

アジアの拠点空港へ期待高まる アジアそして世界へのゲートウェイ・関空の新たな飛躍に向けて―。 今年8月2日に供用を開始する関西国際空港の第2滑走路の活用方策や課 題、将来に向けたビジョンを有識者らで議論する「関空・第2滑走路オープ ン記念シンポジウム」が27日、関西国際空港会社の主催により大阪市中央 区・大阪ビジネスパーク円形ホールで開催された。シンポジウムでは、第2 滑走路のオープンにより「アジアの中で関空の役割が高まってくる」との見 方が大勢を占め、関空会社の村山敦社長は、「国際貨物ハブ空港としての役 割」に期待を寄せた。シンポジウムには関係者、一般はじめ約500人が参加、 後援は国土交通省、大阪府、社関西経済連合会、大阪商工会議所、関西国際 空港全体構想促進協議会、財関西空港調査会。 村山社長「国際貨物ハブ空港に」 シンポジウムでは、初めに主催者を代表して秋山喜久・関経連会長、冬柴鐵 三・国土交通大臣、太田房江・大阪府知事が挨拶を行った。
秋山会長は、「関空がアジアのゲートウェイの中核となる上で国際空港としての機能強化は最優先事項だ」 との認識を示し、課題としてネットワーク機能の強化を上げた。この中では、関空を核とした「魅力ある地 域づくり」、国内空港と連携した「使いやすい空港」、非航空事業収入増を目指す「高コスト是正」、陸・ 海・空一体となった「物流ネットワークの形成」を上げ、「関空をフル活用するための戦略が重要、みんな で議論し考えていきたい」とした。 冬柴大臣は、「2目の滑走路のオープンにより真の24時間開港の国際標準規格の空港となり、アジアゲー トウェイ構想でもわが国を代表する国際拠点空港と位置付けている」と期待を寄せた。今後については、国 際競争力の強化が必要とし、財務体質の改善や国際物流整備、道路と鉄道を含めたネットワーク整備を挙げ ながら、「関空は国の財産であり国際交流や経済交流の場として、関西経済の決め球として活用したい」と 展望を語った。 太田知事は、シンガポールの事例を挙げながら「国力を発揮するためには国際規格の空港を日本の真中に持 つべきだ」とし、関空はアジアに開かれた拠点空港としての特長を活かすべきだと述べ、「関空が関西はも とより、日本全体の牽引車となるよう府としても施策を展開していきたい」と今後も支援していくことを約 束した。 次いで、村山社長が‘第2滑走路オー運の概要と当社が目指すべき空港像について’と、財日本総合研究所 会長を務める寺島実郎・三井物産戦略研究所所長が‘ユーラシアダイナミズムと関空の未来―戦略的構想を 求めて‘とする講演を行った。村山社長は、第2滑走路のオープンにより「アジア諸国の空港に伍する空港 が完成した」と、建設を推進してきた先人や地域の先見性を誇りに思うと述べた。滑走路以外の施設につい ては需要に応じて整備を図ることとしながらも、「5年後を考えた場合、緊急の課題ではある」とした。滑 走路の整備効果では、ピーク時の機能強化が図れ、需要増が期待できるとし、「今まで以上に成田や羽田の 保管機能を果たすことが出来る」とし、2期島の用地を活用した施設増強などで、「24時間稼動の国際貨物 ハブ空港として発展させたい」と意欲を見せた。 また寺島氏は、世界的な潮流として物流の拡大とともにアジアの拡大と大移動の時代を指摘。アジア諸国と のネットワークをキーワードとし、アジア貿易が対米貿易を「凌駕しつつある」とした。関空の活用では、 広域連携による相互交通体系の確立、後背地の充実と情報交換の必要性を挙げ、「空港だけでは地域は伸び ない。人を引き付ける魅力、磁場の形成、情報拠点づくりが必要」との見方を示した。 引き続いて、寺島氏をコーディネーターに、新町敏行・日本航空会長、山元峰生・全日本空輸社長、岡部正 彦・日本通運会長、鈴木久泰・国土交通省航空局長、村山社長をパネリストとしてパネルディスカッション が行われた。 第2滑走路のオープンに関しては、新町会長が「世界に堂々と飛び立てる空港。アジアを見据えて飛躍する 空港としたい」とし、山元社長も「関空をターゲットとした戦略を立て全てのエネルギーを注入したい」と エアラインの立場で評価。 国際ハブ空港としては、岡部会長が、「深夜便の活用で多様化する荷主のニーズに応え、ビジネスモデルを 設け関空の発展に寄与したい」とし、鈴木局長は、「地理的、歴史的要素を活かしアジアとの関係を大事に したい。貨物によりアジアでの地場を固め、その他の展開を図っていければ」と、それぞれアジアを中心と した展開に期待を寄せた。一方、高コスト構造について寺島氏が、「ゲートウェイに位置付けるのであれば 改善する必要がある」とし、新町・山元両氏も、海外空港と比べ着陸料が高すぎると是正を求め、岡部会長 も「かつての港湾のように世界から取り残される恐れがあり、是正に向け国も含めて考えるべき」とした。 これに対し鈴木局長は、「財務体質の抜本的改善はゲートウェイ構想の中にも盛り込まれている。競争力強 化のためにも考えていく」と述べ、また村山社長は、有利子負債の大半は一期事業でのものとし、「公的資 金注入も必要では」との考えも示しながら、「自らできることはやっていく」とコスト縮減への決意を見せ た。 関空の活性化では、村山社長が「大阪をアジアの中の中心都市とし、関空はそれを代表する空港でありた い」と地域の基幹インフラと位置づけ、鈴木局長もビジネスジェット機の就航など「通関手続きも含めて考 えたい」とし、岡部会長は「2期島で特色ある物流サービスの提供を」、新町会長は、「安全性と24時間 は大きなメリット。手続き等も含め、あらゆる面デメリットを享受できるように」との意見が出された。 最後に寺島氏が、「関西には高いポテンシャルがあるが、それを活かす総合的な戦略に欠けている。人を引 き付ける装置設計がない。リピーターとして質量ともに引き付けるものが必要だ」と今後の展開を示唆し て、シンポジウムを締めくくった。