

大阪市東部地域の活性化に寄与 効率的な「リニアメトロ」 大阪市内の鉄道ネットワークを強化する?発車のベル?が高らかに鳴り響く ―。大阪市交通局が、大阪市東部地域の活性化や利便性の向上などを目指して 建設を進めていた大阪市営地下鉄今里筋線が今月24日に待望の開業を迎える。 大阪市の東部地域を南北に縦断し、都心部・周辺部間の交通の利便性を飛躍的 に向上させる路線として大きな期待を集めているもので、営業延長は東淀川区 の井高野から東成区の今里までの11.9?。井高野、瑞光4丁目、だいどう豊 里、太子橋今市、清水、新森古市、関目成育、蒲生4丁目、鴫野、緑橋、今里 の11駅を新設しており、既設の4路線(谷町線、長堀鶴見緑地線、中央線、千 日前線)ならびに京阪本線、JR学研都市線と接続する。鉄道ネットワークを 強化し、定時性の確保や便利な移動を実現する期待の新線には、長堀鶴見緑地 線と同様にリニアモータ駆動式の中量規模車両を導入しているので、トンネル 断面の縮小化に伴う建設コストの縮減や施工性の向上などのメリットが生じる とともに、急勾配、急曲線走行も可能となった。一方、1から15工区に分割し て進めた土木工事を担当した各JVでは、地下埋設物への影響防止や沿道・近 隣に対する安全対策などに万全を期しながら開削およびシールド工事を着実に 推進。一台のマシンで上下線を往復して掘進するUターン工法を線路部に採用 したほか、大阪市交通局では初めての試みとなる淀川の地中横断などにおいて 細心の注意を払いながら高度な技術力を駆使し、高品質に完成させた。
※写真上:今里筋線の車両は長堀鶴見緑地線と同様に概設の地下鉄よりもひと回り小さい中型のリニアモー ター式地下鉄を採用している ※写真下:清水から新森古市間の急曲線部 利便性を向上させる11駅を設置 〜地下鉄4路線、京阪、JRと接続〜 人や物を大量に、しかも高速で輸送できるばかりでなく、環境・エネルギーの観点からも高い社会的評価を得 ている鉄道は、通勤・通学やショッピング・レジャーなどの日常生活をワイドにサポートする市民の足として 幅広く利用されている。 利便性の高い公共交通サービスの提供に努め、利用者の期待に応え続けている大阪 市交通局においても、都市の発展に不可欠な地下鉄の建設に邁進し、現在までに7路線118?の地下鉄路線網 を形成。1日平均226万人を運ぶ大動脈へと発展した地下鉄は、市民生活と都市活動を支える?主役?として きょうも疾走を続けている。 しかし、モータリゼーションが発展を続けるとともに、地球環境問題がクローズアップされている近年におい ては、大量輸送性・高速性・定時性に優れるとともに、クリーンに輸送できる地下鉄網の整備がまだまだ強く 求められており、大阪市においても総合交通体系の確立を図る上での根幹となる地下鉄の整備・拡充を目指し てきた。 新たな動脈として今月24日に待望の開業を迎え、「今里筋線」の愛称で親しまれていく地下鉄第8号線(井高 野から今里間)は、1989年5月に出された「運輸政策審議会答申第10号」にある路線のうち、大阪市の「交通 事業の設置等に関する条例」(1989年11月改訂)の計画路線に組み込まれた4路線(森小路大和川線、敷津長 吉線、長堀鶴見緑地線延伸、千日前線延伸)の中から、次期整備路線として位置づけられた森小路大和川線 (井高野〜湯里6丁目間)のうちの区間で、営業延長11.9?(建設延長12.1?)。1999年12月に都市計画法都 市計画法に基づく都市計画決定を受け、2000年3月から工事に着手した。 既成市街地で人口が高度に集中する大阪市東部地域の足として大きな期待を集めていた「今里筋線」の今回開 通区間(井高野から今里間)は、東淀川区北江口4丁目(井高野)を起点として西南方向に進み、同区大桐一 で国道479号(通称・内環状線)へと入ったのに続いて旭区新森4からは国道163号を通過。この後、城東区関 目5の交差点を南下し、そのまま東成区大今里に至る延長約12?の路線で、井高野、瑞光4丁目、だいどう豊 里、太子橋今市、清水、新森古市、関目成育、蒲生4丁目、鴫野、緑橋、今里の11駅を設けている。 都心に対して放射状に整備されている既設の地下鉄とは、太子橋今市で谷町線、蒲生4丁目で長堀鶴見緑地 線、緑橋で中央線、今里で千日前線とそれぞれ接続。また、関目成育で京阪本線、鴫野でJR学研都市線とも 接続し、交通の利便性を大きく向上させる。 地下鉄ネットワークのさらなる拡大をもたらす期待の新線には、長堀鶴見緑地線と同様に、リニアモータ駆動 式の中量車両(定員=先頭車90人、中間車100人)を導入。これにより、シールドトンネルの外径を従来の6.8 mから5.3mへと縮小することができ、建設費の低減や施工性の向上などの様々なメリットをもたらしてい る。 