20年度開通へ「安全第一」に工事推進 中之島線の工事が順調に進んでいる。平成15年から行われている工事は、全 体を7つの工区に分けて実施されており、現在では全ての工区で掘削工事が終 了、昨年10月には最初のシールド機も発進するなど進捗を重ねている。今年 からは他のシールド工区も掘進を開始、施工を担当する各JVでは、「安全第 一」を念頭に平成20年度の開通を目指して鋭意、工事を推進していく。 市街地施工 警官・環境に配慮 延長約 2.9? 4駅を新設
中之島線では、建設主体が資金調達を行い、建設した鉄道施設を運行主体が使 用し、その使用料で一定期間内に借入金の償還を図る「償還型上下分離方式」 を事業スキームとして採用。建設主体は、大阪府並びに大阪市、京阪電鉄らが 出資して設立された中之島高速鉄道?が、運行は京阪電鉄が行う。
【写真上】昨年10月に行われたシールド発進式
【写真下】シールドトンネル(第2工区) ルートは、中之島(大阪市北区中之島五)を起点に、中之島地区並びに大川(旧淀川)の川底を横断して天満 橋(大阪市中央区天満橋京町1―1)に到る延長約2.9?の区間。施設では、中野島駅(副称・大阪国際会 議場)、渡辺橋駅、大江橋駅、なにわ橋駅の四駅を新設。これら各駅の周辺地域には、中之島の魅力が満載し ている。
中之島駅周辺には、大阪国際会議場やリーガロイヤルホテルなどの集客施設が立地し、渡辺橋駅は、国立国際 美術館はじめ国内でも有数な企業のオフィスが建ち並ぶ。大江橋駅付近には、大阪のメインストリートである 御堂筋沿いに市役所や日本銀行大阪支店、中之島図書館などが、静かな佇まいを見せる。
また、なにわ橋駅は中央公会堂や東洋陶磁美術館が立地する市民のオアシスである中之島公園の中に位置し、 天満橋駅周辺は大阪城にも近く、かつての水上交通の要衝であった八軒家浜の復元工事も実施されている。
これら工事は、第1工区〜6工区、京阪本線切替部の7工区に分け実施されている。 第1工区は中野島駅部工事、第2工区は中之島渡り線部と中之島から渡辺橋間のシールド工事、第3工区は、 渡辺橋から大江橋間のシールド工事と渡辺橋駅部工事、第4工区は大江橋からなにわ橋間のシールド工事と大 江橋駅部工事、第5工区はなにわ橋駅部工事、第6工区はなにわ橋から天満橋間のシールド工事、京阪本線切 替部は、京阪天満橋駅での工事となっている。
駅部の工事は、2層から4層のボックスラーメン構造として開削工法により施工、駅間部は、内空径6.2? の単線並列トンネルとしてシールド工法で掘進。開削工事では、交通量の多い幹線道路下や河川敷、公園な ど、シールド工事では、地下鉄2路線はじめ、ライフラインなどの地下埋設物が交錯するなど、典型的な市街 地施工となり各種制約の伴う工事となっている。
また、工事エリアが都市部ということで、安全はもとより環境などへの配慮も求められた。掘削では、河川を 利用して残土運搬を土運船で実施。トラック等の使用を軽減することでCO2等の排出を抑制。また、防音ハ ウスを設置して騒音等の防止に務めた。
このほか、河川護岸を利用するために設けた仮遊歩道には植栽等を実施し、玉江橋南側には中之島線をPRす るインフォメーションセンターを設置するなど、イメージアップにも努めている。 中之島線の開業は、平成20年度を予定しているが、開業時はもとより、既に沿線地域で様々な波及効果が生 まれており、今後も大阪の活性化はもとより、都市再生にも大きく寄与するものと期待される。
◇◇◇◆ 開削シールドの全7工区実施 ◆◇◇◇ 施工JV ネックを克服し順調に
平成15年5月の起工式を経て、本格着工した中之島線建設工事は、分岐部となる天満橋駅の京阪本線切替工 区と、延伸部6工区で現在、工事が行われている。
起点となる第1工区(中野島駅部)は、鴻池組・清水建設・大本組JVが担当。GL 16?に工事延長L3 34?で2層2径間〜2層3径間のRCボックスラーメン構造の駅部を構築、現在では掘削を終えて躯体工事 を行っている。 第2工区では、錢高組・三井住友建設・淺沼組JVが、GL 16〜19?に、天満橋方立坑部を含む中之島 渡り部と中之島〜渡辺橋間シールド部を施工。開削工法となる渡り部は延長245?で、RCラーメン2層1 〜2径間、シールド部は同291?のもの。このうち渡り部では昨年12月になにわ筋直下での掘削が完了し た。 シールド機は、泥土圧シールド(中折式)で径6950?、仕上がり内径6200?のもので、昨年10月に 工事全体のトップを切って最初に発進を開始した。間もなく渡辺橋駅立坑に到着する予定で、引き続き2月頃 の折り返しに向けての準備に入り、5月頃には到達する予定。 第3工区は、渡辺橋駅部と渡辺橋〜大江橋間シールド部(両端立坑部含む)を、大成・戸田・鉄建・熊谷JV が工事を実施している。GL 23〜28?に、駅部は延長175?のRCボックスラーメン3層2径間〜3 層3径間で、現在は躯体を構築中。 シールド部は延長315?で、シールド機は泥土圧式シールドで外径6850?とし、トンネル構築では1次 覆工に厚さ250?のダグタイルセグメントを使用することで2次覆工を省略するとしている。現在は、シー ルド機を立坑に搬入中としている。 第4工区は、鹿島・間組・不動建設・飛島建設JVが、大江橋駅部並びに両端部立坑部を含む大江橋〜なにわ 橋間シールド部を施工。GL 25〜29?に駅部では、開削工法により延長177?RCコンクリートボッ クス3層2径間〜3層3径間の躯体を構築する。 シールド部は、延長438?を泥土圧シールドで掘進。シールド機外径は6700?で、現在は2月の掘進開 始を目指して最終的な調整が行われている。 第5工区のなにわ橋駅部は、大林・前田・大鉄JVが担当。開削工法によりGL 28〜22?に延長17 7.4?、RCコンクリートボックスラーメンの4層2径間〜4層3径間を建設するもの(両端部立坑部含 む)。躯体工事では現在、地下1階部分を残している。 第6工区は、なにわ橋〜天満橋間シールド部を、西松・大豊・森本・白石JVが施工する。同区間は、土佐堀 川の川底横断部を含んでおり、シールド工事では、往復1機づつの2機を使用する。 シールド機は泥土式で外径6950?で、現在、搬入・組立が行われている。シールドの発進は、天満橋駅方 向は3月頃に、到達後に4月ごろにはなにわ橋方向へ掘進する予定。 京阪天満橋駅からの分岐点となる京阪本線切替部工事は、奥村組・竹中土木・京阪エンジニアリングサービス JVが担当している。既設四線のうち2線を本線に切替、残り2線を中之島線と接続するもので、既設の地下 躯体を掘り出して仮受けしながら作業を進め、本線の切替は昨年4月に行われた。 現在、これら工事は順調に進んでおり、全体では事業費ベースで約42%(昨年11月末現在)の進捗となっ ているが、これまでに積み重ねてきた実績を糧に施工各JVでは、今後も着実にその成果を積み上げていく。