人と動物とが共生する生活環境づくりを先導していく中核施設が完成した。奈 良県が、宇陀市の中心部に位置する奈良県畜産技術センター(旧畜産試験場) において推進している畜産試験場跡地整備事業「うだ・アニマルパーク」内に 建設を進めていた動物愛護センターがそれで、構造規模は鉄筋コンクリート造 平屋建て、延べ床面積1,323.43?。動物愛護思想の普及啓発、動物の飼育・管 理に関する指導、相談などを行う施設の施工を担当した村本・松塚特定建設工 事共同企業体では、安全第一に品質の向上を目指していき、多くの関係者から 寄せられていた期待と信頼に応えた。
人口の減少や地球温暖化、科学技術の急速な進歩など、これからの社会のあり方を根底から変化させる大きな 潮流を前に、県民と共有する道しるべとして策定された「やまと21世紀ビジョン」。奈良の3つの個性である 「歴史の?奈良?」、「住まいの?奈良?」、「共生の?奈良?」を生かし、住民、企業、行政などが一体と なって取り組むことにより、「住む人々には安心でこころ豊かな暮らし」と、「訪れる人々には感動と満足の 時」を実現し、基本目標である「世界に光る奈良県づくり」を目指していくための将来像で、2035年を目標年 次として定めている。 その奈良県が、宇陀市(旧大宇陀町)の中心部に位置する奈良県畜産技術センター(旧畜産試験場)において 進めている畜産試験場跡地整備事業「うだ・アニマルパーク」は、人と動物とのふれあいを通して動物を学 び、動物から学ぶこと並びに「いのちの教育」、「生きる力」を育み、広く県民に動物全般に対する理解を促 進するとともに、動物に対する愛護の思想について普及促進を図り、豊かな社会づくりに寄与することを目的 とする施設。約60年間に亘って牛・豚・鶏などの試験研究を行い、様々な成果を上げている奈良県畜産技術セ ンターの大家畜(牛)部門が移転したのに伴う敷地の有効活用を図る事業で、動物学習館、ふれあい広場、多 目的広場、展望広場、畜産技術センター、動物愛護センター、鳥獣保護センターを建設・整備する。 全体の完成予定は2008年4月となっているが、このうちの畜産技術センターは、家畜の維持・増産や安全性の 確保及び試験研究や環境問題の解決のための研究などに対する大きな成果を既に収めている。一方、動物学習 館とともにこのほど完成した動物愛護センターの構造規模は、鉄筋コンクリート造平屋建て、延べ床面積 1,323.43?。事務・動物飼養棟、臨床・動物管理棟で構成されている。 動物の虐待防止や適正な取り扱い方などの動物愛護に関する事項、人に対する危害や迷惑の防止などを図るた めの動物の管理に関する事項を定めた「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)が最終改正さ れたのは2006年6月。「動物が命あるものであることに鑑み、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、または 苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱 うようにしなければならない」という基本原則に則り、国及び地方公共団体においては、相互に連携を図りつ つ、学校、地域、家庭等における教育活動、広報活動等を通じて動物の愛護と適正な飼養に関する普及啓発に 努めなければならないとしている。 こうした背景の下、奈良県においても動物愛護思想の普及啓発、動物の飼育・管理に関する指導、相談及び動 物による危害防止並びに保護・処分業務を行う施設として動物愛護センターを(仮称)うだ・アニマルパーク 内に建設。 動物飼養ブロックでは、 ▽飼養室を直線上に配置し、作業員の動線の単純化を図る ▽譲渡室(マッチングルーム)を事務ブロックの北側に配置することで、ふれあい広場と動物訓練広場との一 体性を持たせる ▽成犬飼養室とねこ飼養室を主園路と反対側の東側に配置し、動物たちのストレスを軽減させる――など。 