藤井實・エスケー化研(株)代表取締役社長 常に「無から有を生じる」発想が原点 オンリーワン・ナンバーワン企業への躍進をめざす建築仕上材の総合メーカ ー、エスケー化研(株)(大阪府茨木市中穂積3−5−25)の藤井實・代表取 締役社長。藤井社長は1955年の会社創業以来、幾多の苦労を克服し一代で売上 高500億円の大企業にまで築き上げてきた。常に「無から有を生じる」の発想 を原点とし、着実に発展を続けてきた。現在は社日本建築材料協会の会長も務 めている。一方で、藤井社長は私財を投じ、高齢者を対象にしたNPO法人の 大阪シニアー創造学院を設立し理事長も務める。
今後の高齢化社会が進む中で、各方面の注目を集めている。さらに今年、アジアの留学生を支援する藤井国際 奨学財団を立ち上げた。相撲に例えれば、自身をまだ関脇だと言い、これから大関、横綱をめざしたいと話す 藤井社長に、これまでの苦労話や思い出、今後の夢などについて聞いてみた。 (聞き手=ツールバンク(株)・能村麻里) ―――初めに1日の平均的なスケジュールからお聞かせ下さい。 「朝は5時に起床し、ヨガや腹筋、背筋、そしてラジオ体操をした後、自宅から近くの中山寺まで歩いて往復 する日課がここ20年ほど続いてます。往復で約4?ぐらいかな。それから食事をして、8時には会社に入り、 8時半の始業までに朝礼やミーティングなどを済ませます。仕事を終えて会社を出るのは20時頃になります ね」 藤井社長は、仕事の関係で月の半分は海外も含め出張に出かけて忙しい日々を過ごしている。そのため本社の 社長室を留守にしている事が多く、国内外を忙しく移動する様子を例えて、社員からは「動く社長室」と呼ば れているらしい。
―――休日はどのようにお過ごしですか。
「土曜日は付き合いも含めほとんど仕事が入っているので、休みは日曜だけになることが多いですね。ただ、 私の場合は会社の仕事とは別に、個人的にNPO法人の大阪シニアー創造学院の理事長をしていますので、休 日で仕事がない時は、生徒たちのレポートを読むなどそちらに時間を費やしています」 ―――確か、高齢者を対象にした「大阪シニアー創造学院」は藤井社長が私財を投じて設立された聞いていま すが、設立のきっかけは何だったのでしょうか。 「2003年9月に設立しました。高齢化社会が進む中で、定年後にただ家でじっとしているよりも、それまでの 仕事の経験を活かしながら創作研究活動を続けられるような、そうした活動の場と機会を提供しようと思った からです。入学資格は60歳から70歳で男女は問いません。生徒の皆さんには楽しみながら学んでほしいです ね」 学院は茨木市の同社大阪工場に隣接。化学技術科、園芸科、芸術工芸科があり、京都大学や大阪大学の教授ら が講師を務める。創作研究活動は2年間で、入学費や学費、教材費は無料、また通学費と昼食費は半額が補助 される。現在は元会社員や大学教授など18人が、日々創作研究活動を行っている。今後の高齢化社会の1つの モデルケースとして各方面から注目されている。さらに、この8月には財団法人藤井国際奨学財団の設立が文 部科学省から認可を受け、来年4月からスタートする。アジア各国からの留学生に対し、学費を援助しようと いうものだ。 〜休暇は奥さんとヨーロッパ旅行で絵画鑑賞〜 ―――それでは趣味を教えて下さい。 「ゴルフと旅行ぐらいかな。ゴルフは最近は忙しくてあまり行けませんが、旅行は毎年夏に妻とヨーロッパへ 行っています。好きな国はフランスとイタリアです。私は絵を描くのは苦手ですが、見るのは好きなので旅行 の時にはルノワールやミケランジェロ、ルーベンス、モネなどの絵を鑑賞するだけではなく、彼らのアトリエ にも足を運んで楽しんでいます。特に気に入っている絵はフェルメールの『青いターバンの女』ですね」 自宅には美術館でしか買えないというダビンチのモナリザの複製画を飾ってあるのが自慢。また、奥様は絵を 見るのも描くのも好きだが、藤井社長とは違って日本画が専門とのこと。2人で院展や日展などを見に行くこ とも毎年の課題である。 ―――家族構成は。 「妻と2男2女で、孫が5人います。子どもたちはそれぞれ独立して、今は妻と2人で宝塚市に住んでいま す。二人の息子はエスケー化研で働いています」 ―――これまでの仕事の中での苦労やターニングポイントになった出来事がありましたら。 「私は1955年に22歳で会社を創業したのですが、当時は苦労ばかりでした。廃溶剤を再製することからスター トしたのですが、常に『無から有を生じる』の発想が私の原点であり、今もこれは変わっていません。人間も 同じで最初は無から始まり、そこから成長して有になる。取引先の倒産や製品に対するクレームなど会社にと ってのピンチは何度もありましたが、これを克服できたのも創業時の苦労があったからだと思います」 建物は生き物であり、偽物はいずれメッキが剥げる。海外にも多くの子会社と取引先を持つ同社では、それぞ れの国の気候にも対応できる製品の品質向上、品質管理をめざして製品開発を進めている。 ―――最後に藤井社長の今後の抱負や夢などをお聞かせ下さい。 「会社の規模、信用、業容を拡大し、アジアのナンバーワン、オンリーワンをめざしたい。そして、仕事を通 じて建築文化に貢献できればと考えています。また、個人的には大阪シニアー創造学院と藤井国際奨学財団を 充実させることで社会貢献していきたい。相撲に例えれば私はまだ関脇、これから大関、横綱をめざして一層 がんばりたいですね」 この9月1日に74歳になったばかりだが、自身は若々しく、仕事に対する情熱や夢はまだまだ若い者には負け ない。一代でここまで会社を築き上げてきた人間のスケールの大きさと同時に、相手に対する思いやりも忘れ ない。今は第4コーナーを回って自分自身にムチを入れているが、遅れをとる社員にも遠慮なくムチを入れる と笑顔で話す。藤井社長と社員の信頼関係は強い。同様に、私財を投じて設立した大阪シニアー創造学院、藤 井国際奨学財団への思い入れも熱い。藤井社長の公私にわたる今後一層の活躍を期待したい。
【文・構成/曽碩和彦】 藤井 實 (ふじい・みのる)1955年、22歳で廃溶剤を再製する四国化学研究所を創設し社長に、63年四国化研工業、さ らに91年にエスケー化研に改称。83年から社日本建築材料協会理事を務め、2003年から会長。このほか、社日 本塗料工業会、社日本建築協会等の理事を務める。2000年に黄綬褒章受章。兵庫県出身、74歳。 麻里のひとりごと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 藤井社長の自社製品に懸ける想いは大きく、生み出すことの意味と偉大さを教えていただきました。これだけ の会社を築き上げ、ハードスケジュールの毎日にも関わらず、相撲の世界で言えば、まだ関脇だとおっしゃる 藤井社長。 お仕事のお話ではものすごいパワーを感じましたが、ご家族の話、特に奥様のお話をされている時の社長の 眼は優しく、経営者としての「人間力」はもちろん、男性としてもとても魅力を感じました。 インタビューにご協力いただきました藤井社長、そして今回の企画の実現にあたりご尽力くださいました広 報・西村様に心よりお礼申し上げます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・