彩都東部地区の下水道整備に弾み 彩都とその周辺を含む北部丘陵地区の下水道整備に弾み―。「希望と活力に満 ちた文化のまち いばらき」の実現を目指して各施策を展開している茨木市が 建設を進めていた公共下水道国文汚水第一号幹線がこのほど完成した。彩都の 東部地区の一部汚水を受け入れるもので、延長は355.46m。来春から桑原、山 手台排水区を対象として供用を開始する予定となっている。一方、施工を担当 した山本土木(株)では、多彩な工法を駆使するとともに、環境保全に努めな がら安全第一に品質の向上を目指し、全工期無事故・無災害のうちに高精度施 工を達成した。
【写真上:岩盤式推進工完了管内状況】
【写真下:発進立坑完了全景】
大阪府の北部に位置し、北は京都府亀岡市、東は高槻市、南は摂津市、西は吹田市・箕面市・豊能郡豊能町に それぞれ接している茨木市は、北大阪の交通・産業の要衝として重要な位置を占める北摂地区の中核都市とし て着実な発展を遂げてきた。 豊かな自然と歴史・文化的資源に恵まれ、人・物・情報が活発に交流する住 宅・産業都市では、「希望と活力に満ちた文化のまち いばらき」の実現に向けて各施策を積極的に展開。▽ こころすこやか「福祉充実都市」▽くらしやすらか「安心実感都市」▽未来はぐくむ「環境実践都市」▽活力 あふれる「生活躍動都市」▽個性かがやく「文化創造都市」―の都市像を掲げ、活力に満ちた文化のまちを創 りだしていく。このうちの未来はぐくむ「環境実践都市」の具現化においては、地球環境の保全に寄与すべ く、環境負荷の低減に向けた大気や水環境の保全、資源の有効活用と省エネ活動や建築物への環境共生技術の 導入によるエネルギー消費の削減に努めて循環型社会を形成。また、健やかな市民生活にとって不可欠な北部 や丘陵地域の自然環境を守り、育むとともに、うるおいとやすらぎに満ちた生活空間と誰もが親しめる美しい 都市環境の創造を目指していく。 一方、大阪都心部から北へ約20?の茨木市北部から箕面市東部にかけて広がる丘陵地に誕生し、さらなる発展 を遂げていく彩都(国際文化公園都市)は、自然に恵まれた北大阪地域の立地条件を活かし、国際的な文化・ 学術研究拠点を形成することにより高度情報化社会に対応する先進機能と自然と都市が調和したアメニティ豊 かな環境を併せ持つ次世代にふさわしい複合機能都市を目指して建設を進めているもの。施行面積は約743ha (西部地区約313ha、中部地区約63ha、東部地区約367ha)で、このうちの西部地区約25ha(茨木市域約24ha、 箕面市域約1ha)が先陣を切って平成16年春に待望のまちびらきを迎えた。まちびらきしたエリアには、「茨 木市立彩都西小学校」が開校したのをはじめ、医薬基盤研究所や彩都バイオインキュベータなどが完成し、約 350戸・約1,000人が丘陵部にひろがる美しい庭園街区において快適ライフを満喫している。「新しい生命(い のち)の都市を目指して」をメインテーマに、サブテーマとして掲げる「先端科学と文化の融合」、「新・郊 外居住の実現」を図り、今後も公民共同で都市に生命(いのち)を吹き込んでいく彩都。主要アクセスとなる 大阪モノレール彩都線(阪大病院前から西センター駅間約4.3?)についても来春の開業を目指す延伸工事が 軌道に乗っている。こうした背景の下、茨木市においても先進機能と自然と都市が融合する未来都市の社会基 盤整備に力を注いでおり、その一翼を担う下水道事業の一つがこのほど完成した。 1962年10月から中央排水区174haについて事業を開始した茨木市の公共下水道事業。その後、計画区域の変更 を14回(下水道法認可)行い、現在では流域関連公共下水道として、計画排水面積3.642.90ha(18排水区)の 事業認可を得て事業を進めている。その整備区域は、国道171号線以北の丘陵部と、国道171号線以南の平野部 に大別でき、流域下水道との調和を図るため、安威川流域下水道の中央処理区ならびに淀川右岸流域下水道の 高槻処理区とに18排水区を分割して事業を推進している。一方、北部丘陵地区において事業を進めている彩都 (国際文化公園都市)とその周辺地域を含む1,094.10haの区域については、1992年5月に全体計画区域に新た に追加し、公共下水道については、開発区域内は都市再生機構、区域外は茨木市が整備を進めている。 《桑原、山手台排水区の供用来春開始予定》 国文汚水幹線整備事業は、彩都の東部地区の一部汚水を受け持つ幹線整備を進めるもので、事業には平成4年 に着手。東部地区の一部ならびに中部地区の汚水を受け持つ勝尾寺一号幹線、西部地区の汚水を受け持つ勝尾 寺二号幹線と相まって、人口定着が進む未来都市の社会基盤整備を促進していく。このほど完成した公共下水 道国文汚水第一号幹線は、桑原、山手台、車作、国文排水区からの汚水を受け入れるもので、延長355.46m。 来春に桑原、山手台排水区を対象として供用を開始する予定となっている。 《山本土木が高品質施工》 交通量の多い茨木亀岡線に面する大阪府茨木市桑原地内の建設地において、多彩な工法を駆使するとともに、 環境保全に対する万全の対応策を講じながら安全第一に品質の向上を目指し、多くの関係者から寄せられてい た全幅の信頼に応えた山本土木(株)。金敬三所長をはじめとする同社ならびに各協力会社の有能なスタッフ が、一丸となって公共下水道国文汚水第一号幹線築造工事に挑み、全工期無事故・無災害での高品質施工を達 成した。