下水汚泥を有効な資源として利用 奈良の都・平城京の誕生から1300年という記念すべき年を迎える西暦2010年に開催される「平城遷都1300年 記念事業」。「美しい日本、はじまりの奈良」を合言葉に、歴史文化や世界遺産と共に生きる∧豊かさ・楽 しさ・美しさ∨を、全国へ、アジアへ、世界へと発信していく。 その舞台となる奈良県における下水道整備は、大和川上流流域下水道事業に1970年度から着手したのが始ま り。大和川流域をはじめとする各流域の水質保全ならびに生活環境の整備・改善が近年における喫緊の課題 として浮上する中、快適で健全な生活環境の創造を目指していくこととした。また、1980年度には宇陀川流 域下水道事業、1982年度には吉野川流域下水道事業に着手し、下水道事業普及率の向上に努めている。こう した取り組みにより、2006年度末現在における奈良県の下水道普及率は69.8%に達しており、今後も処理場 施設や管渠の整備に努めていく。 一方、「下水汚泥を有効な資源として活用し、快適な環境を目指す」という方針に基づいて、下水汚泥をセ メント原料の一部として、また、下水汚泥焼却灰をインターロッキングブロックの材料として有効利用を図 っている。 _________________________________________________________________________________________________ 大和川上流流域下水道 ………………………… 人口の減少や地球温暖化、科学技術の急速な進歩など、これからの社会のあり方を根底から変化させる大き な潮流を前に、県民と共有する道しるべとして策定された「やまと21世紀ビジョン」の基本目標である「世 界に光る奈良県づくり」の一翼を担う下水道整備事業のカギを握っているのが大和川上流流域下水道。大和 川流域内の全市町村を対象として、第1処理区と第2処理区に分けて事業を展開している。 <第1処理区> 1971年2月に都市計画決定を行って事業に着手した第1処理区は、大和川流域の中にあって人口の増加傾向 が最も著しい地域で、奈良市、大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、生駒市、香芝市の七市と、安堵町、 川西町、三宅町、田原本町、広陵町の5町が従来からの対象地域となっていた。また、1991年3月からは、 都市計画変更に伴って旧第三次計画区域の平群町、三郷町、斑鳩町のほか、生駒市、安堵町の一部が第1処 理区へと編入されたことにより、現在における第一処理区の計画区域面積は約2万6,500平方m、計画人口は 約102万人、計画処理水量は約69万立方m/日となった。 大和川流域の水質保全に大きな役割を果たしている浄化センターは、大和郡山市額田部南町(敷地面積57・ 5ha)に設けられており、1974年6月から供用を開始。処理能力は28万4,800立方m/日となっており、現在 は、奈良市、大和郡山市、天理市、桜井市、生駒市、香芝市、平群町、三郷町、斑鳩町、安堵町、川西町、 三宅町、田原本町、広陵町の汚水を受け、21万9,700立方m/日の処理を行っている。また、各市町における 公共下水道事業の進捗に整合させるための七系水処理施設増設工事も順調に進み、今年度末までに完成する 見込み。なお、総延長が96.4?に達する幹線管渠の敷設は、2006平年度末までに93.3?が完成している。 <第2処理区> 第2処理区の対象となるのは、大和高田市、橿原市、御所市、香芝市、葛城市、高取町、上牧町、王寺町、 広陵町、河合町、明日香村の5市五町1村で、計画概要は、処理区域面積が約1万7,000ha、処理人口が約51 万人、処理水量が約39万立方m/日となっている。広陵町萱野(敷地面積39ha)に設けられている第2浄化 センターは1984年4月から供用を開始。現在は、大和高田市、橿原市、香芝市、御所市、葛城市、広陵町、 河合町、高取町、上牧町、王寺町、明日香村の汚水を受け、7万7,400立方m/日の処理を行っている。な お、幹線管渠の敷設については、2006年度末現在において、総延長72.8?mのうち、69.0?mが完成してい る。 吉野川流域下水道 …………………… 五條市、吉野町、大淀町、下市町の1市3町を対象として1983年度から事業に着手した吉野川流域下水道。 計画概要は、処理面積が3,500ha、処理人口が約7万5,000人、処理水量が5万1,000立方m/日となってい る。五條市の一部の汚水を受けて1991年4月から供用を開始した吉野川浄化センターは、五條市二見(敷地 面積13ha)に設けられており、1万5,600立方m/日の処理能力を有している。また、増設工事を進めていた 第2ポンプ棟についても今春の4月から供用を開始した。なお、幹線管渠の敷設は、総延長23.4?のうち、 23.0?が完成している。 宇陀川流域下水道 …………………… 宇陀川の水質保全などに寄与している宇陀川流域下水道は、2006年1月1日に合併して宇陀市となった従来 の大宇陀町、菟田町、榛原町を対象として1980年度から事業に着手したもので、計画概要は、処理面積が 1,025ha、処理人口が2万5,800人、処理水量が1万6,000立方m/日となっている。1987年4月から供用を開 始した宇陀川浄化センターは、宇陀市榛原区福地(敷地面積3.8ha)に設けられており、処理能力は1万 2,700立方m/日。現在は、6,500立方m/日の処理を行っている。なお、総延長約9?の幹線管渠の敷設 は、すべて完成している。