狭山池さくら満開委員会(狭山池まつり実行委員会・大阪狭山市・大阪府)の主催によ る「第3回 建築家安藤忠雄講演会in狭山池」が1月22日、大阪府立狭山池博物館で 開催された。この講演会は、狭山池ダムのシンボルである桜の植樹・育成を促進し、水 辺環境をより一層良好にすることを目的として2年前から毎年開かれているもの。これ までに寄贈分も含めて約110本の桜の木の植樹を終えている。今回はこうした取り組み に賛同した安藤氏を講師に招いて開催された。ちなみに、会場の大阪府立狭山池博物館 は安藤氏が設計した。 《大阪府などが主催 市民参加のまちづくりに期待》
2回に分けて行われた当日の講演会には、一般市民など合わせて約250人が参加した。このうち15時から開か れた2回目の講演会では、主催者を代表して狭山池さくら満開委員会の武田博允会長、大阪狭山市の吉田友好 市長の両氏による挨拶に続いて安藤氏が「平成18年さくらの会」をテーマにスライドを交えながら講演した。 この中で安藤氏はまず、高齢化社会が進む現状にふれて「映画や美術でも何でもいいから好奇心を持つことが 大事。美しいから、おもしろいからと桜を見るために出かけることもそうした好奇心の1つ」と述べ、肉体面 だけでなく精神的な健康が長生きにも繋がるとの考えを示した。 そして安藤氏は「これまではまちづくりと言えば箱物(建築物)をつくることだったが、これからは自然や周 辺環境など自分(住む人)たちの思いを反映させ市民参加によるものになるだろう」と述べた後で、「行政と 市民が一体となって桜の植樹・育成に取り組む狭山池が、今後のまちづくりの見本になればと思う。桜が満開 になった狭山池を楽しみにしたい」と期待を込めた。 また、大阪城の再建や中之島の中央公会堂の建設などが市民の浄財によって完成したことをスライドで説明し ながら、古くから大阪は官に頼らずに民の知恵と結束力で多くの事業を成し遂げてきた事例を紹介。さらに、 安藤氏自身が提唱して昨年から取り組んでいる中之島周辺の「桜の会・平成の通り抜け」についても、当初の 4万5,000人の目標に対して、これまでに一般市民ら3万7,000人から募金が寄せられていることを報告した。 そして「大阪城や中之島を中心に、この狭山池も含めて桜で埋め尽くし、大阪を全国の桜の名所にしたい」と 大きく夢を膨らませた。 さらに、アジアの中の日本の位置づけについても言及し、急速な発展を続けている現在の中国やインドの例を あげて「日本も高度成長期以降は環境を破壊してきたが、これからは長い歴史の中で自然とともに生きてきた 美しい民族として、アジアの中で尊敬される国家にならなけれはならない」と力説し、自然や環境に配慮した まちづくりの必要性を求めた。そして最後に安藤氏は、市民と行政が協働して狭山池の桜の植樹・育成に取り 組んでいることを高く評価しながら「今後のまちづくりは箱づくりではなく、人と人との心を繋ぐネットワー クづくりであり、そのためにも市民ひとり一人が参加したまちづくりに期待したい」と呼びかけて講演を締め くくった。 なお、今年の植樹は2月25日10時から同博物館前で行われる予定。今回は安藤氏の「桜の会・平成の通り抜 け」から寄贈された100本を含め115本の桜が植樹される。