登録建築家協会設立を (社)日本建築家協会の次期会長に就任する出江寛氏が23日、大阪市中央区の綿業会 館で講演を行い、今後のJIA活動への取り組みについて語った。近畿支部の総会に 先立って行われたもので、講演には支部会員ら約100人が出席。講演で出江氏は、設計 業務環境の改善に向け、建築確認申請時の設計契約書の添付や登録建築家制度の確立 についての考えや方策を語った。 出江氏はまず、「建築は正直でなければならない」としながら、現在は建築家を取り 巻く環境が悪すぎ、「それらが姉歯問題に端を発する一連の耐震偽装問題につながっ た」とし、その一例として、建築家をコンペで競わせながら、設計料無料をうたい文 句とする住宅メーカーの存在などを挙げ、また、「設計料はサービス」とするゼネコ ンにより、契約直前で仕事を奪われた例を引きながら、「無料では競争にならない」 と、専業建築家を取り巻く現状を指摘した。
出江氏は、「建築は超高層にしろ個人住宅にしろ、本来、おもしろいもの」で、若い人が興味を持つはずだ が、「生活するのがやっとの状況では、優秀な人材はゼネコンやハウスメーカーに流れている」とし、「専 兼分離による職能の確立」を掲げたJIA設立時から、「何ら状況は変わってはいない」と指摘した。会長 就任後の活動として出江氏は、設計環境の改善はJIAの会則にも謳ってあり「必要なこと」として、設計 報酬の法定化と、それに先駆けての登録建築家協会の設立を訴えた。 登録建築家は、「意匠も構造も設備も建築士として括られている」ことから、それら各専門の建築士が専兼 の別なく集まり、登録建築家協会を設立して、専業団体であるJIAとともに団結して、設計環境改善に関 する要望などを関係機関に働きかけようとするもの。また、設計料問題では「現在の設計入札の現状には想 像を絶するものがある」とし、設計入札でのダンピングは、過去の実績を重視するためであり、そういった 部分も、若手や新人の建築家の育成を阻んでいると指摘した。 設計報酬の法定化では、台湾で実施されている建築確認申請時に設計契約書の添付を義務付け、それがなけ れば確認申請が降りないという方式を提案。確認申請が降りなければ着工が遅れるため、施主側に対しても 説得ができ、「ゼネコンやハウスメーカーも契約が必要となってくるだろう」とする。 これに関して出江氏は、既にゼネコン団体と懇談し、「ゼネコン側も設計報酬が得られれば反対しないは ず」と、ある程度の感触を得たーとする。これらの実現にあたっては「最初は、どこかの自治体が条例の形 ででも実施してもらえれば」とし、今後、JIAとして、各支部や地域会の協力を得て外部に向かって意見 を発信したい意向を明らかにした。 出江氏はまた、意匠建築家が軽んじられる傾向について、「住宅とは人の心を癒すもの」とし、「建築とは 文学であり、哲学である」との持論を展開しながら意匠の重要性を認識しながら、「建築士の品格を高める こと」を強調した。