計画期間は2016年度まで、整備水準や事業手法を示す 大阪市はこのほど、「大阪市営住宅ストック総合活用計画」を策定した。従来の計画を社会情勢や市政改革方 針などを受けて見直したもので、今後10年間に、市民の共有財産として‘「市民住宅」の実現に向けた市営住 宅ストックの有効活用’を基本理念に、居住水準の向上や高齢化への対応、建物の長寿命化などを基本目標と して各種の施策を実施することとしている。 大阪市の市営住宅は現在、10万2,978戸で、このうち1968年以前に建設された住宅が約4万3,000戸で全体の約 4割を占めている。このうち住戸規模が40?未満の住戸が約2万3,000戸、さらに浴室のない住戸が約1万 3,000戸あるほか、エレベーターのない中層住宅や入居者の高齢化に伴うコミュニティの沈滞化などが課題と なっている。 今回策定された計画は、2001年に策定された従前の計画から5年が経過したことや、同05年に市営住宅研究会 からの「今後の市営住宅のあり方」の提言などを受けて見直しを行い、平成19年度から同28年度までを計 画期間として、整備の水準目標や具体的手法を示したもの。 基本目標では、浴室なし住戸の解消をはじめとする「居住水準の向上」、住戸と団地のバリアフリー化など 「高齢化への対応」、建物の長寿命化省エネルギー化など「長期間にわたり有効活用できる住宅づくり」のほ か、「コミュニティの再生」と「地域まちづくりへの貢献」を挙げている。 整備水準の目標では、原則として居室二室以上確保し、高齢者対応及び介助しやすいトイレや洗面、脱衣スペ ースを設けることとした。また、現在の生活様式に対応した水圧・電気容量、躯体の安全性確保、長期間にわ たり活用するものについては可能な限りエレベーターを設置するほか、福祉施設と連携して車椅子常用者向け の特別設計住宅やケア付き住宅の整備を図るとした。 事業の進め方では、「建替」と「全面的改善」、「EV単独設置」「維持保全」の事業手法を選択。このうち 建替と全面的改善は、原則として建設年度の古い団地順に着手する。建替では、可能な限り土地の高度利用を 図り、余剰地を活用したコンペ方式等で民間活力の導入を図り、地域のまちづくりへの貢献に務めるとした。 全面的改善は、浴室設置を中心とした住戸改善で、1戸1型や2戸1型、増築型の3種類で実施。実施にあた っては、既に事業着手している住宅や土地の高度利用が図られている高層住宅、1975年度以降に建設された住 宅などに限定して行うとした。 エレベーター単独設置は、1975年度以降に建設された4・5階建てを優先して既存住宅の階段室か廊下に設 置、同1970年度以降の住宅は維持保全として将来の建替対象とする。維持保全は、経年劣化などで対象住宅を 選択して、外壁塗装や設備改修などを計画的に行う。 これら事業が実施された住宅の管理期間は、建替住宅で概ね70年、全面的改善で30年、エレベーター設置は20 年とするほか、実施に際しては大規模団地等を対象にモデルプロジェクトを採用する。 事業手法の選定では、1次から3次の判定を実施。1次では築年数を、2次では構造体と居住性での判定を行 い、それらの結果を敷地の有効活用性や都市計画等の関連を総合的に判断して最終判断を行う。また今後の事 業量については、計画期間内に7割に着手し、既に建替判定が終わっている昭和30年代から40年代前半の住宅 に関しては、期間内の前半5年間に着手するとしている。 計画の実施にあたり大阪市では、関係部局との連携や居住者の理解を求め、財源確保のための国への働きか け、制度的枠組みの構築などに務めるほか、社会状況や事業進捗状況など必要に応じて計画の見直しを行うこ ととしている。