近所・給料・休暇が主流、家庭の意向も反映 「生徒の希望する3Kとは、近所・給料・休暇のK」、「4月から5月にかけて卒業生の親からの苦情対応 に追われる」。9月25日に行われた建設産業人材確保・育成推進協議会で、高校の進路指導担当教諭から、 現在の学生気質が語られた。これは同協議会近畿ブロック会議における、大阪府立東住吉総合高校と同布施 工科高校の事例発表でのもの。 学校統廃合で建築系学科減少 ………………………………… 両校に共通するのは進学率の増加による就職希望者の減少。学校改革により工業高校から工科高校へ、単位 制導入などにより学習形態が大きく変化し、進学者に対する奨学金給付の充実などが大きい。さらに、選択 肢の多様さなど就職に対する意識が変化、定職に付くよりアルバイトで気軽に稼げるといった考えも多いそ うだ。 また、家庭の影響も一因する。いわゆる「モンスターペアレンツ」の存在。例えば、通勤時間と勤務時間は 別物だが、「出金時間が早く、帰宅時間が遅い」などのクレームが、「本人より親が抗議してくるケースが 増えてきている」とする。また、生徒本人が希望しても実家が建設業の場合、企業側が「一人前になった時 点で退職され、実家の戻られるのでは」と採用を見送るケースもあるとの実例が示された。さらに、生徒本 人も冒頭に挙げたように、自ら学んだ専門課程に関係なく、自宅の近くで給料や休みが安定している職場へ 流れるなど、「専門性が薄れている傾向にある」とする。 この3Kは、近畿に限ったものではなく、近年では地方からの就職者が少なく、かつて地方のみの求人とし ていた企業はじめ、「東京の企業からの求人も増え続けている」のが現状とした。 一方、各建設業協会が取組むインターシップや現場見学会は、学校側にとっては「今後も継続してほしい」 と好評だが、受入側にとっては、全てボランティアであり、事故等での対応面で不安が残るため、年々、受 入先を確保することが困難な状況にある。また、これらを体験した生徒が必ずしも入社・入職する保証はな く、業界側にとってのメリットは少ない上、入社した生徒が「読み・書き・そろばんが出来ない」などの基 礎教育不足を指摘するところもあり、これに「親の意向」により、早期退職するケースが追い討ちをかけ る。 会議では、就職先の決め手の一つに「拘束時間と給与」の問題が挙げられた。これに対して協会側からは、 「現在の業界環境からは現状でぎりぎりの企業が殆どで、賃金問題は一企業の努力の枠を超えた問題」との 見方も示され、行政に対して「インターシップなどを実践している企業に対し、きっちりと評価する仕組み をつくってほしい」との要望が出された。 いずれにせよ、業界側にとってはこれらの取り組みに一縷の望みをかけて継続実施する方向にあるが、業界 側のみの努力だけでなく、国土交通省はじめ業行政側と、教育委員会をはじめ学校側との連携した取り組み が不可欠であり、それらサポート体制づくりが望まれている。
