが、そのような考え方を行政の現場に 取り入れられるのかとの建山氏の問いかけに白井氏は、「縦割り組織の中のみの認識で動いていて使命感を持 たず、やりたくないのに、とのやらされ感を持つケースが見受けられる。これではいけない。職員に達成感を 持たせるしかけが欠けている。誰でも仕事に対してやりがいを感じたいと思っているはずなのに」と語り、西 村氏は「自治体はその地域最大のサービス企業であるべき。官と民のバランスをうまく、スピーディに整理す る姿勢を」とした。 さらに市民との協働について田村氏は「苦情を寄せるクレーマーは耳の痛い存在でもあるが、そこに真剣に対 応できるかどうかが分かれ道となる。賛成の声が小さく反対の声が大きいのには情報公開の方法にも問題があ る」とし、これに対し杉山氏は「市民の合意形成を図るにはプロセスが最重要。不都合なものほど非公開にし てはならない」と言及した。 これらの話を総括し建山氏は、「市民との関わり、つながりなしに行政は成り立たない。理解してもらうため の対話・議論の場を設けてまず関心も持ってもらう。そして責任とやる気が両立できる組織作りが早急に求め られている。これらをふまえた新しいしくみが実現することを祈っている」と話し、フォーラムを締めくくっ た。