有識者・マスコミ関係者と意見交換 近畿各建設業協会の青年部会で構成する近畿建設青年会議(会長=吉井久 尚・奈良県青年部会会長)と、マスコミ関係者・有識者とによる座談会が18 日午後、‘建設業の現状と必要とされるべき姿とは?’をテーマに大阪市内 で開催された。厳しき経営環境にさらされている地方建設業の実態を伝える とともに、建設業に対するイメージや今後のあり方についての意見交換が行 われた。 座談会は、慶應義塾大学理工学部の米田雅子教授を座長に、マスコミ関係者 として寺前伊平・奈良新聞大阪支社長兼論説委員、四戸友也・福井新聞論説 主幹兼論説委員長、浮田信明・サンテレビジョン報道部デスク、村上祐子・ 京都放送アナウンサー、牧田衛活・びわ湖放送アナウンサー、青年会議側か らは、吉井会長、青年会議副会長の中村光良・奈良県青年部会副会長と城根 誠・兵庫県青年部会会長、また行政代表として近畿地方整備局の岩崎福久・ 企画部企画調整官が出席した。初めに主催者を代表して吉井会長が挨拶。吉 井会長は、座談会を通して、厳しい経営環境下にある地方建設業界の姿とと もに、「社会資本整備の必要性、その担い手である建設業が国民生活に直結 していることを知ってほしい」と述べ、意見交換の成果に期待を寄せた。
座談会では、まず米田教授が建設業全般について、岩崎調整官が近畿の現状についてを説明。米田教授は、 「現在の建設業界は供給過剰の状況にある」とし、都心部と地方、大手企業と地場企業の格差を指摘、「災 害時に地域を守るのは地域業者、地域業者が地域を守るためにいかに努力しているかを理解してほしい」と 述べた。地方業界の実情について、吉井会長は、防災協定による緊急出動や除雪作業など「裏方的な仕事は 一般には知られていないが、地場業者にとっては重要な仕事」とし、城根副会長も「緊急時のみ存在が認め られる」としながらも、業者数が減少し、残る業者も機械類を手放す状態で、今後の災害出動に懸念を示し ながらも、「大手が総合病院なら、地場が町医者的存在でありたい」と述べ、中村副会長は、土木から建 築、官から民へシフトしながら生き残りを模索してきたが、「現下の経済情勢ではどこに営業すればいいの か、取引先も信用できない状況にある」と、それぞれ訴えた。 これら意見に対し、マスコミ側は、地方業者の育成は国土交通省だけでなく、各省庁連携した「国策として の取り組みが必要」、「災害報道のあり方は被災者が中心で、復旧活動の中身は取り上げなかった」、「業 界はPRが下手、マスコミとの付き合い方を考えるべき等の発言のほか、「耐震化事業はビジネスになるの か」「生き残っている業者とそうでない業者の違いは」との質問が出た。 耐震化事業については「期待はあるが、事業進捗の速度が遅い」、生き残った企業に関しては、「経営トッ プが常に危機感を持っている」との見方が示された。マスコミとの付き合いについては、米田教授も、「物 言わぬ業界で、縁の下の力持ちと言われる所以」と指摘。吉井会長も「イメージアップ戦略の上でも重要 だ」とその必要性を認めた。 今後について中村副会長は、「災害出動や除雪作業など、これまであたり前のようにやってきたことが、今 後もあたり前のようにやっていけるか疑問」としながら、「他産業が伸びればそのインフラ整備が必要とな り、そこに活路が見出せる」とした。これについては、林業はじめ農業、漁業へ建設業の技術や人材を注入 すべきとの意見が相次ぎ、米田教授は特に林業に関し、「建設業の力を正しく注入することで山林が新たな 資源となる」と強調した。 座談会ではこのほか、現場見学会や地域を対象とした大工教室、業界としての情報提供のあり方などについ ての意見が交わされ、最後に中村副会長が、「ここでの意見や提言を参考に、現状を真摯に受け止めながら 愛され、信頼される業界を目指していきたい」と締めくくった。