岩盤層における大深度掘削(GLマイナス19.01m)、推進管路ルート内に曲線部(R=100)も含む 岩盤式推進工などの難条件を創意工夫によって着実に克服しながら進めた工事が、軌道に乗ったのは、平成16 年8月。発進立坑用地が、ハイキングコースへの遊歩道および法面だったため、施工ヤードを確保するための 伐採などから着手し、仮土留め工を経て、施工ヤードの造成を9月末に完成させた。 そして、10月初旬から は、発進立坑の親杭打設および先行削孔に着手。掘削地盤が岩盤層であったため、岩盤打撃掘削方式であるダ ウンザホールハンマー工法を採用して施工した。 《ダウンザーホールハンマー工法など多彩な工法を駆使岩盤堀削に緻蜜に対応》 岩盤掘削工事で多用されるようになったダウンザホールハンマー工法における削孔掘削工法は、強力なコンプ レッサーから圧縮空気をハンマー本体内へ送り込み、ピストンの往復運動によってハンマービット先へ打撃力 を与え、岩盤層にせん断破壊を起こす打撃掘削方式で、従来の切削方式と比べて岩盤層や玉石層の掘削速度が 著しく速いばかりでなく、掘削されたズリはエアの流速によって地上に排出される。こうした利点を活かしな がら進めた削孔施工、親杭(H鋼)の建て込み、モルタル充填(セメントミルク)などは平成17年2月中旬に 完了。ハンマーの破損といったトラブルがあったものの、無事に最初の難関を突破した。H鋼とH鋼の間に横 矢板を挿入しながら七次掘削まで行った発進立坑の掘削工は、岩盤掘削の方法として静的破砕剤のひとつであ るロックトーンを使用し、その充填破砕作業を主として推進。GLマイナス5から12mまでの軟岩、GLマイ ナス12から19mまでの中硬岩(花崗岩)への対応をそれぞれ慎重に図り、7月末には、床付けまでが、完了す るに至った。 延長355.46mの岩盤式推進工(内径1,000?)が始まったのは8月中旬。▽岩盤、巨礫、玉石、泥岩ならびにこ れらを含む互層地盤の掘削が可能▽ビットの消耗が生じても、マシン機内から繰り返しビット交換が可能▽高 トルクを備えたカッターディスクとチャンバー内のプレートクラッシャーにより、巨礫、200MPa程度の岩 盤層にも適用できる▽長距離推進には互層が混在するが、相応のビット交換により長距離の推進が可能▽中折 れ方式のステアリング機構と姿勢センサー・光学機器監視により、直線だけでなく曲線推進にも高精度を得ら れるーという特徴があるユニコーンロング工法を採用して掘削していった。 このユニコーンロング工法に使用するマシンは、岩盤・巨礫・玉石を含む互層など、幅広い地盤に適応でき るマシンで、ローラーカッターを前面に配置したカッターディスクで剥離破砕し、取り込まれたズリはチャン バー内のクラッシャーで再破砕され、排泥ポンプにより地上へ流体輸送するもの。また、推進中にカッタービ ットが摩耗した場合、機内の隔壁ハッチを開き、機内より交換しながら長距離の推進や曲線推進に対応でき る。このように、優れた特性を有するユニコーンロング工法だが、曲線推進が三箇所あり、そのうち曲線半径 R=100mに対応しなければならないことや、複合層での長距離推進であったため、マシンの能力、推進力など がポイントとなった。これらの条件下において昼夜兼業での作業を続けた山本土木(株)では、日進量3mを 確保して11月中旬にマシン到達を果たし、確かな技術力を実証。なお、ビット交換については、200m付近にお いて一度行った。到達立坑の掘削は、これに先立って10月中旬から開始。岩盤層でのケーシング立坑施工を容 易にしたロックイーター工法を採用して施工し、回転圧入掘削、底版コンクリート打設、レイタンス除去、覆 工設置の一連の作業は同月末に完了するに至った。 《全工期無災害も達成》 昨年の12月初旬から今年の1月末にかけては、到達立坑の特殊人孔築造工を実施し、この後、人孔内落差処理 用のドロップシャフトを設置。なお、この間の11月下旬から12月中旬には、マシン、推進プラントの撤去も行 った。「長丁場の工事のため、ひとつひとつ決められたことをきっちりと守って安全を最優先させる」という 金所長の方針に基づき、全作業員が一丸となって取り組んだ公共下水道国文汚水第一号幹線築造工事は、2月 末に埋め戻しおよび仮復旧が、完了したことによって待望の竣工を迎え、岩盤層における大深度掘削や推進管 路ルート内に曲線部もある岩盤式推進工の施工における確かな道標を残した。 なかでも、推進管のカーブがきつかったので、ヒューム管の精度管理には、十分に留意。測量の結果を踏まえ た上で点検を重ね、異常を感じた場合には、素早く対応を図って高品質を確保していった。環境保全について も、濁水処理設備を設置するなどして安威川の汚濁防止に努めた山本土木(株)では、墜落・転落災害、重機 災害の防止を重点項目として定めた安全管理活動を緻密に展開して全工期無事故・無災害を達成。高品質施工 に花を添えて有終の美を飾った。 金敬三所長の話=27年間に亘って土木関連の仕事に従事していますが、大深度の岩盤掘削は、私自身にとって も初めての経験であり、苦労が数多くあったのは確かです。しかし、自然との対話を心がけながら、やり甲斐 のある仕事とひたむきに取り組み、責務を果たすことができた喜びには、大きなものがあります。これも偏 に、茨木市をはじめとする関係各位のご支援、ご指導の賜物であり、心から感謝申し上げますとともに、この 工事に従事したすべての作業員にありがとうの言葉を贈ります。