

大幅なコストダウンが実現 アスベスト対策の画期的な工法を開発―。社会的な問題に拡大しつつあるアス ベストに関して、既存建物での対策法として「珪酸塩固化・珪藻土被覆工法」 が期待を集めている。アスベストに直接噴霧して固形化するもので、除去や囲 い込みに比べて大幅なコストダウンが可能で、特に対策が必要なビルや店舗な どの物件を抱える不動産業業界からの関心が高まっており、先頃、神戸市で説 明会が開催された。 アスベスト対策法としては現在、除去や囲い込みが一般的となっている。しか しながら、その費用が高額な上、作業による粉塵の飛散も懸念されるため、特 に民間の建物所有者にとって大きな悩みのタネとなっている。 神戸市で建築・不動産業を営む(株)リンケージの黒田勉社長もその一人で、 所有するビルでのアスベスト除去を依頼したところ40?での見積もりが520万 円、囲い込みでも270万円にものぼるため、相談を持ちかけたのが、珪藻土メ ーカーである(株)ナチュルの松井良樹代表だった。
【写真上:神戸市で開かれた説明会】
【写真下:松井、黒田の両氏(左から】
松井氏は、早くから珪藻土を利用した固化の研究・開発を進めてきており、その過程でアスベスト固化剤とな る珪酸化合物「ハイパワーリッキド」を開発、これを噴霧することでアスベストの封じ込めに成功。黒田社長 の求めに応じて同工法での施工を実施したもの。この珪酸塩固化・珪藻土被覆工法は、ハイパワーリッキドを エアレスプレヤーにより直接噴霧し、リッキド乾燥後に珪藻土を噴霧して被覆するものだが、その前工程とし てアスベストの飛散を防ぐためリッキドの液体を周囲に「ミスト状態」で噴霧することに大きな特徴がある。 実はこのミストが、「見えないアスベスト」と言われる飛散したアスベスト繊維を捕獲する。アスベスト繊維 は、髪の毛の5,000分の一と細く肉眼では捉えられず、これを吸引することで人体に影響を及ぼすもので、捕 獲後は落下して固化され、繊維を含まないミストは蒸発する。これらの効果により、従来の除去や囲い込み等 で必要とされる集塵・排気装置の設置などの準備工事が不要となり、また作業員への安全性が向上。さらに、 これをコスト的に一般的な除去工事と比較した場合、例えば100?では、準備工事も含め約500万円となるが、 同工法では130万円から180万円と3分の1程度に削減することが出来るとしている。神戸市での説明会は、地 元の不動産会社で構成されるグループの求めに応じて開かれたもの。これら不動産各社では、所有するビルや テナントでのアスベスト対策に頭を悩ませている。 アスベストを放置したままでは入居者の不安が高まり、またテナントの借り手が見つからず、かといってテナ ント収入の何十倍とする除去工事もままならない状況に陥りかけている。説明会で黒田社長は、同工法によ り、40?で200万円から500万円かかるとされた対策工事が、「46万円で済んだ」と自社での例を上げ、自らも 不動産・仲介業を営む者として「ビルオーナーに提案するのも我々の務めだ」と語った。 また、工法の説明に立った松井氏は、大阪や京都での施工実績を上げながら、特に京都市では工事実施の届出 が「環境局で承認された」とその有効性を指摘。既に特許申請中であり、さらに現在、公害防止など環境保全 に関する調査・分析機関である財東海技術センターで評定を実施中としている。 また、従来工法では除去したアスベスト廃材は特別産業廃棄物として指定処理場での処理が必要となるが、こ れについても松井氏は、「同工法で完全固化すればリサイクル材として再生可能」として、その実現に向けて 取り組み中であるとした。このほか、同工法の解説と施工事例等を紹介したガイドブック‘これで安心!とっ ておきの「アスベスト対策」’を発刊し、希望者に無料配布している。問い合わせは、(株)リンケージ環境 事業部まで。フリーダイヤル0120−588−051か、FAX078-575-0004、E−mail:rkg7@rkg.co.jp