子どもが楽しく遊べ、大人が寛げる街に 近年、ミナミのアメリカ村や南堀江、船場に次ぐ大阪の「おしゃれな街」として注目を 集める「フクシマ」。大阪市福島区の北側と、隣接する北区大淀にまたがり、なにわ筋 やあみだ池筋にかかる東西約1?、南北約2?のエリアに若者から大人向けのカフェや レストラン等がここ5年で40から50店オープンし、街が賑わってきた。こうした中、活 性化は必ず環境面で問題が生じるのではないかと考え、大淀(北区)・福島両地区の住 民らに「行政区を超えた民間による健全な街づくり」呼びかけ、2001年8月に発足した のが「大淀・福島街づくり協議会」(愛称・大福街づくり協議会)だ。同協議会では、 地元小学生からのアンケートをもとに基本方針を定め、住民が一体となった「暮らしや すい安全な街づくり」をめざし、大福エコ・ウォークラリーなど種々の活動を展開して いる。同協議会の発足時からコーディネーターとして、またプロデューサーとして、多 彩なアイデアと行動力で街づくりを推進する松下俊一会長(松下シティアス(株)専務 取締役)に今後の取り組みなどについて聞いてみた。
【編集部・曽碩和彦】
〜将来を想定した街づくりが大切・「街づくりサミット」の開催を提唱〜 ――最初に協議会が設立された経緯についてお聞かせ下さい。 「このエリアに人が集まるのに伴い、街の活性化はゴミや落書き、駐車場など環境面でいろんな問題が生じる のではないか、そのためには将来を想定した街づくりが必要ではないのかと考えたのがきっかけです。大淀 (北区)・福島両地区の世話役と住民に『行政区を超えた民間による健全な街づくり』を呼びかけ、三カ月の 準備期間を経て2001年8月に地区の会社経営者や地元住民など参加者35人で発足しました。愛称は大淀・福島 のそれぞれ頭文字を取り『大福(だいふく)街づくり協議会』です」 大福エリアには企業や店舗、住居が混在する。それぞれの意見を聞きながら、街づくりを進めるコーディネー ターとしての松下会長には周囲の期待も大きい。自身も大淀生まれで、会社も大淀にある。お世話になった地 元に何らかの形で貢献したいと情熱を注ぐ。 ――協議会の理念や基本方針はどのように決めたのですか。 「両区の三つの小学校の児童300人に『あなたの住んでいる街はどんな街にしたいですか?』というアンケー ト調査を行い、それを元に『子どもが楽しく遊べ、大人が寛げる街』や『誘いたい、誘われたい、一度は行っ てみたい街』などを基本方針にしました。子どもから高齢者まで、住民が一体となった『暮らしやすい安全な 街づくり』をめざしています」 ――街づくりといっても実際はなかなか難しいと思いますが。 「何か建物を造る場合、既存のものを壊して新しく造るのではなく、既存の建物を利用して再生するというこ とが大事だと考えています。実際、倉庫を活用したカフェやワインハウスなどもあります。既存施設を活用す れば環境面でも貢献できますしね」 既存施設を活用するという考え方は、松下会長自身がプロデュースした「鶴見ギャリー」(大阪市鶴見区)で も充分活かされている。倉庫を活用した10店舗が近くオープンする。 ――協議会としての具体的な活動や取り組みについてお聞かせ下さい。 「大阪市の後援を得て、これまでに『大福エコ・ウォークラリー』を四回開催しました。これは、街の魅力を 再発見しながら街の環境美化に貢献しようというもので、具体的にはあらかじめ設定されたルートを辿りなが らチェックポイントでクイズの問題に答え、ゴミを拾いながらゴールまでの時間を競います。親子連れなど四 人一組で毎回60から80チームが参加してくれます。住民の誰もがゴミをもっと身近に感じ、ごく自然にゴミを 拾えるような街になればと思っています」 〜人と人のふれ合い通し活動〜 ――わんぱく相撲というのもありましたよね。 「これは、昨年の2月に大淀東地域社会福祉協議会との共催で開催したイベントです。大相撲3月場所のため に福島区のお寺を宿舎にしている伊勢の海部屋の力士三人が、子どもたちを相手に相撲をとってくれました。 子どもたちは、普段はテレビでしか見たことのない力士を前に、体の大きさや力強さを間近で感じることがで き、大喜びしました」 協議会では「子どもたちの望む街づくり」をテーマに、人と人のふれあいを通したさまざまな取り組みを行っ ている。このほかにも、地元の小学生に通学路をリサーチしてもらい、段差や標識、電柱、ガードレール等が 障害となっていないかなど、不都合があれば協議会が窓口となって行政に改善を求めるなど「暮らしやすい安 全な街づくり」をめざして様々な活動を展開している。 ――最後に今後の取り組みや抱負についてお話下さい。 「大阪には40から50の街づくり団体があると言われていますが、そうした団体が一堂に会して『街づくりサミ ット』を開催するのが夢ですね。立地条件によって、街づくりに対する考え方や取り組みは違うと思います が、それぞれのノウハウを持ち寄って情報を共有し、良いところを参考にして取り入れたら、もっと街づくり はスムーズに進むのではないでしょうか。そのためにも『街づくりサミット』を提唱したいですね」 協議会の発足から5年になる。当初は住民や経営者の理解が得られず、苦労の連続だったが、種々の活動など を通じて認知度も高まり、現在では地元からの期待も大きい。松下会長も自ら広告塔として、テレビをはじめ 数多くのマスコミで大福街づくり協議会をピーアールしている。民間の街づくり団体として、これからも自由 な発想で活動していく考えだ。ポップアーティスト、商業施設プロデューサーとしても多忙を極める松下会長 の今後一層の活躍に期待したい。 ※「大淀・福島街づくり協議会」事務局=〒531ー0075 大阪市北区大淀南2−1−2、まつしたビル2D・ 関西イベントプロデュースinc有限会社内 松下 俊一 (まつした・しゅんいち)1949年大阪市大淀生まれ。1974年同志社大学芸術学専攻卒業。松下シティアス (株)専務取締役。鶴見ギャリー・松栄倉庫(株)代表取締役。(有)第七芸術劇場事業開発取締役プロデュ ーサー。大門まるうぎゃらりーアーティスト・プロデューサー。POPartist「大門まるう」として30 年間活躍する傍ら、商業施設プロデューサーとして「MiChinita ミチニータ」「ワイン・ウェア・ ハウス」「スイート・バジル」「ダイニングバー/ひまわり」「プレイス・ナイス」等を手がける。2001年8 月大淀・福島(大福)街づくり協議会の初代会長に就任。アートをもっと生活の中に取り戻し、踊り・マチカ ドMUSIC、画廊、壁画、ライブハウス、ミニシアター、ミニ劇場など誰もが楽しめる街を、一歩ずつでき ることから創造する。本当に豊に生きる知恵が失われている時代に、みんなの知恵を結集させて乗り越え、新 しい街を造ろうと取り組んでいる。街づくりにあたっては植樹、街の投棄ゴミ拾いなど環境対策にも努めてい る。都会と田舎・町工場と住宅が共存する大阪梅田の西・大福(大淀・福島)、このような街をどのようにし て活性化させるか、注目してほしい街の一つだ。都市に咲く「オアシス」をめざす。「来なはれ 大福 おこ しやす だいふく ENJOY DAIFUKU」