□□□□□□□ 2重円筒ケーソン6号函据え付け完了 □□□□□□□□□ ■■■■ 被覆石投入などは9月末完了予定 ■■■■ 環境や景観に配慮した新形式の防波堤(2重円筒ケーソン)が、中型船舶の安 全な航行を確保する−−−。
国土交通省近畿地方整備局が、100〜3、000総?の一般貨物船の安全対策が急務となっていた日本海西 部沿岸海域における大規模な避難泊地の確保を目的として柴山港で進めている避難港整備事業は順調に進捗し ており、このほど6号函2重円筒ケーソンの据え付けが完了した。 美保湾から丹後半島東部の中間に位置し、避難港として最適な場所にある柴山港の機能の増大を図り、入港船 舶の安全性を向上させるための整備事業においてポイントとなっていた大水深への対応や景観への配慮などに ついての課題を解決した2重円筒ケーソンは、消波機能や海水交換機能などを兼ね備えている新しいタイプの もので、平成6年7月に1号函を設置して以来、工費の低減や施工性の向上などを追求しながらこれまでに5 函の2重円筒ケーソンを柴山港外防波堤(西)の地点に据え付けて、新形式の防波堤150?を整備。 このほど、6号函の据え付けも完了し、中型船舶の安全な航行を確保する柴山港避難港整備事業はまた一歩前 進した。 なお、今回の施工を担当しているのは東洋建設?。高精度・高品質に6号函を据え付けた同社では、今後もこ れまで同様に高度な技術力を駆使しながら根固めブロックや被覆ブロックの据付ならびに被覆石の投入といっ た各作業を安全第一に推進していく。 □□□□ 中型船舶の安全な航行を確保する新形式の防波堤 □□□□ ■■■ 大水深や景観にも配慮 ■■■ 兵庫県の北部、日本海側の中央部に位置する柴山港は、海岸線の入り組んだ天然の良港で、但馬沿岸唯一の避 難港ならびにカニなどの水産基地として古くから繁栄。また、近年においては、山陰海岸国立公園として海岸 美を探勝する観光地としても脚光を浴びている。
しかし、柴山港が位置する日本海西部沿岸海域は、冬季の気象海象条件が厳しいにもかかわらず、中型船を対 象とした避難泊地の整備が美保湾から丹後半島東部にかけて遅れているのが実情。 また、荒天時に船舶が安全に避難する水域が少ないことから、冬季の船舶運航に大きな制約を受けていた。 こうした背景の下、沿岸を航行する中型船舶の安全対策という喫緊の課題に対応するための大規模な避難泊地 の確保を目的とする柴山港整備計画が策定されたのは昭和62年3月。 美保湾と丹後半島東部の中間に位置し、避難港として最適な場所にある柴山港の機能増大を図り、付近一帯を 航行する100〜3、000G/Tの船舶を対象とする大規模な避難水域を整備するもので、海洋の未来を切 り拓く機能性に優れた新形式の防波堤(2重円筒ケーソン式)の築造を鋭意進めている。
激浪方向が岬に守られているため、従来より小型船の避難水域として利用されてきた柴山港。 しかし、海象条件によっては港内の静穏度が著しく低下することから、入港船舶の安全を向上させるため、静 穏水域を拡大することが求められていた。
一方、柴山港外防波堤(西)の建設現場には、水深マイナス30?という大水深であることに加え、波高が非 常に大きいこと、漁船等の小型船の出入りが多いため、反射波を小さくする必要があること、海水交換機能を 有すること、山陰海岸国立公園内であるため、景観に配慮することなどの制約や条件があった。
このような現状を踏まえて昭和61年度から着手した柴山港避難港整備事業を円滑に進めるために開発された 2重円筒ケーソンには、 ▽波を曲面で受けるので、壁体に作用する波圧に位相が生じるため、全作用波力を低減できる ▽壁体の開口部により、反射波を低減できる▽前面および背後に開口部を設けることにより、海水交換機 能を持たせることができる ▽曲面と規則正しく並んだ窓により、景観上優れている ▽防波堤法線を容易に曲線化できる
