古土井光昭・関西国際空港用地造成?代表取締役専務 「1期に学び、1期を超える」 コスト縮減、高精度を誇る 待望の新滑走路がオープンした関西国際空港。その新滑走路の土台となる2期 空港島の造成工事は、「関西国際空港2期事業」として、9年の歳月を経て進 められた。 工事は、1期事業を凌ぐ難工事となったが、精鋭施工各JVが、最新の技術と ハイテクノロジーを駆使して情報化施工を推進。 工事全般の指揮にあたった関西国際空港用地造成?(KALD)の古土井光 昭・代表取締役専務は、「1期に学び、1期を超える」をモットーに、コスト の縮減をはじめ、埋立土砂や資機材の安定供給に努め、「高品質で精度の高い 空港島」造成を実現している。 その古土井専務に、これまでの歩みを聞いてみた。(渡辺真也)
渡辺−−−−新滑走路のオープンに併せ、限定的とは言え2期島造成が概成しましたが、KALDとしてのこ れまでの取り組みをお聞かせ下さい。
古土井専務−空港という施設は、そもそもが利用密度が低く土地が利益を生むというものではありません。 その観点から空港島造成には当初、総額約1兆4千億円の事業費とされていましたが、可能な 限りコストダウンを図ろうと努力はしました。
渡辺−−−−新滑走路供用開始期限の厳守と事業費抑制という命題があった。
古土井専務−我々に与えられた要件です。平成13年には事業スキームを見直し、事業費も1兆円までに圧縮 しましたが、現在では9千億円程度で収まるんじゃないかと思っております。今回、限定とはい え、目標どおりに新滑走路も供用したことで合格点は貰えるかなと思っています。
渡辺−−−−工事は、1期事業を凌ぐ大量急速施工という難工事でした。
古土井専務−1期工事を手本に、「1期に学び、1期を超える」をモットーに進めてきましたし、地元自治体 や漁連、また埋立土砂の土源である兵庫、大阪、和歌山の府県にもご協力いただき、土砂を安く 早く手に入れることができ、コスト面でも工期面でも大きく作用しました。地域の全面的なバッ クアップのおかげです。
渡辺−−−−技術的な面では。
古土井専務−1期の場合、事業の進め方や技術は国が主導する形でしたが、2期では1期でのノウハウを学ん だ民間が、さらに創意工夫を加えて実施しました。 その中で誇るべきは、空港島の質が、新技術の活用や資材調達の円滑化など、民間技術の結集に より1期を乗り越えた点にあると思います。コストと工期を低減し、かつ高精度であるという点 は大いに誇るべきだと思います。
渡辺−−−−確かに沈下予測などは向上しています。
古土井専務−1期では手探り状態であったものが、ある程度見通しがたち、予測範囲内で収まりました。1期 の経験をもとにした2期の予測は、エンジニアリング的にも問題がないと先生方から認めらてい ます。 徹底した薄層均一施工や埋立地の締め固めなどによる不同沈下対策も2期の大きな特徴です。
渡辺−−−−施工では、ハイテクを駆使した情報化施工を実現しました。
古土井専務−GPSをはじめとしたデジタル化の効果はありました。膨大なデータベースを活用したことや、 また技術者自らプログラムを編めるなど目を見張るものがあります。 埋立にしても均一な土砂投入が可能となり、沈下計測でもより正確に効率的に行えました。 各種の機器を多角的に使用し、相互補完することで効率化が図れました。
渡辺−−−−作業船にしても進化している。
古土井専務−大型化し自動化しました。波浪がきつくてもあまり影響を受けず作業ができ、夜間工事も含めて 「人は休んでも機械は休まず」と昼夜兼行で効率的に工事が行えました。また、これら工事を支 える上で配慮したのが資材の供給です。
渡辺−−−−埋立土砂をはじめとする資材の調達ですね。
古土井専務−ある意味工事全体の鍵を握っていたと言えます。土源が早くに確保できたほか、海砂の代替品確 保のためにあらゆる手立てを使い、資材の安定供給と安定的なコストの維持に努めました。 大量に資材を使いますから資材価格の高騰を招き、他の工事に影響を及ぼす恐れがありました。 その辺をいかに押さえるかという努力目標もありましたね。努力に裏付された成果があったと思 います。
渡辺−−−−施工各社の努力も大きい。
古土井専務−人工島造成技術は世界でも群を抜いていると思います。また各工区が競い合い、切磋琢磨するこ とで技術も向上する部分があります。工事に際しては事前にプロポーザルと事後に報告書を提出 してもらって、その全てに目を通し講評しております。
渡辺−−−−工期中は各種のイベントを通して事業の理解促進を図っておられました。
古土井専務−みんなで造ろう空港島では、かなりリピーターの方がおられました。現場がどう変化するかを見 学されることが楽しみでもあり、また現場も人に見られることで緊張感が生まれます。こういっ た公共工事がどのように変わっていくかを見てもらうことも必要ではないでしょうか。
渡辺−−−−さて、造成工事は現在も行われておりますが、今後の見通しは。
古土井専務−新滑走路のオープンで貨物の国際拠点としての役割が高まってきました。 用地造成は、大きな需要の流れの中で余裕を持って対応し、早めに将来の需要に対応するための 先行投資として整備し、最低限必要な用地を確保する必要があります。 また今後工事の継続にあたっては、用地造成事業費9千億円とするため、総コスト削減への努力 を続けていきます。
渡辺−−−−今後も事業推進にご尽力下さい。