国際インフラの拡充整備へ 近畿における港湾・海岸・空港の各事業を推進する国土交通省近畿地方整備局 港湾空港部。港湾事業では、特定重要港湾や重要港湾などにおいて直轄事業を 実施するほか、管内の各港湾管理者と連携を図りながら、港湾施設の機能強化 と拡充を進め、また、環境保全や大規模災害に対する検討も行っている。さら に管内には、太平洋・日本海・瀬戸内海と、それぞれ気象や海象が異なる海域 を有することから、4つの港湾事務所と技術支援を行う技術調査事務所を設置 して、地域特性に応じた事業計画の立案・実施に努めている。港湾や空港はい ずれも、社会経済活動においては重要な国際インフラであり、その整備の後退 は許されないものとなっており、港湾空港部の果たす役割は今後も大きなもの がある。 近畿地方整備局港湾空港部の平成19年度事業は、「経済財政運営と構造改革に 関する基本方針2006」や「経済成長戦略大綱」で重点的に折り組むべき課題と される、「国際競争力の強化」「地域の活性化・都市再生」「安全・安心の確 保」「柔軟で豊かな社会の実現」に資する港湾整備を通して、‘「活力」に溢 れ、「安全」でよりよい「環境」のなかで、豊かな「暮らし」が保証された 国’を確実に実現することを基本方針としている。
重点事項としては、 ○活力 国際競争力の強化 ○活力 地域の活性化 ○安全 港湾・海岸整備を通じた安全・安心の確保 ○環境・暮らし 柔軟で豊かな社会の実現 ―の4項目で、これらに即した事業を実施していく。主要事業では、阪神港スーパー中枢港湾プロジェクトの 推進や東南海・南海地震への津波対策等の重点的・効率的な推進、海洋環境整備事業の推進(瀬戸内海)など を挙げている。 スーパー中枢港湾では、国際物流戦略チームの取り組みの一環として、阪神港に指定された神戸港・大阪港 で、大水深岸壁を備えた高規格コンテナターミナルに整備を進め、世界トップクラスのコスト・サービス水準 の実現を目指すもの。目標では、現状より約3割のコスト低減と、リードタイムで現状2日を1日程度まで半 減し、シンガポール港と同レベルに向上。 ハード面での高規格コンテナターミナル整備は、神戸港ポートアイランド二期地区のPC―18、大阪港夢洲の C―12で現在工事が行われ、ソフト面では、民間ターミナルオペレータへの荷役機械等の無利子貸付や共同デ ポによる広域連携、夜間業務用施設整備による24時間フルオープン化などを支援していく。 また、国際物流の効率化をサポートする観点から、臨海部アクセス強化のため直轄事業としての臨港道路(夢 洲トンネル)を整備するほか、港湾を核とした地域活性化を図るため、既存ストック有効活用として和歌山下 津港での航路整備などを実施する。東南海・南海地震や津波等への災害対応力強化では、地域の被害低減と早 期回復を図るため、防災機能の強化や防災拠点機能の提出を進めるとともに、人的・物的被害の最小化を目指 してハード・ソフト一体となった取り組みを引き続き進めていく。 このため、臨海部の津波対策に特化した「臨海部広域津波対策WG」を設置して関係機関が連携した取り組み を推進。近畿地方整備局が開発した「チャート式耐震診断システム」や「津波・高潮危機管理対策緊急事業」 により耐震調査や浸水想定区域調査を実施するとともに、水門等の遠隔化・集中管理等によるソフト対策も併 せて推進していくこととしている。 一方、海洋環境保全では、海洋汚染の防除、良質な海洋環境保全を積極的に行うため、一般海域5、900?平 方?で海面の浮遊ゴミ・油の回収業務を実施。神戸港と和歌山下津港の2つの基地に海洋環境整備船三隻(油 回収船含む)を配備し、大阪湾・紀伊水道・播磨灘で事業を行う。このほか、環境型社会の構築として、大阪 湾フェニックス事業や地域の個性を活かした「みなと」づくりのみなと観光交流促進プロジェクト、海辺景観 や文化資源の保全・創造として、宮津港海岸で海岸整備事業を進めていく。 これら事業・プロジェクトの推進にあたっては、港湾空港部はじめ、管内に設置された、神戸港湾事務所、大 阪港湾・空港整備事務所、和歌山港湾事務所、舞鶴港湾事務所、そして神戸港湾空港技術調査事務所の各事務 所が果たす役割は重要で、今後も充実した社会資本整備へ大きな期待がかかっている。