所要時間の短縮や定時性の確保など、利便性を大きく向上させるとともに、大阪市東部地域の活性化に寄与し ていく今里筋線。1990年3月の鶴見緑地線(現在は長堀鶴見緑地線)以来、16年ぶりとなる新線開業によっ て、大阪市営地下鉄のネットワークは約130?に達し、確実性、信頼性の高い公共交通機関としての役割が一 段と強まった。 精鋭施工陣が高度な技術力を保持 〜土木工事1から15工区に分担〜 軟弱地盤に加え、既設の地下鉄や下水道管渠などの大型埋設物が錯綜する中での今里筋線建設工事は、1から 15工区に分割し、駅部はオープンカット、線路部はシールド工法によって精鋭施工陣が安全第一に推進。地下 埋設物や沿道・近隣の安全対策などに万全を期すとともに、線路部については1台のマシンで上下線を往復し て掘進するUターン工法をトンネルが上下に走る新森古市から関目成育から蒲生4丁目間を除いて採用するな ど、建設コストの縮減や工期の短縮に努めながらルート内に渦巻く難関を克服して高品質施工を達成した。 これまでに培ってきた高度な技術力の粋を結集して進めた各工区工事のうち、1工区の施工を担当したのは前 田建設工業・大豊建設・りんかい日産建設JVで、工事範囲は、だいどう豊里停留場北側の開削部50mと、同 停留場北側から瑞光4丁目停留場南端までの線路部約900m。線路部については泥水シールド工法で施工した 同JVでは、だいどう豊里停留場北側線路部での道路幅員八?における上下シールドの施工をはじめ、半径 100mの急曲線施工、だいどう豊里停留場部での幹線下水との近接施工といった課題に慎重な対応を図り、高 品質を確保した。 2工区の工事範囲は、だいどう豊里停留場南側の開削部65mと、同停留場南端から太子橋今市停留場北端まで の線路部約1,600mで、施工は佐藤工業・五洋建設・東急建設・ハンシン建設JVが担当。淀川が流れ、阪神 高速道路守口線が横断するという環境下において進められた工事は、泥水シールドの淀川横過に伴う豊里大橋 との近接施工ならびに1000分の50の急勾配シールド施工などの困難が伴ったが、同JVでは大阪市交通局とし ては初の淀川地中横断を含む長距離掘削に全力を傾け、多くの関係者から寄せられていた負託に応えた。 清水停留場の開削部151mと、同停留場北側から太子橋今市停留場南端までの線路部約1、100mが工事範囲の 三工区は、奥村組・大日本土木・大本組・久本組JVが担当。1日の交通量が4万から5万台にもおよぶ内環 状線下での施工に加え、沿道には学校、住宅、商店があったため、円滑な車両の流れの確保と第3者災害の防 止にはとりわけ留意して工事を推進。また、京阪本線の高架下をシールドが通過するという難関にも慎重な対 応策を講じて無事に完成を迎えた。 大林組・戸田建設・錢高組・森本組・奥村組土木興業JVが施工した4工区の工事範囲は、清水停留場南線路 部の開削部約200mと、同停留場南端から新森古市停留場東端までの線路部約600m。清水停留場南線路部の施 工においては、本線シールド2本のほか、鶴見緑地公園地下に設ける車庫へと向かう出入庫線2本を施工。4 本のシールドが併設されるという近接施工となったとともに、大深度掘削(最大深さ23m)を慎重に推進し、 半径80mの急曲線施工についても安全・品質の確保に細心の注意を払って施工した。 5工区の施工を担当したのは、鹿島建設・清水建設・三井住友建設・東洋建設・大鉄工業JVで、新森古市停 留場の開削部115mと、同停留場西端から蒲生4丁目停留場北端までの線路部約2,400mが工事範囲。国道163 号から城北川を横過してから国道1号へと折れ、京阪本線を通過した後に長堀鶴見緑地線蒲生4丁目駅へと至 るまでには、京阪本線高架下でのシールド通過をはじめ、シールドの城北川横過に伴う菫橋橋脚基礎ならびに NTTシールドとの近接施工や半径100mの急曲線施工、上下シールドの施工といった難関が数多くあった が、計測管理による情報化施工を緻密に展開するなどして無事に到達を果たした。 緑橋停留場の開削部115mと、同停留場北端から鴫野停留場南端までの線路部約1,200mが工事範囲となってい た6工区の施工は、大成建設・青木あすなろ建設・不動建設・松村組JVが担当。JR学研都市線を通過し、 第2寝屋川を横断した後に中央線緑橋駅へと至る線路部はほぼ直線だったが、ルート内にはJR学研都市線高 架橋との交差や半径1000分の50の急勾配シールド施工に加え、第2寝屋川の横過に伴う鴫野大橋橋脚基礎、N TTシールドおよび緑橋停留場での幹線下水管渠の防護など、克服すべき課題が多かったため、JVでは創意 工夫を凝らしながら慎重に施工した。 新庄大和川線と、1日の通過交通量が約9万5,000台にも達する国道1号線との交差点内に位置する7工区の 工事範囲は、太子橋今市停留場の開削部115mで、施工は三井住友建設・地崎工業JVが担当。