法令改正や迅速な支援策具申 能登半島地震に関して、兵庫県震災復興研究センターはこのほど、被災者の生活・住宅再建の支援策について の九項目からなる緊急提案を国と被災自治体に対して具申した。阪神・淡路大震災以来、同センターが取り組 んできた調査・研究、政策提言などを踏まえて策定したもので、併せてセンターが出版した「災害復興ガイ ド」を郵送するとともに、復興支援活動への募金受付を開始している。 提案は、現行の災害救助法など法令の適正かつ効果的な運用はじめ、阪神大震災や鳥取西部地震、新潟中越地 震での教訓を踏まえ、対応や支援策の在り方、体制づくりなどについて、国はじめ地元自治体に対して具申し たもの。災害救助法の活用については、同法第23条の「6・災害にかかった住宅の応急修理」で「居室、炊事 場及び便所等日常生活に必要最少限度の部分に対し、現物をもって行うものと・・(中略)・・すること」 (大臣告示)とある部分について、緊急を要する事態に「現物支給」では非常に不便であり、実態に即してい ないことから「現金支給」に切替えるべきとした。 また、「7・生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与」と、現行法上に規定されながら、「災害弔慰 金の支給等に関する法律」制定を根拠として「給与」は実施されておらず、これら脱法的行為を改め規定を活 用した「生業に必要な資金な支給」の実施が国の責務―と指摘する。 仮設住宅の建設にあたっては、新潟での自宅敷地内での建設を認めるとともに、仮設住宅を希望しない被災者 へは再建支援策としての資金援助や、鳥取での一律支援策などの取り組みと、国のルールに固執し、被災者の コミュニティを無視した阪神大震災との取り組みを対比させ、柔軟な支援策の採用を訴えている。 応急対応については、迅速性が「極めて重要」としながら、公平性を理由に災害の種類や被害程度、年収・年 齢等の要件に拘りすぎると支援対象を狭め、施策の実施が遅れるとして、真に救済が必要な被災者を対象に迅 速に支援することが最優先とした。さらに、倒壊家屋などの災害廃棄物の処分では、二次災害や健康障害等を 防ぐためにも応急支援の重要項目として位置づけ、国が十分な支援を行うことが必要だとしている。このほ か、被災者生活再建支援法の再改正を急務だとし、また、災害援護資金を貸し付けでなく給付に改正すること を求めている。 また、これらについては、国の責任は重大としながらも被災自治体でも先導的に支援策を実行することを切 望。国の施策に加え、独自の支援策を実施する自治体は29都道府県・2市・2町に及ぶとしながらも、地震が 活動期に入り、別の自然災害も多発する現在、憲法の関連条項を基軸とした災害復興法制の体系的整備と抜本 的な内容充実が緊急の課題と結んでいる。 兵庫県震災復興研究センターは、1995年4月、に日本科学者会議兵庫県支部と兵庫県労働運動総合研究所が共 同で設置し、これまで各種提言やシンポジウムなど、幅広い分野での調査・研究に取り組んできている。今回 はこの提言のほか、同センターが出版した災害復興のための手引きである「災害復興ガイド」を送付するとと もに、支援募金も受付ている。代表理事は、塩崎賢明・神戸大学工学部教授西川榮一・神戸商船大学名誉教 授、事務局長を出口俊一・阪南大学非常勤講師が担当している。 緊急9項目提案 ?2次災害を防ぎ、安全で安心できる避難生活のために ?応急支援には災害救助法の徹底活用を ?仮設住宅の建設にあたっては、阪神・淡路大震災の苦い教訓、効果的だった鳥取県西部地震や新潟中越大震 災の教訓を生かし、柔軟な対応を ?災害廃棄物の処理・処分に十分な支援を ?迅速性を優先した応急対応と弾力的運用を ?被災者生活再建支援法の再改正を急ぐ ?「災害援護資金」は貸付でなく給付に改めるなど、「災害弔慰金の支給等に関する法律」の改善・充実を急 ぐ ?国・自治体は「被災者の窮状を救う」という使命を認識して責務の遂行を ?災害復興制度の充実・整備を早急にーの九項目