
道路整備や河川改修など、都市の基盤となる各種機能の整備はじめ維持・管理は、経 済活動や暮らしを支える上で欠くことのできないものとなっており、また、どのよう な時代にあっても後退は許されない。大阪府での社会資本整備を担う大阪府都市整備 部では、4月に就任した福田保部長が、「議論を尽くし決まったことはやり遂げる」 とする‘鉄の団結’の伝統を受け継ぎ事業推進に意欲を見せる。その福田部長に、課 題が山積する土木行政への取り組みを聞いた。 事業の重点化と効率化 価格より技術力で勝負を
――まずは就任に当たっての抱負から。 「当部には、皆で議論を尽くし、決まった事はやり遂げるという、議論の上に立つ鉄の団結という伝統が あり、これを継続していきます。これは就任にあたり職員にも話しました。大きな課題としては、府民の信 頼を取り戻すこと。都市整備部にはありませんでしたが、裏金問題などで失った信頼を取り戻すため、府庁 全体の問題として取り組んでいきます」 鉄の団結は、土木部時代から引き継がれている都市整備部の風土とも言える。また、若手職員らの新戦力も 採り入れた明るく風通しの良い職場づくりとともに、この良き風土を継続・発展させたいとする。信頼回復 に向けては、職員一人ひとりが認識を持つことだと言う。 「2つ目の課題として行財政改革への取り組みがあります。昨年度に策定された大阪府行財政プログラムを 受け、見直しを行った都市基盤整備中期計画に基づき、さらなる重点化、効率化により事業効果の早期発現 に努めます」 改革では、出資法人などの組織・体制の改革に取り組む。特に公園協会の民営化に向け改革プログラムを策 定。また、今年度から用地買収業務について土地開発公社へ一元化しており、流域下水道でも従来、市町村 が維持管理を行い、管渠築造は府が担当していたが、これを建設・維持管理を一元化して、府が行うことと して調整が進められている。 ――今年度は事業費が10削減されますが、事業量の確保については。 「重点化と効率化になりますね。もともと都市基盤整備中期計画の策定時に事業量の縮小は盛り込んであ りました。ただ、府としては建設事業費をスリム化する中で、維持管理や東南海・南海地震の津波対策、こ れに関しては事業費を縮小せず、しっかりやっていきます」 都市整備部としては、都市再生と安全・安心対策、府民協働の三点が重点項目とする。都市再生では、第2 名神や第2京阪など、高速道路ネットワークの整備を上げる。 「第二京阪では、2009年度の供用を目指し最後の仕上げ段階に入ります。第2名神は、今年度から現場事務 所を設置、用地買収に向けた測量や説明会に着手する予定です。また都市再生環状道路では、大和川線で府 が担当する街路事業の全区間での工事発注を予定しています」 ――地震津波対策では。 「ハード面では施設の耐震補強や防波堤の嵩上げ、水門や鉄扉の作動を迅速にするための電動化や全ての水 門の遠隔監視などを行います。ソフト面では、それらを操作するため職員の訓練が重要で、定期的に実施し ております。また、高潮に対する啓発活動として津波ステーションの整備も行っております」 ――水都再生にも力を入れられています。 「船着場を八軒家浜で整備しています。ほかに阪大病院跡と中央卸売市場でも整備を進めています。また今 まで、大阪府と大阪市がそれぞれ船着場を管理しており、手続きも個々に行うため利用者から手続きの簡素 化を求める声があり、今年度中の一元化を目指し大阪市と協議しております」 ――都市整備部では昨年度3件の総合評価方式を試行され、また低入札も問題となっております。 「我々の役目は品質の良いものを造る事です。勿論、経済性も大事ですすが、品確法でもその辺りが明確に なっております。総合評価方式では、工事毎に施工条件が違いますから、それらに対して民間が有する技術 が活かされるように評価していきたいと思っております」 都市整備部では今年度から、予定価格1億8千万円以上の土木一式工事で原則、総合評価方式を導入する。 「手間も時間もかかりますが、先程も言いましたが品質を確保することは我々の役目ですから、その責任を 全うするためには時間がかかっても取り組んでいく必要はあります」とする。 「低入札については、品質の確保が一番心配です。低入札工事については検査体制を強化して対応していき ますが、下請けに対する影響も心配です。また、今年度からは低入札調価格査制度の中に失格基準を設けま した」 失格基準価格は、他府県でも導入しているが、大阪府では予定価格の3分の2を切れば自動的に失格とする 独自方式を採用した。 ――ところで現在の建設業界の状況をどのように見ておられます。 「やはり技術力で勝負できるような業界になってほしいですね。現在は価格での争いが表に出すぎてま す。もっと技術をアピールするように、若い人達が魅力を感じるようにね」 入庁して最初に携わったポンプ場整備仕事では、約6年間にわたり、基礎工事から上屋建築、電気・管の設 備工事まで、完成に至るまでの工程を経験。先輩諸氏はじめ施工会社の技術者からも多くのことを教わり、 「苦しかった事や楽しかった事、思い出に残る事が凝縮された仕事だった」と振り返る。職員には、ベース となる専門性を持ちながらも、多くの経験を積んでほしいと願う。土木部時代からの伝統は今後も継承され ていく。 福田保 (ふくだ・たもつ)1973年大阪大学工学部卒、同年4月土木部土木総務課、鳳土木事務所、同54年河川課、 1984年4月南部特定事業建設事務所狭山池ダム建設工区長、1988年4月河川砂防課計画係長、1990年4月同 砂防改良係長、1991年5月鳳土木事務所主幹兼同工務第一課和泉工区長、1993年4月同事務所工務課長、 1994年4月河川課主幹、1996年4月企画調整部企画室参事、1998年4月建築都市部総合計画課参事、1999年 5月鳳土木事務所長、2001年4月河川室副理事兼河川調整課長、2003年4月河川室長、2005年4月土木部技 監、2006年4月都市整備部技監を経て、今年4月より現職に。大阪府出身、56歳。