トップページ  ▶建設業の新たな針路を探る  ▶三次元電子地図は画期的な成果

三次元電子地図GEO-SIIS

  産・学・官の技術を融合した「高精度空間情報統合システム(GEOーSⅡS)」は、京都大学大学院工学研究科(都市環境工学専攻・ジオフロント環境工学講座)と近畿地方整備局(九頭竜川ダム統合管理事務所)らによって開発されたもので、これからの防災・維持・管理を切り開く画期的なシステムとして注目されている。 
具体的には、航空レーザー測量や航空写真測量と共に、高精度GPS移動体測量を組み合わせた方法により、広いエリアを効率よく、これまでよりもはるかに高い精度の測量データを取得している。これに基づいた高精度な三次元電子地図は、地図データをTIN化してデータ量を抑えることでパソコンの動作速度の低下を防ぎ、さらに三次元グラフィックエンジンを新開発し、高速処理を可能にした。これによってユーザーは、パソコン上で三次元地図をマウスなどの操作でスムーズに動かすことができる上、観測対象地点の座標・距離・断面・面積・体積など、高い精度で測ることができるという。
最高水準の3D表示性能の特徴は、①高精度かつ広範囲の大容量データも、リアルタイムで滑らかに表示②外国製ブラックボックスのソフトウエア部品を一切用いていない自作ソフトウエア。国産ホワイトボックスのため、細かいニーズに対応して改良も可能③独自の高性能なデータ管理技術を活用。高速でありながら広範囲のデータ表示を実現するなど、一〇㌢精度の航空測量データ・空撮画像を劣化させることなく広域に表示。また、HDDに蓄積のデータをリアルタイムに読み出すことで、理論的に無限大のデータを扱うことができ、さらには一〇億ポイント以上(約一ギガポリゴン以上)の規模を持つTINタイプの空間データを俯瞰。高精度GPSによる移動体測量データをもとにTIN生成アルゴリズムを採用し、忠実な地形表示を実現している。
確実な情報共有と、迅速・的確な意思決定を支援する同システムは、今後、幅広い分野での活用が期待されている。

  足立部長 さきほどお話のあった大学の法人化に関連してですが、大学もビジネスに繋げていく仕組みを持ち始めておられるように感じています。大学は、これまでどちらかと言えばタテ割りでした。それを横断的に繋いで全体のシステムとして開発するとか、また、セールス面でアピールしビジネスに繋げていこうと。その意味で、今後は新しいビジネスマッチングが生まれてくるのでは、と期待しています。
  大西教授 もし法人化に伴って、おっしゃるようなビジネスマッチングが出来るとすれば、大学の研究者も自分たちの研究がどこに生かされているかを理解できていいのでしょうが、まだこうした考えが全体ににまで浸透しているとは思えません。
   足立部長 先端技術交流会議では、シーズ発信型の場とニーズ発信型の場をつくり、情報をどんどん発信することで、次はニーズ発信側がプロジェクトファインディングに動き、シーズをそこに取り込んで新しいプロジェクトにしていくようなことまで描いています。
  大西教授 それが具体的なプロジェクトとして、プロトタイプとして目に見える形で出てくると非常に分かりやすいと思います。
  足立部長 そうですね。先生にもご指導いただき京都大学などと共同開発した三次元電子地図の「高精度空間情報統合システム(GEOーSIIS)は、ニーズとシーズがマッチングした画期的な開発でしょう。写真とデジタル地図を重ねて三次元データにした様々な情報を大画面で共有でき、精度も飛躍的に向上しています。(別掲参照)。
  大西教授 これは産・学・官のプロジェクトで出来上がった一つの大きな成果です。
  足立部長 このシステムの開発は、平成十六年に近畿地区も台風で大きな被害を被ったのを機に、地域の応急復旧計画を直ちに作成できるシステム開発を先生たちにご相談したのがきっかけでした。最新のGPSを使われているのですね。
  大西教授 はい。通常のGPSでは数十センチ程度の誤差があり、この目的のためには精度が劣るために効果的に使われていませんでした。そのGPSにFKPという高精度の新しい測量技術を取り込んで整理し直し、低コストながら数百平方㌔㍍の地域で誤差一〇センチ以下という高精度な地形データを作成しています。それを使ってリアルな三次元の絵を描けるようになりました。視覚的、直感的にデータや画像などの情報をいち早く検索でき、一般の人にも非常に分かりやすいシステムに出来上がったと思っています。
  足立部長 洪水の水深にしても、土砂崩れの土量にしても、すぐ分かります。結果的に精度が非常に良くなったことから洪水氾濫の再現も可能となり、動くハザードマップとしても活用できるようになりました。
  大西教授 技術的には、すでに三年ほど前にアイデアがあり、基礎的な開発をしていました。実証する場がなくそのままになっていましたが、この話が出てきた時に、もう少し改善すればこの技術が使えると判断しました。
  足立部長 地震対策でも非常に有効だと思います。いずれ紀伊半島の国道42号などのデータを整備して、懸念されている東南海・南海地震に伴って発生が予測されている大規模な津波に対してのシュミレーションを行いたいと考えています