計画・設計・施工各段階で取り組み 兵庫県はこのほど、2008年度の公共事業コスト縮減の取り組み実績を発表した。昨年度のコスト縮減率は 9.8%(約99億円)で、前年度の6.4%より3.4ポイントの上昇となった。2008年度では、ライフサイクルコス ト縮減の徹底をはじめ、インハウスVE(組織内設計会議)の実施やアセットマネジメントを推進し、事業 のスピードアップなどへの成果があったとしている。県では、1997年度から公共事業コスト縮減への取り組 みを進めており、2008年度からは「公共事業コスト構造改革プログラム」に基づき、2008年度までに縮減率 10%を目標として取り組んできた。 ライフサイクルコスト縮減では、除草コストの低い芝の採用や耐候性鋼材の使用、電球交換が少ない証明設 備の採用など、材料や工法の選択を徹底。インハウスVEは、多様な角度からコスト縮減方法等を検討、 2008年度では25事務所で58案件を85回にわたって実施した。 アセットマネジメントの推進では、限定予算内で適切な維持管理を行い、維持更新コストを縮減するため、 アセットマネジメント手法により維持管理計画を策定し、計画的な修繕工事を実施するもの。計画は、施設 の長寿命化や維持管更新費の縮減、効率的な管理運営に必要な保守点検、予防保全工事等についての方法や 時期等を定めた。対象となったのは、橋梁長寿命化修繕計画(県管理橋約4,700橋)、排水機場長寿命化計画 (46機場)、下水道長寿命化計画(管渠約200?、処理場7箇所)、港湾施設長寿命化計画(港湾施設全般・ 28港湾)、農業利水施設機能保全計画(基礎的農業利水施設・頭首工55箇所、水路約500?等)、水道・工水 施設アセットマネジメント推進計画(管路約400?、5浄水場、4ポンプ場等)。 今後の方針としては、これまでの取り組みにより、新技術や新工法の導入、現地資材の有効活用など、「工 事段階でのコスト縮減の取り組みが概ね定着した」とし、今年度以降、工事段階の検討に加え、施設の長寿 命化やライフサイクルコストの縮減、現地の実情に応じた設計規格の適用など、「計画と設計段階」でのコ スト縮減を一層推進。取り組みにあたっては、チェックリストによる各段階での検討内容を盛り込んだ「ガ イドライン」を作成し、幅広い視点からのコスト縮減を推進するとしている。 また、2008年度のコスト縮減の代表事例として▽舗装工事における現地発生石材の再利用▽漁港防波堤への 浮体式構造の採用▽維持管理コストを削減できる芝種の採用▽調節池の供用前倒しによる早期事業効果の発 現ーを上げ、インハウスVEでは、移動ケーソンを存置する復旧工法を採用した。 このうち、漁港防波堤への浮体構造の採用は、家島漁港の防波堤整備工事で、構造形式を従来のマウンド形 式から浮体式とすることで、コスト縮減額で約9,500万円、縮減率24%を達成。また、移動ケーソン存置によ る復旧工法では、被災(移動)したケーソンを原形復旧ではなく、新たな方塊ブロック設置により従前機能 を確保するもので、これにより大型起重機船の回航費などを削減。縮減額で3,400万円、縮減率13%となっ た。 兵庫県では、工事段階での創意工夫が定着してきたことから、旧設計と実施設計との比較により効果額を試 算する方式に変え、今年度からは、計画・設計・工事の段階におけるトータルなコスト縮減対策を講じ、計 数化より、新たな工夫を続けていくことに「意義がある」として、長寿命化やライフサイクルコストの縮 減、現地の実情に応じた設計規格の適用等が大きな視点となるとしている。