「三方良し」公共事業のためのハツラツ現場推進会議を設置 近畿地方整備局は7日、大阪市中央区の國民会館で、発注者と受注者で構成す る「三方良し」公共事業のためのハツラツ現場推進会議を設置し、初会合を開 いた。 同会議は「国民」の利益を念頭に置き、「発注者」と「受注者」双方が意見と 知恵を出し合い建設現場での諸課題を改善、3者の利益に繋がる「三方良し」 を目標とするもの。
会議には発注者側から近畿地方整備局企画部の安藤勲技術調整管理官(会長)をはじめ、近畿2府5県(福井 県を含む)の土木・技術管理担当課長、受注者側から各府県の建設業協会専務・常務理事ら35人が出席。こ うした組織的な設置は全国でも初めての試み。 近畿整備局は「三方良し」を推進するために、工事監督における「ワンデーレスポンス」の試行を今年度内に 試行する方針。 〜〜〜 近畿整備局が全国で初めて。受・発注者一体で諸問題を解決 〜〜〜 冒頭、安藤技術調整管理官があいさつに立ち、建設投資の削減など公共事業を取り巻く厳しい環境にふれた 後、「こうした環境の中でも、我々は社会資本整備を着実に進め、納税者である国民のために良い品質を適正 な価格で提供しなければならない責務・使命を担っている。現場では様々な問題が起こっている。これは発注 者、また受注者だけの問題ではない。受・発注者が一体となって考えていかなければならない」と設立の目的 を語った。 国土交通省が試行を目指している工事監督におけるワンデーレスポンスとは、監督職員が個々に実施していた 「現場を持たせない」「速やかに回答する」という対応をより組織的・システム的なものとし、工事現場で発 生する諸問題に対して迅速に対応していこうというもの。 平成18年9月に開かれた国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会の中間 とりまとめでも、小循環(個々の工事において品質の高い成果が確実に得られる仕組み)を構築するための具 体的な取り組みの一環として、ワンデーレスポンスの実施により問題解決の迅速化を図ることが明記された。 いま工事現場では、発注段階で予見不可能な諸問題が発生した場合、対処に必要な発注者の意思決定に時間を 費やす時があるために実働工期が短くなり品質が確保されないケースが発生しているという。 請負者や発注者に課せられた使命は「良いものを、早く、安全に適正な価格で国民に提供すること」であり、 「速やかに工事を完成させること」が請負者と発注者の共通目標。 安全と品質を確保した上で、請負者と発注者が協力して適切な工程管理を行うことにより、速やかに工事を完 成させ、早期に供用開始することで双方にメリットが発生すると言われている。 具体的にワンデーレスポンスで期待できる効果は、 ?手持ちの減少による効率的な現場施工の実現 ?「報・連・相」(報告・連絡・相談)による情報共有の実現 ?現場トラブル拡大の防止 ?スピード感覚を要求されることによる緊張感や意識改革 ?コミニュケーションの向上による経験・技術力・判断力の伝承 ?行政サービスの向上 ?コスト縮減。 こうした背景を踏まえ、近畿整備局は、今年度にも平成20年3月までに完了する3億円以下の工事のうち、 各事務所2〜3件を対象にワンデーレスポンスを試行したい考え。試行されると、監督職員は請負者が発議し た協議及び承諾を対象に「即日回答」しなければならない。また、請負者はワンデーレスポンスを高めるため に各作業の関連や進捗率などが正確に把握できる綿密な工程管理などが求められる。 今回の会議では、このワンデーレスポンスの試行とあわせ、近畿整備局が3年前に設置した設計者・施工者・ 発注者の三者で工事や施工段階で発生する問題・課題について協議・調整する「工事施工調整会議」の概要も 説明された。 ワンデーレスポンスの事例紹介では、いち早く取り組んでいる京都府土木建築部指導検査課から「経験や技術 力の伝承につながり、ものづくりの楽しさが復活する。打ち合わせのやりとりは、キャッチボール。 とりやすい球を投げないと、返球は遅くなる」とアドバイス。施工者の玉井建設?(京都府建設業協会会員) は、日本TOC推進協議会の岸良裕司理事の指導を得て実施したTOCクリティカルチェーンによる経営改革 施工管理理論実証実験の事例を報告。この中で「施工マネジメントを実施することで、考える訓練になる。 人材育成にも効果的。工期短縮も無理なく実践でき、逸失利益を防止できる手法」と、そのメリットを挙げ た。 講師の岸良理事は「これらは昔からやった方がよいと言われたことばかり。我々はそれをおろそかにしてい た。人・信頼・利益を創り、技術を伝承できる。善はいそげ」と力説した。 最後に建設業協会から、「ワンデーレスポンスの意味も知らなかった」「非常に参考になった」、府県側から 「職員の意識改革にも有効」「事務所に持ち帰って検討したい」などの感想が寄せられた。 近畿整備局も、もうすこし掘り下げた議論を行うため10月初旬にも2回目の会議を開く予定。