北海道初の純揚水式発電所 北の大地で、電力建設技術の向上などに対する研鑽を積んだ―。(社)日本電 力建設業協会関西支部(片山富雄支部長)は13日、北海道電力?が、北海道虻 田郡京極町字春日に建設を進めている京極発電所建設現場において恒例の見学 会を開催した。同見学会は、電力建設技術の向上ならびに安全公害対策の検討 などを目的として1983年から実施しているもので、過去にも大きな成果を収め てきたが、今年は、クリーンな揚水発電所の建設現場をつぶさに見て回り、そ の施工に息づく確かな技術力や、電気を水の形で貯え、貴重なエネルギー資源 を有効利用する揚水発電システムに対する理解を深めた。 「中期経営方針(2005から2007年度)」に基づき、「お客さまからの確かな選 択と事業領域の拡大」、「効率性と信頼性の両立」、「社会からの確固たる信 頼の獲得」を目指し、グループ一体となった取り組みを進めている北海道電力 ?が新設する「京極発電所」は、北海道虻田郡京極町の北部に位置する台地に プール形式の上部調整池、京極町を流れる尻別川支流のぺーぺナイ川と美比内 川の合流部に京極ダム(下部ダム)を新たに設け、この間の落差(約370m)を 利用して水車・発電機により最大出力60万?ワット(20万?ワット×3台) の発電を行う北海道初の純揚水式発電所。運転開始予定は、1号機が2015年 度、2・3号機が2016年度以降となっている。
【写真上:上部調整池に熱いまなざしを注ぐ参加者】
【写真下:下部ダムではコンクリート打設が始まる】 北海道電力(株)京極水力発電所建設所の松下啓郎所長の挨拶に引き続き、高野準次長、藪正樹土木第一課長 から施設ならびに工事の概要説明を受け、予備知識を頭に詰め込んだ約50人の参加者は、上部調整池へとまず 移動。高さ22.6m、堤頂長13.0m、堤頂幅13.0m、堤体積125.1万立方mのアスファルト表面遮水壁型フィル(総 貯水容量4,400万立方m)で、2002年秋から掘削を開始。掘削総土量約620万立方mのうち、昨年度末までにおよ そ半分が完了している。 また、盛立については、25万立方mが完了。今後の予定としては、2008年まで掘削、盛立を続け、2010年から 2013年までアスファルト舗装を行う方針。 京極発電所上部調整池は、冬季には最低外気温がマイナス25度、積雪深さが五?を越える積雪寒冷地に位置し ている。このため、アスファルト表面遮水壁の設計・施工に当たっては、厳しい気象条件を考慮して、上部遮 水層に我が国の遮水壁としては厚層舗設工法を初採用するとともに、施工基盤層にも世界で初めて水工フォー ムドアスファルト混合物を使用する新しいアスファルト表面遮水壁構造を採用するのが特徴。また、IT施 工・施工管理システムを全面的に導入し、調査・設計・施工・施工管理まで、工事のすべての段階を体系的に 管理することにより、従来に比べて時間と労力の大幅な合理化と施工精度の向上を図っているのも特徴で、6 月20日現在における進捗率は33.6%に達している。 参加者が次に訪れた京極ダム(下部ダム)は、高さ54.0m、堤頂長332.5m、堤頂幅10.0m、堤体積126.9万立方m の中央土質型フィルダム(総貯水容量5,546万立方m)で、6月に第1回目の岩盤検査が完了したことにより、 今後は監査廊センター部ならびに洪水吐導流部と末端部のコンクリート打設を推進していく。なお、6月20日 現在における進捗率は、36.5%に達している。 現在、工事が進められている上部調整池(第1工区)と下部ダム(第2工区)に熱いまなざしを注いだ参加者 は、クリーンな揚水発電所の必要性やメリットを改めて実感。美しい自然と共存する北海道初の純揚水式発電 所の建設現場において研鑽を深めて恒例の見学会は有意義に幕を閉じた。