防災対策でNPOと連携へ 社会基盤整備は国民的合意が必要 (社)土木学会(濱田政則会長)が20日から22日の3日間、「土木のグローカリゼーシ ョン 世界市民になろう 」をテーマに立命館大学びわこ・くさつキャンパスをメイン 会場に開催していた全国大会が大きな成果を収めて閉幕した。関西では、1998年に神戸 大学で開かれて以来8年ぶり。この全国大会の席で、濱田会長は「自然災害軽減への土 木学会の役割」と題して21日に大津プリンスホテルで特別講演を行い、今後、土木学会 が果たすべき役割の一つとして、NPOとの連携を挙げた。また、社会基盤施設を適正 に整備していくためには「国民的合意形成が必要。市民参加型の防災運動が重要であ る」との認識を示した。 ※写真:講演する濱田会長
濱田会長は、まずはじめに「この20年間、地震・津波による死者・行方不明者数は約55万人を数え、その90% 近くがアジア地域。特に貧困層の増大が災害を拡大し、このことがさらに貧困の度合いを増加させている」と 指摘。最近の風水害の原因としては、「自然環境の変化と社会環境の変化の双方が考えられる」とし、地球の 温暖化や海面水温の上昇、都市地域のヒートアイランド現象などを挙げ、「巨大ハリケーン、台風や異常豪雨 の発生の要因ではないかと推測されている」と語った。 土木学会が今後果たすべき役割としては、今年5月に土木学会員と日本建築学会員の有志によって設立された NPO「国境なき技師団」を紹介し、「土木学会もNPOと共同で、自然災害の軽減に向けて社会に貢献して いかなければいけない。最近、土木でも不正事件が起こっている。NPOとともに公助・共助・自助の国民運 動の輪の中に積極的に参加していくことが、土木技術者や土木界への信頼回復にもつながる」と語った。 「予想を超える自然現象による災害」「設計値を超える外力」に対しては、「社会基盤施設をいかに適正に整 備していくかが防災対策上の重要な課題であるが、適正水準の設定には国民的合意形成が必要。合意形成のた めには、情報公開はもちろんのこと、市民参加型の防災運動が重要だ」と強調。低頻度大災害に対しては、 「ハード対策をどの水準まで引き上げるのか、ソフト対策でハード対策の不足をどのようにカバーするのかが 課題」とし、「ハードとソフトを組み合わせて対応すべき」との方向性を提案した。また、リスクを評価する 場合、「社会へ与える長期的なインパクト、国力と国際競争力の低下、国土の保全と景観維持など、様々な要 素を考慮することが必要だ」と述べた。 土木学会が果たしてきた役割としては、新潟県中越地震やスマトラ沖地震・津波など、国内外で発生した大規 模な自然災害に対して、この10年間に13の調査団を海外に派遣、国内では18回にわたって災害調査を実施して きたという。この調査結果は、「その後の自然災害軽減のための研究資料として、世界の研究者と技術者に利 用されている」と語った。