今後の構造検査のあり方 建築審査の水準向上を目指して審議を重ねていた神戸市建築構造専門審査会(委員長=日下部馨・神戸大学名 誉教授)はこのほど、「今後の構造審査のあり方」についての最終報告をまとめた。建築基準法改正を受け、 国での検討状況などを踏まえたもので、現状と課題や取り組みの視点、提言などをまとめたもの。 審査会は2005年12月に設置され、昨年5月には中間報告をまとめたが、その後、建築基準法が改正されたこと からさらに審議を重ねてきたもの。 報告書では、 ?神戸市における構造審査等の現状と課題 ?取り組みの視点 ?講ずべき取り組み ――の項目別にまとめられた。 神戸市における構造審査等の現状と課題では、まず、神戸市が自ら実施する建築確認業務は市全体の1%程度 で、申請件数減少に伴う「担当者の実務経験不足」が懸念され、担当者一人の体制では「技術力の継承が困難 な状況にある」と、構造審査に関する組織体制の脆弱さを指摘。 次いで、担当職員の能力や経験については、「実務に精通した職員が豊富とは言い難い状況」にあり、審査過 程の記録も、疑義指摘事項の記載方法について「担当者により差異がある」とする一方で、民間確認検査機関 の審査に関しても、各機関でのバラツキがあり、「統一を図る必要がある」とした。 このための講ずべき取り組みの制度的提言として、構造審査体制の充実を図るため、組織体制の整備と人材育 成を挙げ、指定確認検査機関への指導・監督、助言のため、立入調査や抽出調査を行うとともに、審査レベル 向上のために研修等を積極的に実施することとした。 また、高度な審査や疑義物件の調査、審査請求等に対応するため、構造専門家と連携し、それら専門家による 助言が得られるような体制整備を指摘。さらに、欠陥建築や手抜き工事を防止するため、中間検査の対象拡大 や特定工呈の追加など、必要な指定を行い、建築物の安全確保に関する施策の体系化を図るため、「神戸市建 築物等の安全、防火、衛生に関する条例」の総合条例化検討の必要性を示した。 一方、技術的提言では、的格で効率的な審査を行うためのマニュアルやチェックリストの作成・整備の検討を 上げるとともに、従来の研修内容見直しとして、新人研修をはじめとした基礎研修や法令・基準改正に関する 研修、定期的な審査実務研修などを計画的な実施を求めた。 また、意匠図や構造図、構造計算書の整合性を重点的にチェックするなど、それら詳細チェックを通じてまと めた今後の審査に活かすべき点を理解して、構造審査を行うなど、チェックの経験を踏まえた審査の実施の必 要性を挙げている。 このほか、取り組みの視点では、審査における市民の不安・不信の払拭や業務責任の再認識、制度や仕組みの 再構築、情報の共有化を指摘した。