兵庫県立芸術文化センターと大阪弁護士会館、構造体の表現で力強さを 第９回関西建築家大賞に決まった江副敏史氏（日建設計）の作品は、「兵庫 県立芸術文化センター」と「大阪弁護士会館」の２点。組織事務所所属の建 築家としては初めての受賞となった。 兵庫県立芸術文化センター（西宮市高松町２−22）は、ＳＲＣ・Ｓ・ＲＣ造 及びプレキャストコンクリート造の地下１階地上６階建て、延床面積３万 3,144.98?で、2006年竣工、大阪弁護士会館（大阪市北区西天満１−12− ５）は今年の竣工で、Ｓ及びＲＣ造（制震構造）の地下２階地上４階建て塔 屋１階、延床面積１万7,005.29?の規模のもの。 これらの設計にあたっては、機能重視と永く使用することを主眼とし、「力 強さの追求と美しさのバランスをどうするか」を問いかけながら、「シンプ ルに造り込むことで、分かりやすく配慮した」と語る。また、空間の豊かさ と開放感も特徴であり、「構造体を表現することで建物の力強さにつながっ た」とも。
審査建築家・出江寛氏の審査講評（概要） ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 造形的には奇を衒わず普遍性の高まった品格の高いデザインと密度の高いディティール、木・煉瓦・コンク リート・ガラスに限定した素材の表現に深さと力強さを感じた。組織事務所の作品はよく顔（個性）がない と言われてきたが、２つの作品には個性的な美学を強く感じた。なかでも弁護士会館に於ける谷崎潤一郎の 「陰鬱礼讃」的な明暗の表現や、煉瓦を布のように柔らかく艶っぽく表現されているのが素晴らしい。 現代、建築の多くは全てを真っ白に塗り尽くし、素材の持つ情感を打ち消した上での美学、造形を明るくク リエイティブに実現しているのはそれなりに良いのだが、この手法があまりにも多く、厭き厭きしている時 に、素材のもつ美しさや陰鬱の深さを追求した情緒的な表現をしたこの２作品は関西建築家大賞にふさわし い作品と思った。