一方の事務ブロックでは ▽玄関ホールと訓練広場は視覚的繋がりを持たせる ▽施設が活動している雰囲気を来場者に感じとってもらうため、主要な部屋を主園路に面して配置する ▽アニマルパーク全体にとっての重要な空間であるサニタリースペースを来館者の使いやすい位置に設ける― ―などのコンセプトに基づいてレイアウトしている。 広く動物愛護思想の普及啓発を図り、人と動物とが共生する生活環境づくりを推進していく動物愛護センター は、アニマルパークの中核施設として多くの人々に親しまれていく。 〜全工期無事故・無災害で達成〜 村本・松塚特定建設工事共同企業体 奈良県畜産技術センター(旧畜産試験場)において奈良県が整備を進めている「(仮称)うだ・アニマルパー ク」の一角で品質の向上を目指しながら安全第一に工事を推進し、中核施設となる動物愛護センターの高精度 施工を全工期無事故・無災害で達成したのは村本・松塚特定建設工事共同企業体。山本雅弘所長をはじめとす る同JVならびに各協力会社の有能なスタッフが一丸となって工事に取り組み、奈良県をはじめとする多くの 関係者から寄せられていた期待と信頼に応えた。その工事が軌道に乗り始めたのは昨年の3月初旬。地盤改良 杭の打設を臨床・動物管理棟より開始し、4月初旬からは掘削に着手した。 作業ヤードが狭かったことに加え、掘削残土の場内処分を義務づけられていたため、事務・動物飼養棟の建設 地を残土の仮置き場として使用し、臨床・動物管理棟部を先行させた掘削の根切底はGLマイナス1.8m。仮 置きしていた残土を利用して臨床・動物管理棟部の埋め戻しを行った後に事務・動物飼養棟の掘削を推進し、 5月末に完了させた。 この間の4月28日には臨床・動物管理棟の基礎地中梁コンクリート、5月29日には土間コンクリートをそれぞ れ打設。躯体については、生コン車の搬入と打設時間との絡みから、三回に分けて打設することとし、焼却炉 を設置する南面を7月6日、残りの北面を翌日に打設したのに続いて28日に屋根部分の打ち込みを行った。 一方、事務・動物飼養棟では6月14日に基礎地中梁コンクリート、7月10日に土間コンクリートを打設。躯体 は臨床・動物管理棟と同じ条件だったので8月3日と21日の2回に分けて打設した。4寸勾配屋根の瓦葺きに は8月29日と10月4日にそれぞれ着手し、10月25日にすべてが完了。また、内装のうち、メインの臨床・動物 保護管理施設工事は9月20日から開始し、今年の2月中旬に完了した。このほか、外構の擁壁、雨水排水、縁 石工事などが昨年末に終了したのに続いて年明けから進めた透水性カラー舗装も1月末に完了するに至るな ど、工事は淀みないペースで進捗し、2月は各種検査期間に当てられた。 工期内竣工を無事に果たした村本・松塚特定建設工事共同企業体では、クラックの発生抑制に努めるなどして コンクリートの品質向上を図るとともに、瓦屋根の下地精度にも留意して施工し、高品質を確保。また、アニ マルパークへの進入路が1か所しかなかったため、他工区(学習館建設工事、造成工事)との搬入・工程調整 については協議会を月1回開催して入念な打ち合わせを行い、円滑な進捗を図った。 「他工区との協調を図って工事を推進する」という作業所方針と並んでポイントとなっていた近隣住民からの クレーム防止については、工事用車両ならびに道路面の清掃を徹底して行うとともに、ガードマンの常駐、徐 行運転の遵守によって第3者災害の防止に努めるなどして工事に対する理解と協力を得た。 また、現場内においても安全管理活動を緻密に展開。天井棚足場、高所作業者からの墜落・転落災害の防止に とりわけ留意しながら安全第一に工程の進捗を図り、最終的には7万1,000時間におよぶ全工期無事故・無災 害を達成して高品質施工に花を添えた。 山本雅弘所長の話 臨床・動物管理棟に設ける焼却炉(動物保護管理施設)工事を推進するに当たっては、特殊な技術力を必要と したので、工程管理面のみならず様々な苦労が伴ったが、種々のネックを克服し、全工期無事故・無災害のう ちに高品質な建物を完成させることが出来たのは大きな喜び。これも偏に、奈良県をはじめとする関係各位の ご支援、ご指導、近隣の皆様方のご理解、ご協力の賜であり、深く感謝申し上げます。