NPO法人地域デザイン研究会(平峯悠理事長)の主催によるフォーラム 「関西・大阪の都市基盤 温故知新」が14日、大阪市立弁天町市民学習セン ターで開催された。過去の社会基盤整備手法からの教訓を学び、次代のまち づくりに活かすため、行政から民間までインフラ整備に携わってきた現役の 技術者とOBが意見を交わすもので、フォーラムには関係者や一般から約80 人が参加した。(後援=日本都市計画学会関西支部、土木学会関西支部、日 本建築学会近畿支部、建設コンサルタンツ協会近畿支部等)フォーラムは、 ‘都市基盤の思想を知り、次代の都市戦略を考える’をテーマに、都市開発 や港湾、鉄道整備を担当してきた国や地方自治体などのOB4人と、現在、 まちづくりに関わっている若手技術者らが、当時と計画と現状の課題につい て、それぞれが意見を述べた。 初めに主催者を代表して平峯理事長が挨拶。大阪府0Bである平峯理事長 は、若い技術者に対する評価が「組織に居る時と組織から出た時と違ってき た」と自身の経験を踏まえて語りながら、フォーラムでは世代間のギャップ をどう解消するのかとともに、「次の世代に対するインフラ整備のあり方を 提議する場としたい」と、その成果に期待を寄せた。 フォーラムでは、まず現役技術者側から、大阪市営地下鉄の路線、新幹線整 備や駅とまちのあり方、車とまちのつながりなど、現在の姿を計画当時の技 術者は予想していたかどうかについて質問が行われた。
これに対して建設省OBの村橋正武氏が、大阪万博前後の時代背景として、都市インフラ、交通インフラと もに不足していた時代であり、そこに人口や産業の都市集中が進展し、「インフラ整備は需要追随型で進め るしかなかった状態だった」としながら、長期的展望はある程度考慮していたとした。 平峯理事長は、「あの時代、我々も必死で長期的展望を考えていた。どのような時期でも長期展望は持て る」とし、国鉄OBの星野鐘雄氏は、新幹線の東京一極集中化を上げ、国と地方、財源などが問題とした。 JR西日本の金田和久氏は、市営地下鉄の路線が並行して整備されていることや、阪神なんば線開業により 千日前線の乗客減少などを指摘した。 大阪市OBの岩本康男氏は、環状線内は市営交通が一元化するーとの大阪市の基本戦略を上げ、地下鉄整備 は「御堂筋線が中心であり、他の路線は御堂筋線の混雑緩和のため整備された」とし、当時の技術者が精一 杯、考えた上での決断だとした。都市開発については、千里ニュータウンに関して若手技術者から、開発当 時に将来像や居住者の新陳代謝などを考慮されたどうかが質された。 これについて村橋氏は、当時、ニュータウンに住むことは一つのあこがれ、夢であり、「質的には高いもの を求め、当時の技術者の矜持でもあった」としながら、住環境のあり方については考えていく必要はあると した。次代への提言では、村橋氏が「インフラ整備に関する新しい仕組み、システムを考える必要がある」 とし、事業主体も単一でなく国や自治体、公社等が力を発揮できる仕掛けが必要だとした。平峯理事長は、 「まちづくりのツールとしての都市計画法を活用すべき」だ、などとしたほか、一般参加の木下博夫・阪神 高速道路?社長が、「まちづくりには市民参加が今後、重要となってくる」と意見を述べた。 フォーラム出席者は次の通り。(敬称略) ▽平峯悠(理事長、大阪府土木部長、阪神高速道路公団理事、大阪高速鉄道社長などを歴任) ▽村橋正武(大阪工業大学教授リエゾンセンター長、立命館大学教授、建設省、住宅・都市整備公団OB) ▽岩本康男(大阪市街地開発社長、大阪市OB) ▽星野鐘雄(ジェイアール西日本コンサルタンツ技術顧問、国鉄OB) ▽金田和久(西日本旅客鉄道創造本部大阪ターミナル開発チーム担当課長) ▽石塚祐子(八千代エンジニアリング大阪支店社会計画部主幹) ▽岡本早夏(ジェイアール西日本コンサルタンツ土木設計部) ▽土田香織(いであ大阪支社) ▽尾花英次郎(大阪府都市整備部枚方土木事務所幹線道路室長) ▽松村暢彦(大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻準教授) ▽岡村隆正=コーディネーター(大阪府都市整備部交通道路室道路環境課長)