地下鉄谷町線 太子橋今市駅との連絡駅となるため、同線の構造物を仮受けした上で、営業線からの止水注入ならびに軟弱地 盤の乱れに対する支持力の確保などに万全を期しながら工程の進捗を図った。また、輻輳する守口共同溝や下 水幹線管渠などの埋設物に対する影響にも細心の注意を払って施工した。 8工区の施工を担当したのは、鴻池組・徳倉建設・株木建設JVで、国道一号線下に位置し、京阪本線関目駅 との近接施工となった関目成育停留場の開削部125mが工事範囲。NTTシールドへの影響を抑制するため、 土留めを地下連続壁工法で施工し、高密度配筋に対する打設コンクリートの配合検討を入念に行うなど、近接 する重要構造物に配慮しながら上下二層のプラットホームを施工した。 西松建設・竹中土木・日本国土開発・佐伯建設工業JVが施工を担当した9工区の工事範囲は、鴫野停留場の 開削部110mと、同停留場北端から蒲生4丁目停留場南端までの線路部約800mで、開削部の工事においては、 JR学研都市線鴫野駅との近接ならびに幹線下水シールドとの近接同時施工に伴う困難を克服。一方、シール ド部の工事では、寝屋川横過に伴う新喜多大橋橋脚基礎との近接施工(1000分の50の急勾配)をはじめ、地下 鉄長堀鶴見緑地線とのシールド交差、NTTシールドとの近接施工といった工事のカギを握る重要課題への対 応を影響解析と計測管理によって図った。 〜地下埋設物などに万全の対応〜 開業区間の起点となる10工区は、市営住宅が密集する閑静な住宅街に位置しており、鉄建建設・福田組・井上 建設JVが井高野停留場の開削部215m(停留場130m、渡り線85m)を施工。騒音・振動の防止に留意したの はもとより、道路幅員が16mと狭かったので、道路占用にも配慮を加えながら軟弱地盤への対応を図るととも に、高圧架空線や下水・水道・NTT等の地下埋設物に対しても注意を払って精度の向上に努めた。 11工区の施工を担当したのは、熊谷組・鹿島建設・村本建設・大末建設JVで、工事範囲は、井高野停留場南 端から瑞光4丁目停留場北端までの線路部約760mと、瑞光4丁目停留場の開削部110m。開削部は、JR東海 道新幹線の高架橋から離隔15m未満の近接施工だったため、最近接部の立坑において地下連続壁の施工や先行 地中梁の打設を行って土留め変位の抑制に努めた。また、シールド部においても、神崎川を河床下約10mで横 過するとともに、新幹線高架橋をS字(半径140m)で近接通過するとともに、瑞光4丁目停留場手前では高 架橋とも交差することから、24時間体制で高架橋の計測を続けながら安全かつ慎重に施工した。 蒲生4丁目停留場の開削部110mの施工は、フジタ・淺沼組・東海興業JVが12工区工事として交通量の多い 国道1号線の蒲生4丁目交差点北側において推進。掘削底面から下方約3mの離隔で大口径のNTTとう道が 停留場を横断するため、土留め施工や掘削時におけるとう道への影響を計測管理しながら最小限に抑えるとと もに、とう道上直上での土留め壁の根入れ不足に伴う掘削途上の盤膨れ対策として地盤改良や地盤変位計測を 講じて品質と安全性の向上を図った。 開業区間の終端となる13工区の工事範囲は、緑橋停留場南端から今里停留場北端までの線路部約1,000mと、 今里停留場の開削部275m(停留場165m渡り線110m)で、ハザマ・大林組・東亜建設工業・森組・中林建設 JVが施工を担当。市道大阪環状線(都市計画道路森小路大和川線)を緑橋から今里まで直進するシールド工 事では、阪神高速道路を上載している地下鉄中央線緑橋駅と離隔4mで交差するため、通過時には、同地下鉄 の中間杭や土留め杭等の残置架設鋼材を撤去しながら慎重に掘進していった。また、交通量の多い今里交差点 北側において推進した開削工事は、4m矩形の大型下水道管の防護に努めながら、一般車両の安全性の確保に 努めた。 清水停留場からの引き込みとなる面積約2万1,000?の鶴見北車庫の建設は、開削部北側を14工区工事として 清水建設・アイサワ工業・南海辰村建設JV、開削部南側および単線シールドの工場連絡部約1,400mを15工 区工事として飛島建設・錢高組・壺山建設JVがそれぞれ施工を担当。開削幅が最大で100mを超えるため、 通常の土留め支保工に替えてグラウンドアンカー工法を両工区ともに採用したが、民地に近接する一部の場所 では、支持層までの施工が困難だったため、径の大きいアンカーを用いるとともに、アンカーとの併用による 火打ちで背面地盤を支持した。また、掘削地盤の大半が軟弱な粘土層だったので、掘削に伴う掘削底面付近で のリバウンドに対しても計測管理をはじめとする情報化施工を展開して対応を図った。