JIA近畿、「第2回関西建築家新人賞」決まる (社)日本建築家協会近畿支部の「第2回関西建築家新人賞」には、芦澤竜 一氏の「SETRE Chapel」と、小笠原絵里氏の「錦綾幼稚園」に 決まった。同賞は、若手建築家の発掘と育成を目的に創設され、今回が3回 目。受賞作品について吉羽逸郎支部長は、「幼稚園という子供の日常性の世 界、チャペルという非日常の大人の世界と、異なった2作品だが、良いもの が出てきたと思う」と評価した。 SETRE Chapelは、廃業したホテルの再生プロジェクトの一環と して計画された。設計に際し芦澤氏は、「ここでしか出来ない建築を模索し た」とし、「チャペル空間は自然の移ろいで変化するものを」とした。SR C造2階建て、延床面積296.69?で、1階には待合室や控室を配し、2階を チャペルとしたもの。チャペル空間は、前面に切り取った開口部から明石大 橋が望め、太陽光を取り入れることによりその変化を利用した「自然現象で 変化を遂げる空間」を実現。また外観も、前面から後方にかけて約3mの傾 斜を持たせている。
錦綾幼稚園は、既存園舎の建て替えとして行われた。「大地と遊ぶ 空と遊ぶ」をコンセプトに、小笠原氏 は体験入園や先生達、父兄と話し合い、様々な個性を持つ子供達の居心地の良い「居場所」づくりを考えた とする。園舎は、RC造1部S造平屋、延床面積879.92?。大小2つの広場を取り囲む教室は、それぞれ独 立しながら連続性を保ち、それを覆う屋根は壁と切り離された構造体として、「変化のある居場所をつな ぐ」ことで、子供達はそれぞれが「お気に入りの居場所」を見つけることができる。 審査を担当した遠藤秀平・審査委員長は、SETORE Chapelについて、「要素を単純化して空間 の強さを獲得し、必要な象徴化を生み出している」とし、錦綾幼稚園は、「開放的な空間を感じさせる分散 配置でバランスよく実現している」と講評。応募のあった13作品のうち、現地審査を行った四作品の中で 「この2作品は早いうちに合意選定された」としている。 審査にあたっては「求められるのはオリジナリティー」との視点に立ち、その手がかりを「あこがれ」に求 めた。あこがれは対象への価値の共有、コピーを誘発し、やがてそのコピーを克服する「心の動きの核とな るもの」と考え、この気分を有していることが「新人賞としての重要な1点」と、審査の指標とした。 また遠藤委員長は、「質と内容を保つため」に哲学者である鷲田清一・大阪大学副学長と、美術評論家の建 畠・国立国際美術館館長の両氏に審査委員を依頼。「建築家以外で大丈夫か」との危惧もあったが、建築 を考える「プロセス」を重視する建築家に対し、完成後にどう使われ、利用者が影響されるかと、「出来上 がってからの評価」をする両氏の「素晴らしい評価軸」により、今回の試みは「大成功だった」と総括し た。 今回が2回目となった同賞だが、昨年の第1回目実施後、「賞の対象となる45歳以下の新会員が増えた」 (吉羽支部長)とその効果を喜びながら、「JIAとしての姿勢を示せたと思う」と、今後に期待を寄せ た。