関西大学 新たな「マーケットイン型の産学連携」を推進 先端建設技術実用化研究会 関西の中小企業12社が参加 関西大学は、産学官連携事業、知的財産の創造・保護・活用、地域連携などの 推進を通じ、一層の社会連携を図ることを目的に、昨年4月1日に学長直轄の 全学組織として、社 会連携推進本部を設けた。同本部には、産学官連携・知財センターと地域連携 センターの二つのセンターを設置し、「知の創造拠点としての役割」「大学の 使命の一である社会貢献」に力を入れている。 また、今年5月には「先端建設技術実用化研究会」を立ち上げた。この研究会 は、関西大学の研究成果をもとに参加企業と実用化に向けて、入口だけでなく 出口を意識した研究開発に取り組む「マーケットイン型の産学連携」を推し進 めるもの。新しい産学連携のモデルとして、関係者から熱い視線が注がれてい る。現在、関西の中小企業12社が参加。現代の社会基盤施設における解決すべ き様々な課題(ニーズ)と大学側から提案される先端技術(シーズ)のマッチ ングを目指して、活発な研究会活動を行っている。 ※写真上=坂野教授 ※写真下=Uリブ取換え工法。新設Uリブ取付け状況。
高速道路高架橋の疲労損傷問題 〜坂野昌弘・関西大学都市環境工学科教授に聞く〜 高速道路高架橋の橋げたの疲労損傷が、いま大きな問題となっている。阪神高速では、昨年11月に「阪神高速 道路(株)鋼床版等の疲労に関する検討委員会」を設置し、補強対策に取り組んでいる。同検討委員会の委員 長は、関西大学工学部都市環境工学科の坂野昌弘教授。「日本のほとんどの道路橋は、疲労設計が行われてい ない。点検や補修・補強を急がなくてはならない」と警鐘を鳴らしている坂野教授に、日本の高架橋の現状や 今後の対応などを聞いてみた。なお、先端建設技術実用研究会には、関西大学のメンバーとして坂野教授らが 参加し、大学が研究している新技術などを紹介するなど、産学連携で実用化を目指している。 これまで阪神高速道路の鋼床版で見つかっている疲労損傷は、神戸線740か所、西大阪線626か所、湾岸線236 か所、堺線72か所、守口線31か所、大阪港線六カ所の計1,711か所。亀裂が入ったのは、デッキプレートと補 強材の溶接部分、補強材が交差する部分が多く、大半は幅0.1?以下、長さ数?から10?程度だが、最大2.3m の亀裂もあったという。このうちこれまで519か所で補修を完了させ、今年度も引き続き点検を実施してい る。今年10月には名阪国道25号線の奈良県・山添橋でも約1m亀裂が見つかり、近畿地方整備局奈良国道事務 所が交通止めにして緊急補強を行った。 〜阪神高速で最新の「Uリブ取換え工法」を適用〜 ◆「疲労損傷は、さらに検査するともっと増える可能性があります。実際、舗装をはがして みなければ分ら ないも のもあります。阪神高速の数字も一応の目安にはなりますが、これで全てとはいい切れません。道路 や高架橋が大量に造られたのは、日本の高度経済成長期のころ。1970年に開催された大阪万国博覧会の前後が 一番多い。名神、東名、首都高速なども、その時代でした。橋の寿命はこれまで一般的に50年程度と言われて きました。そうすると10から20年後には、一斉に寿命を迎えることになります。耐震設計と同じように橋の疲 労設計が必 要です。道路橋の疲労設計は平成14年に始まりましたが、それ以前に造られた橋長15m以上の橋 は13万橋、橋長2m以上は60万橋もあります。これまで疲労設計が行われていなかったために日本のほとんど の橋が壊れてもおかしくありません。しかし、すべてを架け替えるとなれば、多額の資金が必要で、日本経済 にも大きな影響を及ぼします。点検 や補修・強化を着実に 進めていく以外に方法 はありません」 阪神高速道路(株)鋼床版等の疲労に関する検討委員会のメンバーは坂野委員長のほか、堀川浩甫顧問(大阪 大学名誉教授)、金沢工業大学、国土交通省国土技術政策総合研究所および阪神高速道路会社の職員で構成し ている。 ◆「原因究明には時間 がかかります。道路や 橋は現物一品生産。車のように実物テストをして欠陥が分か るというものではありません。 検討委員会の下部組織としてワーキンググループを設け、ここで時間をかけ て具体的な対策について議論し、実験等を通していろんな工法を提案しています。その一つ、すでに実用 化 している補強工法につ いては、阪神高速道路会社、関西大学、施工業者 の3者共同で特許を出願 していま す」 特許出願中の補強工法は、「疲労損傷を受けた既設鋼床版の天板付きUリブへの取換え工法」。亀裂が大きな カ所に効果があるという。さらに「デッキプレートと垂直補鋼材溶接部の補修」、昨年度に実験を行った「半 円切欠き工法」なども今年から使っていく考えだ。こうした阪神高速での新たな試みは、今後の有力な補強対 策として注目されそうだが、まだ課題も多い。
◆「アメリカは、1980年代に崩壊するアメリカと言われました。吊り橋等の落橋で多くの犠牲者が出ました。 アメリカの経済も大きな打撃を受けました。それ以降、社会資本の整備に力を入れていま す。韓国・ソウル でも1994年10月に落橋し被害が出ました。日本でも1991年1月に岐阜県の大垣大橋が 落橋しかけたことがあ ります。これらは橋の亀裂が大きな要因です。日本の橋は地震では倒れないという安全神話がありましたが、 実際、阪神大震災で倒れました。日本でもこのまま放置しておくと、落橋の可能性があります。国も今年3月 の議会で、「メンテナンスに対しても重点的に予算を配分していかなければならない」と答弁しています。十 分な公共投資 が必要です。現在、使い捨て文化から良いものを、長く大事に使う時代に入っています。良い ものとは何か、それを見分ける目。そして、若い技術者の育成が大事です。優れた技術を有している団塊の世 代の多くが、まもなく職を離れます。技術の伝承も今後の大きな課題になるでしょう」 坂野昌弘 (さかの・まさひろ)東京工業大学卒、関西大学都市環境工学科教授、工学博士。道路橋および鉄道橋の疲労 設計、既設橋の健全度調査および診断、余寿命評価、補修・補強、予防保全、アセットマネジメントなどを研 究し、多くの研究論文を発表。
