登録建築家協会の設立を (社)日本建築家協会の次期会長に選出された、前JIA近畿支部長の出江 寛氏はこのほど、大阪市中央区の綿業会館の近畿支部で会見を行い、来期の JIA活動への取り組みについて語った。仙田満会長との間で、先月に行わ れた会長選挙で選ばれたもので、会見で出江氏は、JIAの活動の根幹にあ る「設計業務環境の改善」に向け、登録建築家協会設立など、設計報酬の法 制化に向けた取り組みについての決意を語った。
先の会長選挙で出江氏は、設計報酬基準の法制化や建築家法の制定、地域の自主性を高めた活動の活性化ー を目標に、3つの戦略と7つの施策をマニフェストに掲げていた。 会見で出江氏は、JIA設立以来の課題である「専兼分離による職能の確立」に対するこれまでの活動を、 「有効な手立てがなく、半ばあきらめている状態」と述べ、それが設計も含め建設業界全体に影響を及ぼし ているとした。専兼分離について出江氏は、ゼネコン設計部は受注競争になれば、「設計料はサービスとな っている」とし、設計料を浮かすため姉歯問題などが発生したと、これによる弊害を指摘。このため専兼分 離が現状では不可能な状態で、「まず、ゼネコンでも設計料を有償とするべきだ」として、建設業法におい て法制化したいとの見解を述べた。 法制化する背景として出江氏は、施工と設計施工の二種類がありながら、建設業法には設計に関する規約が ないため、「施工者側には設計に対する意識が希薄」との思いがあり、このため「建築士法に習った規約を 制定する必要がある」と強調し、法制化にあたっては、「他団体と一緒になって活動する必要がある」とし た。その方策として、「登録建築家協会」の設立と設計契約書の確認を上げた。登録建築家協会は、専兼の 別なく建築や構造、設備の各建築士が集まり、その中では専業団体としてJIAを位置付けることとし、建 築家が大同団結して数を確保、関係機関に働きかけようとするもの。 また、設計契約の確認方法では、確認申請時に設計料の領収書の添付を義務付けるとともに、設計料金の適 正化を見るため第三者機関の設置や算出方を制定する方法を述べた。 これらの法制定の前提として出江氏は、「国民の理解が必要」とし、その理解を得るためには、設計報酬 の法制化によるメリットの部分を国民に示し、周知徹底させることとするほか、JIA各支部に対して、 「設計料法制化の是非」を問うアンケート調査を実施する意向を示した。 出江氏は、「最終的な目標は建築家法の制定であり、専兼分離だが、その第一歩が設計料の法制化。専兼が 同じ土俵に上がることが重要で、そのため全団体が一緒になってやること。そのためには国民の理解を得る ことが必要ですが、その役目はJIAが引き受けましょうということだ」と決意を語った。 前支部長時代からの物事をはっきりと言う「出江節」は健在。自ら‘実務派’と任ずるだけあって、歴代の JIA会長とは確かに肌合いが違う。専業建築家としての実績はもちろん、ゼネコン設計部の内情にも明る いのが強みだ。改革には痛みが付きものだが、その辺りのリサーチも十分で、来年5月の会長就任に向けて の準備も怠りない様子で、会見でも節々に自信を覗かせる。今後の舵取りに注目したい。 出江寛 (いずえ・かん)立命館大学土木工学科卒。京都大学施設部、竹中工務店に勤務後、1976年に出江寛建築事 務所開設、(現出江寛建築事務所(株))、大阪芸術大学講師や社大阪府建築士会理事、社新日本建築家協 会本部理事を努めたほか、2002年から2006年までJIA近畿支部長。京都府出身、76歳。