大阪府の総合評価方式と希望価格制度2006年08月15日「公共工事の品質確保の促進に関する法律」いわゆる品確法の施行に伴い、公共工事の入札で総合評価方式の導入が増えてきている。既に国では一般競争入札で実施しており、地方自治体でも試行・導入するケースが出始めている。大阪府でも今年度から同方式の試行とともに希望価格制度の導入を決めている。低入札やダンピング、不良・不適格業者の排除等、入札での透明性や公平性を確保するものとしているが、その実効性はどうなのか。その導入の経緯や背景を探るとともに、大阪府契約局の上田博局長に聞いた。 (渡辺真也)。総合評価方式 特殊工事等で試行へ希望価方 予定価格の95%に設定大阪府で総合評価方式と希望価格制度が取り上げられたのは府議会2月定例会の一般質問。府議からの質問に対して府がそれぞれ答弁。総合評価方式については、民主党の花谷充愉府議が、「府内中小業者の技術力向上と健全育成に寄与するような‘大阪らしい‘ものの導入を」と質したもの。これに対し、阪倉嘉一・建築都市部長(当時)が、「(総合評価は)技術力のある業者選定は品質確保だけでなく、不良・不適格業者の排除にも有効」との認識を示し、契約局や発注部局と協議しながら、「大阪らしい方式を検討し、18年度に試行実施できるよう検討する」と答弁した。これを受け契約局では、試行時期や案件抽出、抽出と評価に係わるメンバーの人選、落札者決定基準の策定などを進め、今年6月、大西有三・京都大学大学院工学研究科教授を委員長とする「大阪府建設工事総合評価委員会」を開催、その結果、標準型での総合評価方式による試行工事3件を選出した。評価方式では、工程から品質、安全、施工の各管理についての施工計画と、浩治の施工法・社会的要請への対応、施工者の実績等の技術提案を求め、施工計画に評価点、技術提案に加算点を付与し、その合計点数を入札価格で割り評価値を算出、評価値の最も高い者が落札者となる。契約局によると、同方式の対象工事は、大型案件等にこだわらず、事業者の提案が府にとってメリットのでるような特殊条件等の工事としている。先頃公表された工事は、▽四条増補幹線第3工区下水道管渠築造工事▽一級河川安治川防潮堤補強工事▽枚方交野寝屋川線(旧郡打上線)道路改良工事の3件で、このうち四条増補幹線工事は9月15日に入札が行われ、その結果が注目される。一方、希望価格制度については、昨年の決算特別委員会で自民党の杉本光伸府議が質問し、契約局が検討を約束。その後、藤原安次出納長を委員長とする「大阪府入札・契約制度改善検討委員会」が検討を重ね、2月府議会で同府議がその後の検討状況を質問。答弁で藤原出納長は、「逼迫した府の財政状況では落札価格を下げることは経費節減の上でも有意義で、希望価格設定は落札率の高止まり防止にも効果がある」との見解を示し、大規模工事について「18年度から導入できるよう必要な手続きを進めていく」との意向が明らかにされていたもの。希望価格導入に関して杉本府議は、平成16年度に土木部が発注したAAランク(13億5,000万円以上)の12件の落札率が全て97%を超えたほか、参加資格を有する業者31社が何らかなの形で全社受注していたことから「談合の疑いあり」と指摘。このため、入札の透明性と落札率低下による経費節減の意味からも希望価格導入についての検討を求めていた。杉本府議は、問題の落札額が約500億円で、仮にこの落札価格を5%引き下げた場合、約25億円の削減が可能と試算していた。 府が導入を決めた希望価格制度は、土木一式工事で13億5,000万円以上、建築一式工事の12億円以上が対象。それぞれの予定価格の95%を希望価格に設定、同価格以下での入札を促す。ただし、総合評価方式やVE方式など、他の手法でコスト縮減方策を採用する案件には適用されない。実施にあたっては上限拘束性は持たさず、希望価格以下での入札を事前に公表するが、実施後も落札率の低下が見られない場合、制度の見直しを行うこととしている。しかしながら、今年度に入ってからこれまで、対象工事となる大型案件では低入札が続いており、制度導入については、「様子眺めの状態」(契約局)が続いている。上田博・大阪府契約局長に聞く(総合評価)価格と技術のバランスが重要希望価格導入は「様子ながめ」大阪府では今春、希望価格制度と総合評価方式の試行導入を発表されました。そこでまず希望価格制度について、価格設定を予定価格の95%に設定されましたが、この数字の根拠について教えてください。上田局長 世間一般からみた場合、落札率が九五%を超えると高落札率との指摘を受けます。ですから上田大阪府契約局長その95%をラインとして設定したものです。ただ、あくまでもこちら側の希望価格であり、強制力は持ちません。予定価格に対しての希望価格、さらに最低制限価格と3つの価格が存在し、かつこの制度が定着した場合、希望価格が予定価格になることは。上田局長 制度上、それはありません。あくまで予定価格に対しての希望価格です。導入の対象と予定時期は。上田局長 大型工事を対象としており、従って土木・建築工事でのAA等級が対象となりますが、今年度に入ってから対象工事での低入札が続いており、現段階では様子眺めです。このまま低入札で推移すれば導入しないこともあり得ます。導入の目的は。上田局長 平均的な落札率がだいたい85%前後ですが、大型案件では95%超になっておりました。件数ではそんなに多くはありませんが、金額的にはかなりな額になりますから、そのあたりでの経費削減効果を狙ったものです。総合評価方式について。上田局長 今年度から試行的に実施しようと言うことで、今月に初弾工事を公告しました。これには価格面と技術面があり、これらの割合で評価します。割合では価格面が大きく影響すると考えられますが、入札価格が低くなればなるほど技術面での評価が機能しなくなる恐れはあります。同ランクの企業であれば技術力は拮抗しているわけで、どうしても価格面での勝負となりますね。上田局長 そうですね。今回発注したシールド工事などでは、技術点においては大差はつかないでしょうから、どうしても価格での評価が重視されます。また、調査基準価格を下回るような金額だと技術評価の効果が出てこなくなります。総合評価方式は品確法の施行に伴うもので、不良業者やダンピング排除をしつつ工事の品質を確保することが目的。上田局長 これまでもある程度の技術が必要な工事では、過去の実績などを評価してきており、全く実績のない業者が受注するということはなかったです。しかし法律が施行されたことから、大阪府でも試行的に導入して、課題整理や今後の方向性を検討しようとするものです。対象案件や評価体制はどのように。上田局長 評価委員会を設置しております。メンバーは外部の学識経験者ら3名で、業者側の提案が府のメリットになるような案件を抽出します。大型案件に限らず言わば特殊工事的なものに適用していきます。総合評価については、国のほうから市町村への導入支援の要請もありますが。上田局長 府内市町村とは契約担当者の連絡会を通してPRを実施していますが、ただ、府県レベルと市町村ではかなりの開きがありますし、工事量ひとつをとってもなかなか難しい面はありますね。いずれにしろ、希望価格制度にしても総合評価方式にしても現時点での導入にはかなり厳しい状況となっておりますが、今後もより良い調達方式を目指してご尽力下さい。