という特徴があり、実用化に当たっては、水理模型実験や有識者による委員会などを開いて設計法の検討を進 めるとともに、鳥取県の境港において2分の1のスケールのケーソン四函を製作・据え付けるという現地試験 も行った。
この結果を検証した上で柴山港の現地において施工することとなった2重円筒ケーソンの内円筒は、高さ2 5・1?、外径14・7?、外円筒は、高さ26・5?、外径29・4?のスケールで、上から見ると大小2 つの円が文字通り重なったように見える。 なお、1号函を製作する過程において、工費の低減、施工性の向上を図る必要性が求められたため、3号函か らは見直し断面に基づくケーソン製作を行うとともに、5号函からはさらなる建設費の縮減を図るため、基本 断面、製作方法の変更を実施した。
工費の低減や施工性の向上を追求しながら着実に推進している柴山港避難港整備事業では、外防波堤(西)に 15函(延長450?)、外防波堤(東)に5〜6函(同200)の2重円筒ケーソンをそれぞれ据え付ける 予定。 平成6年7月7日に待望の第1函目が据え付けられた外防波堤(西)においては、現在までに六函のケーソン 設置が完了(防波堤の整備延長は180?)するとともに、避難泊地も平成13年度に完成している。
この結果、湾奥では、水深マイナス六?までの500G/T未満の貨物船の避泊が常時可能となり、避難港と しての役割を果たしている。 □□□□ 東洋建設が入念施工 一連の作業に息づく確かな技術力 □□□□ 曲線と規則正しく並んだ窓によって、景観上も優れた特性を有している2重円筒ケーソンの開発・実用化によ って確かな航跡を残しながら着実な航行を続ける柴山港避難港整備事業。 平成6年7月に1号函ケーソンの製作を開始して以来、工費の低減や施工性の向上などを追求しながら推進し ている製作から据え付けに至るまでの各プロセスにおいては、万全の施工管理体制を確立して安全第一に壮大 な事業を展開している。
これまでに5函の2重円筒ケーソンが据え付けられ、約150?にわたって新形式の防波堤整備が完了してい た柴山港避難港整備事業において優れた技術力を発揮し、その一翼を担っている東洋建設?が現在施工を担当 している平成18年度柴山港柴山地区外防波堤(西)築造工事は、柴山港柴山地区外防波堤(西)の捨石基 礎、ケーソン据付(6号函)、ケーソン移設(7号函)、根固め・被覆を行うもので、跡田努所長をはじめと する精鋭スタッフが一丸となって取り組んでいる。
その工事は、作業ヤードにおけるケーソン艤装から着手。今年の3月19日にクローラクレーンならびに艤装 品の搬入作業を行ったのに引き続いて、特殊な形をしている円筒ケーソンに専用の艤装資材を取り付けていっ た。
ケーソン据付前の準備作業となるケーソン艤装においては、吊鉄筋への玉掛け専用足場や注水用水中ポンプお よび海水の侵入を防ぐことを目的とする止水蓋の設置などを約2カ月間かけて実施。 一方、海上においてはこの間の4月29日からガット船による基礎捨石の投入が始まり、6月12日の最終投 入(合計六隻分)までは捨石均しの進捗に合わせて慎重に投入を進めた。
その捨石均しは、均し水深がマイナス17?以深と深いため、事前に潜水計画を立案した上で作業を実施。 ■■■■ 万全の安全・環境対策 無災害記録も更新中 ■■■■ 気象状況に恵まれず、荒天待機が続いたため、着手が少し遅れて5月4日からとなったが、潜水士船を使って の作業は、全員が潜水士の資格を取得し、交代で作業ができる体制を整えていたことから順調に進捗し、6月 25日に完了するに至った。 なお、柴山地区周辺には高気圧治療設備を備えた医療機関がないため、万一に備えて現場に再圧室を設置する などして万全を期していた。
