沿線開発とアミューズメント施設、U−40コンペの関連行事 (社)日本建築家協会近畿支部(吉羽逸郎支部長)の第3回まちづくりセミ ナーが9月28日、大阪市北区のハービスENTで開催された。今回は、大阪 府立大学教授で建築史家の橋爪紳也氏と、編集集団140Bの江弘毅氏が‘沿線 開発とアミューズメント施設’をテーマに対談が行われ、JIA会員、一般 から約90人が参加した。 対談は、近畿支部が主催する「六甲山上の展望台」の設計提案を求めるU− 40設計コンペティションの関連事業として実施されたもの。セミナーでは、 初めに橋爪氏が、阪神間における電鉄会社による沿線開発の歴史と変遷、現 状などについて報告した。 阪神間の沿線開発について橋爪氏は、「阪神と阪急の両社が、大正末期から 昭和初期にかけて競うように進めてきた」とし、両社がそれぞれデベロッパ ー的役割を果たしながら開発を進めてきたが、それぞれの企業カラーの違い により沿線文化も違ってきたと述べながらも、その在り方を今日的にリノベ ーションする必要があると指摘した。
沿線開発については、「土地開発」と「生活提案」により、住宅や宅地の供給が行われ郊外居住が定着する とともに、余暇生活の発展により、それまで一部の人達が利用していた保養地(リゾート地)の大衆化が進 み、「六甲山もその流れの中で開発されてきた」とした。 特に、阪神・阪急によるケーブルカーやロープウェイ、ホテル建設など、「両社の競争により大衆化が進ん だ」と指摘。多くの人で賑わった要因として、下界との違いによる▽非日常のデザイン、大衆化にふさわし い場としての▽リゾートのデザイン、展望する場の象徴としての▽眺望のデザインーを上げた。しかし、ラ イフスタイルの変化や余暇の多様化によりかつての賑わいもなく、展望台が撤去され、ホテルも閉鎖される などの現状を指摘して、今後の沿線開発には、「ライフスタイルへの対応、ブランド力の向上を志向するリ ノベーションが必要だ」とした。 続く対談では、六甲山への集客や他府県から見た六甲山の印象などについて、橋爪氏と江氏が、それぞれ語 った。橋爪氏は、高野山や比叡山は寺社があり、それが集客力を高めているが、「六甲山には芯になる場所 がない」とし、江氏も「山上に賑わう場所、中心がない」と指摘。しかしながら、都心に近く「街のすぐ近 くに別世界があり、山を降りれば神戸、有馬へ行ける」(橋爪氏)、「六甲山に限らず、神戸の観光スポッ トには近郊の人が集まってくる」(江氏)など、アクセス面の優位と立地の良さを上げた。 他府県からの見方として橋爪氏は、各地の名所やスポットには、「写真一枚を見ればその場所が解るような ポイントがあるが、六甲山にはそれがない」と、魅力的な場所づくりを示唆、江氏は、グローバルスタンダ ードな開発も良いが「ローカリズムが大事」と地元の特徴を活かすべきだとした。 U−40コンペは、旧回る十国展望台の跡地に、新たな展望施設の整備にあたり、JIAの40歳以下の会員か らアイデアを募集しているもの。橋爪氏も審査委員のメンバーとして、12月に最優秀賞などを決定する。な お、入選作品の発表は、2次審査とともに12月15日に、六甲ケーブル山上駅の六甲ヒルトップギャラリーで 公開形式で開催される。