ため池等決壊の2次災害防止へ、10年間で96地区を先行整備 大阪府はこのほど、大規模地震によるため池などの土地改良施設の被災を防ぐ ことを目的とした「土地改良施設耐震対策計画(案)」を策定した。ため池決 壊による周辺地域への二次災害の防止を目的としたもので、実施期間を3期に 分け、調査・検討を行い段階的に府内365か所での耐震化を促進、第1次計画 期間は平成27年度までの10年間としている。なお、2007年度当初予算では、3 億7,600万円を計上している。
写真:府下最大の水面積を誇る久米田池 同計画案は、大阪府には全国で5番目となる約1万1,000か所のため池があり、府民の身近な水辺空間として 親しまれているが、東南海・南海地震や上町断層をはじめとする直下型地震が発生した場合、ため池や農業用 水路などの土地改良施設が被災し、多くの府民に被害が及ぶことが想定されることから、各施設の耐震性を検 討し、計画に基づいた改修を実施するために策定された。 策定にあたっては、東南海・南海地震と6つの断層帯地震を対象に、土地改良施設耐震対策検討委員会が「施 設の壊れやすさ(健全性)」と「施設の被災による2次災害の影響度」の2つの軸から、耐震対策の必要性の 評価などを行ったもの。 評価対象となったのは、満水面積が600?以上のため池、幅1.5mの水路で、健全性評価ではため池約1,000箇 所、水路約240箇所、影響度はため池約2,200箇所、水路約600箇所。 計画の整備方針は、地震により被災しても機能を保持し、流域の2次災害を防止を視点とした耐震性の向上 と、貯水された水を初期消火用水や生活用水への有効活用を図り、防災拠点として利用するなど地域防災に役 立つ施設整備を図ることなどとした。 計画期間は全体で概ね30年間としながら、緊急に実施する必要があることから、2006年度から2015年度までの 10年間を第1次計画期間とした。整備の優先度は、発生率の高い東南海・南海地震で安全率を満たしていない 箇所など、影響度の大きい施設を優先的に整備。 全体計画期では、東南海・南海地震に対して、生命・機能を守れるように耐震化を進めるのは、ため池96地 区、直下型地震はため池236地区で、このうち第1次計画期間では、改修目標として236地区のうち概ね78地区 を選定。さらに安定性が確保されないとされる96地区から整備に着手するとした。また水路では、直下型に対 して安全性が確保できないと推定される土羽やブロック積水路で95個所。 改修工法では、鋼(管)矢板締切工法、固結工法の深層混合処理や高圧噴射攪拌工法、抑え盛土工法などの事 例を上げながら、それぞれの場所に応じて、実施設計段階で経済性や施工性などを考慮して選定するとした。 これら計画の推進にあたっては府では、整備地区に対して重点的な予算配分を行うとともに、国に対しても補 助率アップや事業制度の拡充など財政支援を要望。市町村では、所管の防災計画で明確な位置付けが必要とし た。 また、ため池管理者や周辺住民に対しても、ハザードマップの作成により啓発・啓蒙を行って情報の共有化を 図り、住民単位での防災訓練が実施できるような体制づくりを支援するとした。