センサーで建物などの情報を察知、自在に移動する「車いすロボット」を開発 《福岡市ロボット特区の公道で実証実験に成功》 清水建設(野村哲也社長)は、建物や周辺施設から必要な情報をセンサーで取 得しながら屋内・外を自在に移動する「車いすロボット」を開発。このほど福 岡市の「ロボット特区」事業の一環として、市内のアイランドシティの公道で 市の協力を得ながら進めてきた実証実験を終了し、その信頼性や安全性を確認 し、実用化にめどをつけた。
今回の「車いすロボット」は、ロボット技術と建築物の融合した利便性が高く安全・安心な生活空間創出研究 の一環として開発したもの。自動走行する「車いすロボット」の公道での実証実験は国内ではこれが初めての 事例となる。 清水建設では、高度な画像処理など複雑な処理や判断を行うことなく、建築物やその周辺施設側に設けた無線 タグと情報のやり取りを行うことで、屋内・外を自由自在に移動する信頼性、安全性に優れた実用性の高いロ ボットの開発を進めており、その実用化に向けて各種実証実験を計画。 今回の実験に使用した「車いすロボット」は、市販の電動車いすをベースに、新たに制御装置や各種センサー などを組み込んだもの。具体的には、移動する環境を認識するためのレーザーレンジセンサー、建物や周辺施 設などから情報を取得するためのICタグアンテナ、障害物検知及び追随移動用の超音波センサーなどのセン サーシステム、車輪駆動用の制御装置及び緊急停止装置などの安全装置など。 ロボットの機能としては「自動」「追随」「手動」の3つのモードを設定。「自動」モードでは、ロボットは 周囲の建物、壁、塀などに埋め込まれたICタグの情報や、レーザーレンジセンサーで検知した移動経路の環 境条件の情報等をもとに、道路や壁に沿って移動する。また「追随」モードでは、超音波発信機を所持した人 間の後を追うように移動。さらに「手動」モードでは、通常の電動車いすと同様に乗車する人の操作で移動す る。 実験は基本性能実験、主要性能実験、最終確認実験の3段階に分けて行われ、必要なセンサーやコンピュータ ープログラムの性能、建物側に設ける設備の条件などを明らかにすることができた。また、実用化に向けての 改良・改善点を把握することもできた。 今後は、実用化に向けての技術面での改良、ロボットに適した建築設計のあり方の検討などを進めていく。ま た「車いすロボット」を発展させて、病院や介護施設における高齢者向けのロボットシステム、オフィス空間 における配送ロボットシステム、空港の荷物カートやスーパー・デパートの買い物カートなど実用性の高いロ ボットシステムへの応用展開を図る計画。 さらに、こうした取り組みを通して屋内・外の測位方式やセンサー、画像処理やワイヤレス通信などの要素技 術を取り込み、将来的にはロボットと人間が共生する新しい生活空間や地域空間の実現をめざしていく考え。