PFI事業に参画する建設企業の格差が顕著になってきている。大阪府をはじめ近畿の各自治体で実施される PFI事業について、地域レベルでのPFI推進を目指すNPO・大阪PFI協会の大植茂樹理事長は、大規 模案件に関しては地場企業は、「お手上げ」の状態とし、小規模案件への参入に期待を寄せる。その大植理事 長に最近の動向を聞いてみた。 《地元企業は小規模案件に》 関西で近年実施されたPFI事業では、大阪府の府警寝屋川待機宿舎建替整備、水と緑の健康都市整備、府営 筆ヶ崎住宅建替整備など、府内市町村では東大阪市での消防局庁舎整備などが上げられる。これらの案件はい ずれも規模・事業期間とも大きなもので、SPC(特別目的会社)に参画した建設企業は全国大手ばかり。 これについて大植理事長は、「事業規模が大きくなればコストも大きくなるため、地元企業でファイナンスを 付けられるところはない」と話す。特に寝屋川の場合、「計画地に係る指定枠も大きく、地元企業では無理」 との見方を示した。最近のPFI事業に関して大植理事長は、「施設のデザインなどの事業提案よりはコスト に比重がかかっている」と見る。つまり発注者側に「VFM(費用対効果)が第一」との考えが根強く、イニ シャルコストを抑えようとする意識があるためで、現状では「ハコモノのPFIでしかない」とする。 《「初めにコストありき」の体質に疑問》 この点について大植理事長は、「関東では施設のデザインや性能の評価がもう少し高い」とし、「初めにコス トありき」の体質に疑義を投げかける。リスクを回避したい行政と、ファイナンス面に不安が残る地元企業、 「これらの要員が相まって地元企業の参入を阻んでいる」とする。この背景には、専任担当者の不在も一因。 府県レベルでは担当セクションを設置しているところもあるが、市町村ではそこまでに至っていない。また参 加する建設企業にしても、大手ゼネコンには専任担当者・部署を設けているが、地元企業には専任者がおらず 「事業提案上でのネックになっている」と見る。 PFIに対し、コスト軽減に重きを置く行政側の姿勢は多くの関係者が指摘するところだ。これについて大植 理事長は、「公共サイドの事業投資に対する認識の違いでは」と推察する。PFI実施にあたっての検討調査 やVFM算出は行政ベースで行い、また調査結果でもVFMの増減を問題視するケースが多く見られる。この ため、PFI手法のノウハウを持たない市町村では「検討調査段階で断念するところが多い」とし、地元企業 のマーケットである市町村でのPFIが展開しない要因だとする。しかしながら「小規模案件では、まだまだ 地元が食い込む余地ある」と、大植理事長は「道の駅」整備を例に上げ、施設規模が小さく、かつ運営業務が 付随した事業に期待を示す。 また、事前の検討調査などを委託せず、「行政自らでやることでコストを減らせる」とし実際、それらのノウ ハウを蓄積しつつある自治体を例に上げる。さらに府内では、政令都市となる堺市で、「今後、案件がふえて くるのでは」と予想する。いずれにせよ、PFI法の趣旨である「民間発意」を活かせる環境づくりが必要と なるが、大植理事長は、地元点の加算など「市町村でのPFIは、地元重視でやっていただきたい」と強調 し、行政側の配慮を訴えた。