1函の重量が7、000?を超える大型ケーソンを国内最大級の起重機船(4、100?吊り)で据え付ける 6号函ケーソンの据付は、浮力を利用し、吊具、艤装品を含めた総重量を約3、600?に計画して7月4日 に実施。 据付から艤装品の一部解体までを1日で行う計画としていたため、約10時間の据え付け時間を見越して早朝 5時より吊り込みを開始し、午後2時に据付を完了したのに引き続いて艤装品の一部解体までを予定通りに終 えた。
海象条件が整うまで4日間施工を見合わせるなどして安全かつ確実に作業を実施したケーソン据付。なかで も、柴山港は出入口付近が狭隘であるとともに、防波堤も東西から張り出しているため、大型起重機船が航行 するには十分な航路とはいえないことから、起重機船の構造(帆を張った状態)などを勘案して風に対する細 心の注意を払って据付地点まで曳航した。 こうして据え付けた6号函ケーソンの安定性を早期に高めるための中詰め材投入は、据付の翌日から実施する 予定であったが、波浪により安全な施工が確保できないため、ケーソンの波浪に対する安全確認を行った上で 1日順延することとなり、7月6日から実施。中詰め材にはフェロニッケルスラグを使用しており、宮津港か ら3航海で所定量を運搬した。
また、投入に当たっては、ケーソン天端(据付時9・5?)を超えて安全かつ迅速に作業が行えるように、作 業半径や巻き上げ高さなどを考慮した大型のガット船を採用。 さらに、環境面に対する配慮としては、ケーソンへの注水量と中詰め材の投入量を計画的に管理することで、 中詰め材投入時に余水を排水させない施工方法を提案し、実施した。
場所打ちコンクリートの打設においては、914立方?を連続打設する必要があったため、コンクリートミキ サー船の能力や稼働状況、コスト面を考慮したミキサー船を選定し、打設層厚ならびに打設時間を管理しなが ら打設。 7月23日早朝5時よりミキサー船を出港させ、7時から開始した打設は14時間後の午後9時に完了した。 なお、蓋コンクリートについては、7月25日に打設している。
現在推進しているのは六号函周辺への根固めブロックおよび被覆ブロックの据付。根固めブロック80?およ び46?、被覆ブロック30?と重量のある据付作業は、潜水士との連携作業となるので、細心の注意を払い ながら作業を進めており、9月上旬には完了する見込みとなっている。
また、被覆石については、ガット船で水深マイナス35?〜19・2?まで投入し、9月末には天端の均しま でが完了する予定。 地元の小学生や父兄などを対象とする見学会をこれまでに3回実施し、海洋土木工事に対する関心を高めた注 目工事もいよいよ大詰めを迎えており、今後も無災害での高品質施工の達成を目指していく。 なお、1函の総重量(吊具、艤装品含む)が3、900?もあり、国内最大級の起重機船(4、100?吊 り)でも施工実績が少ない能力限界の吊り込みによって行った7号函ケーソンの移設は7月5日に実施。 移設後に施工する3ロットからのケーソン製作に影響を与えないよう、ケーソンの水平管理にはとりわけ留意 して進めた作業ヤード内の掘込みドッグへの移設は、午前7時に玉掛けを開始し6時間後の午後1時に?ジャ ストイン?を無事に果たした。
□□□□□□□□□□□□■■■ 跡田努所長の話 ■■■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
内、外一体のケーソン据付は、今回で2回目となり、前回の経験を生かした施工を心がけている。 しかし、今年は、冬場に海上が穏やかだったのに、春先からは予想以上に時化が続いたため、計画通りに作業 の進捗を図ることができない状況が続き、遅れを取り戻すのに苦慮した。 また、「日本海での作業はお盆まで」と言われているので、正念場を迎えた8月には工程管理に特段の注意を 払っている。 これからは日に日に波が高くなり、作業条件が悪化していくので、判断を誤ることなく、無事に完成を迎える ことができるよう、さらに身を引き締めて努力していく。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□