清水建設(株)(野村哲也社長)はこのほど、摩耗が少なく、従来の3倍の長距離をシ ールド掘進できる「長寿命カッタビット」を開発・実用化した。このカッタビットをシ ールド機に取り付ければ、カッタビットを交換することなく、長距離シールド工事を施 工できるため、15%の工期短縮を実現することができた。 シールド機のカッタビットは一般に、一定距離を掘進するとカッタビット先端のチップ に摩耗や欠損が発生する。このため、長距離のシールド工事ではカッタビットの交換が 必要となる。一般的なシールド工事のカッタビットの交換は、立坑を築造してからシー ルド機のカッタ部分を立坑内に貫入する方法や、地山を地盤改良してシールド機側から 掘削して行う方法などがある。 しかし、カッタビットの長寿命化に成功すれば、これら交換自体が不要となり、長距離 シールド工事のコスト・工期を縮減できることになる。
今回開発した「長寿命カッタビット」は、超硬合金製チップの素材として、耐摩耗性で非常に優れたE2材 を、耐衝撃性を有するE5材で包み込むことにより、両素材の長所を兼ね備えたチップとしたことが最大の特 徴となっている。 従来のカッタビットに比べて耐摩耗性を3倍に高めており、カッタビットの摩耗が大きい礫質土などの掘削 現場では、従来ビットは1.5から2?が掘削限度であるのに対し、同カッタビットは3倍以上の5から8?を 掘削することができる。また、同カッタビットの性能は、都市部の地下鉄工事現場における実掘削で確認して いる。実掘削した地盤は、洪積層の粘性土・シルト、礫質土、砂質土と多様だったが、カッタビットの摩耗は 従来ビットに比べ3分の1から4分の1と少なく、また欠損箇所がないことも確認した。 延長5?の長距離シールドトンネルを掘削する場合、従来カッタビットは2回以上の交換作業が必要となる が、同カッタビットを使えば無交換で施工できる。その結果、カッタビットを交換する場合に比べて立坑築造 や地盤改良などの工程がなくなるため、工期を15%縮減できる。 同社では今後、長距離・高速施工が求められる道路トンネル工事などへ、同カッタビットの採用を積極的に事 業者らに提案していく考え。