住宅耐震化、密集市街地解消へ 大阪府の住宅政策を担う大阪府住宅まちづくり部。府営住宅の整備をはじめ、府有施 設の耐震性の向上を図りながら、景観や地域活性化など、良質なまちづくり形成に向 けた取り組みを推進している。その大阪府における建築行政をリードする住宅まちづ くり部のトップとして就任した吉田敏昭部長は、事業の大きな柱である安全・安心を 確保しながら、居住魅力の向上に向けた施策の推進に意欲を見せながら、「府民の目 線に立った事業執行を」と語る。その吉田部長に、今後の事業展開や取り組みについ て聞いてみた。
――就任にあたっての抱負から。 「職員の協力の下、誠心誠意で仕事を進めていきたい。我々の仕事は府民の暮らしの基盤となる住宅まちづ くりを行っており、そのためには実際の施策や事業で目標を持ち、常に府民の目線に立ってやっていくこと だと思っております。そのためにもPBCAを意識して業務にあたっていきます」 大阪維新プログラム(案)や将来ビジョン・大阪などに示された大きな道筋に沿い、業務の推進に際しては 職員との「共通認識」が重要とし、可能な限り対話と意見交換を交わしながら行いたいと語る。 ――今年度の事業推進のポイントは。 「住宅と府有施設の耐震化、密集市街地の防災化という安全面が大きなウエイトを占めます。耐震10ヵ年戦 略プランに基づき、府有建築物については取り組みを進めておりますが、特に民間の木造住宅の耐震化での 目標達成を如何にクリアするかが課題となっております」 この中では府民に対する耐震化に対する認識を深めてもらうことがポイントとし、昨年から府下各地のイベ ントに出向き職員がPRに務めてきたが、これら草の根的活動にはおのずと限界があるとする。 「4月から、地域力再生ということで府の土木事務所にも建築スタッフが配置されましたので、これら職員 を中心に取り組みを進めていく予定です」。この取り組みでは、河内長野市が自治会の集まりに職員を派遣 して説明会を開いたところ、耐震診断率がアップしたことを上げ、府としても市町村と連携し、同様の手法 により意識を高めたいと地域密着型の取り組みを進めるとした。
また、一般庁舎や府営住宅、府立学校、警察署などの府有建築物については各実施方針に沿って耐震化に取 り組んでいる。しかし、耐震化を進めていくにあたっては年次計画をつくる必要があるとする。 「施設によっては統合や廃止がある場合もありますが、耐震改修工事については住宅まちづくり部が主導 し、各部局と調整しながら効率的にできればと考えております」。 ――密集市街地での対応は。 「特に大火の可能性の高い危険な市街地には公金の集中投下として府の補助金を交付します。対象とする地 域が900ha以上と面的な広がりがあるため、やはり防火地域や準防火地域として都市計画で指定することが効 果的です。このため各市の都市計画の見直しに合わせての指定の検討を働きかけてまいります」 これら安全をベースとした上で、「居住魅力の向上」も課題とする。なかでも府営住宅入居者の高齢化、福 祉面での対応が求められているとする。「例えば電球の取替えひとつを例にとっても困難が生じる入居者も おり、それらに対応できるコミュニティづくりが行政に求められております」。このため審議会に諮りなが ら、ソフト・ハードでの対応と関係機関との連携により検討を進めている。 さらに、若い世代の入居定着を目指し府営住宅の建て替えにあたっては、新婚子育て世帯の入居を促進、若 年層の比率を増やして地域の活性化につなげ、「子どもの声が聞こえる団地づくり」に取り組んでいくとす る。また、「業務改善」のひとつとして当面5千戸程度を目途に、府営住宅での指定管理者制度をモデル的 に導入する。 これら事業に加え‘府有資産の有効活用’にも知恵を絞る。活用用地の売払いはもとより、「府営住宅駐車 場の一般開放や自動販売機の設置、府営住宅での空家期間の短縮のため募集方法の改善など、細かいもので も積み上げていきながら財源確保に務めていきます」。 入庁して最初の仕事が泉北ニュータウンの現場。その後、「技術面や住宅政策を学んだ」とする府立高校の 新設工事や府営住宅の建て替え工事を経験。印象に残る仕事では、彩都で医薬研究施設の誘致に関わり、 「医療関係者をはじめさまざまな分野の人との調整に走り回った」ことと、「住宅政策のあり方を大幅に見 直す契機となった」阪神・淡路大震災での復旧・復興関連事業を上げる。 現場から政策まで、これまで‘実戦’で培われてきた吉田部長の手腕に期待が寄せられる。 吉田敏昭 (よしだ・としあき)1974年4月、大阪府採用、1997年4月、企画調整部企画室主幹、1998年4月、建築都 市部住宅まちづくり政策課参事、2002年4月、同政策課長、2003年4月、建築都市部副理事兼住宅まちづく り政策課長、2005年4月、建築都市部住宅経営室長、2006年4月、住宅まちづくり部技監を経て、今年4月 に現職に。神戸大学工学部建築学科卒。大阪府出身。58歳。