

全国の再生モデルに 千里ニュータウン再生に関するシンポジウムが25日、大阪府豊中市の千里ラ イフサイエンスセンターで、市民ら約400人が参加して行われた。千里ニュー タウン再生イベント実行委員会(委員長=加藤晃規・関西学院大学教授)の 主催。シンポジウムでは、鷲田清一・大阪大学総長による基調講演とパネル ディスカッションがおこなわれ、「日本各地のニュータウン再生のモデルと なるように」と、地域の力による取り組みを訴えた。 シンポジウムでは、初めに主催者を代表して加藤委員長が、千里ニュータウ ンは全国に先駆けてまちの課題を解決しながら、「これまでに培われたまち の活力を継承するという新しいステージに向けたまちづくりを検討する時期 にきている」と述べ、その実現のために先頃策定された再生指針を、同シン ポジウムを通して理解してほしいーとし、阪口善雄・吹田市長と淺利敬一 郎・豊中市長が、それぞれの立場から、同ニュータウン再生の必要性を説 き、シンポジウムの成果に期待を寄せた。
「(郊外)から(地域)へ」と題する基調講演で鷲田・阪大総長は、ニュータウンは ?ある意味で労働が免除されているまち ?社会の座標軸がシンプルに見えるまち ?公共サービスが充実しているまち ―と定義しながら、最も重要な点として「子供達が勝手に育つ空間をつくること」と指摘した。 その環境形成には、「地域の力」が必要だとしながら、千里の再生は、「日本のニュータウンの先駆的モデ ルであり、これまでの活動を振り返りいろんな要素を検証し、ニュータウンのトップバッターとして取組ん でいかなければならない」と、その意義を強調した。 続くパネル討論では、加藤委員長をコーディネーターに、佐藤友美子・サントリー次世代研究所部長、高橋 叡子・大阪国際文化協会理事長、増田昇・大阪府立大学大学院教授、蓑原克彦・社不動産協会副理事長、関 西支部長に鷲田総長をパネリストとして、‘千里ニュータウンの再生に期待すること’をテーマに意見交 換。この中で、千里ニュータウンを含む北摂地域について、「新しいものを受け入れにくくライフスタイル の変化に対応できない」「学生に人気がない」などを‘弱み‘とする一方で、「ポテンシャルは高い」や 「公園や緑化率が高く、歩いて暮らせるなど定住性も高い」との‘強み‘も指摘された。 再生に向けた取り組みでは、インフラやハードが充実しており、守るより活用の観点から「老朽施設のリニ ューアルを機に人が集まる場所の整備を」、「地域に必要な拠点は何かを考え、外部の人も迎え入れる」、 「不便な場所でも関心があればポジティブな人は集まる」など、「核」となる拠点・施設等の必要性が上げ られた。 また、「住民がまちを愛していることが基本」や、「賑わいが好きな人や静けさを好む人など、相反する目 的で議論することも大事」など、パネラーがそれぞれの立場で意見を披露。これら討論を踏まえ加藤委員長 が、千里ニュータウンの課題がある程度は見えてきたとし、「再生への取り組にはプロセスを重視しなが ら、これまで全国に発信してきた先進性ある千里ブランドを地域の力で伸ばす方向性を期待したい」と締め くくった。 今回のシンポジウムは、「千里ニュータウン再生指針」の策定を契機に、その周知を図るための一環として 開催されたもので、千里ニュータウン再生連絡協議会メンバーの大阪府、豊中市、吹田市、独立行政法人都 市再生機構、大阪府住宅供給公社、(財)大阪府タウン管理財団並びに近畿地方整備局の後援。