安全で快適な暮らしを創出 美しい風景が全国津々浦々に広がる反面において、極めて厳しい自然条件、自 然特性を有していることから、脆弱な国土と言われている我が国においては、 安全・安心で災害に強い国土づくりが強く求められている。 また、健全で快適な生活環境の創造にも力を注ぐ必要性がまだまだあり、住 宅・社会資本整備とは今後もひたむきに取り組んでいかなければならない。 ※写真:滋賀県の湖南中部浄化センター 循環型社会の形成に向けて下水道事業は大きな転換期を迎えている
〜諸課題の流域全体で対応〜 しかし、近年においては?公共投資不要論?がまかりとおるようになり、幅をきかせている。なるほど、無駄 なものがあることは確かだが、我が国の経済力に見合うだけの生活の豊かさとゆとりを国民が享受していない という現状ならびに地域の実情に応じた安全性の確保、安心して暮らせる社会基盤整備の必要性を考えた場合 にはまったく的はずれな論調であり、国民、地域が求める公共事業については将来を見据えながら着実に推進 していかなければならない。 アメリカ・イギリス・ドイツといった欧米先進諸国と比べ、1人当たりの住宅床面積や高速道路、下水道整備 などが質・量ともに大幅に劣っている我が国の社会資本整備の中にあって、生活環境の改善、公共用水域の水 質保全に加え、近年になって頻発する都市型浸水の防除などに寄与する下水道整備は特に立ち遅れており、そ の国の先進度を示すバロメーターの1つとなる処理人口普及率は、2005年度末現在において69.3%にとどまっ ている。 〜循環型社会を形成し地球環境を保全〜 一方、下水道事業のあり方についても、「環境の世紀」、「水の世紀」とも言われている21世紀においては、 大きな転換が強く求められている。 これまでの「集め、処理して、流す下水道」から、「安全で快適な暮ら しを生み出し、地球環境を守っていく下水道」へと様変わりしていく下水道事業。具体的には、高度情報化・ 循環型社会などの時代の要請に応えるため、▽雨をマネジメントする下水道▽水質をガードする下水道▽もっ とエコロジーな下水道▽地球が選べる下水道ーへの変貌を目指しながら、効果的・効率的に展開され、量的拡 大、質的向上、リニューアルの課題解決に向けての確かな歩みを続けていく。 資源の有効活用、合流式を改善する研究や対策などと積極的に取り組むとともに、PI(パブリック・インボ ルブメント)の結果も踏まえながら国民生活を向上させていく下水道事業。こうした背景の下、広域的閉鎖性 水域である大阪湾や瀬戸内海に面しているばかりでなく、我が国最大の淡水湖・琵琶湖を懐に抱く近畿圏の各 府県においては、流域下水道を柱とし、公共下水道との連携を巧みに図りながら下水道整備を推進。この結 果、福井県を含めた2005年度末現在における近畿圏の下水道人口普及率は、全国平均(69.3%)を上回る 81.1%(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県、福井県)に達している。 水質の保全や水環境の維持・回復はもとより、アオコや赤潮の発生原因となる窒素・リンを除去するための高 度処理を推進する上においても欠かせない流域下水道は、関連する市町村の下水を一カ所に集め、まとめて処 理する効率的なもので、豊かで美しい環境の創造と、健康で快適・安心なまちづくりを先導。近畿圏の下水道 事業は、財政事情等の厳しい情勢を克服しながら、この画期的なシステムを軸として淀みなく進められてい く。