フットサル球技人口100万人・複合化で生まれる利用価値 ハウスメーカー、工務店の関心高い フットサルは話題性だけでなくビジネスとして確立している。球技人口も全国 で100万人を越え、プレー施設建設市場の拡大が予想される。市場の動きを 捉えようとハウスメーカーや工務店ら地域の建設業者も、サッカー選手が計画 するプレー施設の普及に関心を示している。 阪神間には40カ所にプレー施設があり、最近では兵庫県が初めてPFI事業で 整備した尼崎スポーツの森(スポーツ複合施設)にフットサル施設が誕生。そ のプレー施設の運営者で、市場の動きに詳しいセレゾン・プロジェクト代表の 上永吉英文さんを4年ぶりに訪ねた。建設的な視点から、プレー施設完備のス ポーツ複合施設の利用価値や、サッカービジネスの戦略などをピッチの上で大 いに語って頂いた。(池上健史)
フットサルは、サッカー競技場の半面の大きさで、選手が小さめのサッカーボールを使用して5対5で行うも の。南米やヨーロッパではサッカーの楽しさや基本技術の修得を目的に採り入れたりして、子供の頃から始め ている。日本でも近年、球技人口は増加傾向にあり、話題性だけでなくビジネスとしても確立している。ま た、ハウスメーカーや地元建設業者もサッカー選手が計画する施設の普及に関心を示している。 ――ご無沙汰しております。4年前の今頃も、ワールドカップの開催期間中でした。日韓大会の時で、熱くサ ッカー論議を語り合ったのを覚えています。さて、ハウスメーカーや工務店も気にかけているフットサルです が、この4年で市場にさらに変化があったように感じられます。 上永吉:球技人口は女性も含めて全国で25万人だったのが、この4年で100万人ですよ。現在、阪神間には40 か所にスタジアムがありますが、球技人口に比べて施設建設が追いついていません。プレイヤーも27歳から60 歳と年齢層の幅も広がり、老若男女が年代やレベルの差を超えて気軽に楽しんでいます。私が運営する四施設 では1,500チームが登録しています。市場はこれからも間違いなく拡大します。 ――確かにどこのフットサル場も予約待ちの状態ですし、知り合いのスポーツショップに行けば先月からフッ トサルシューズのシェアも伸びているといい、人気のシューズ「TOP SALA」は次の入荷まで予約でい っぱいでしたね。 上永吉:我々は地域に根ざしたフットサル施設の運営をしています。フットサルへの情熱は地域と人を支えて くれると思います。 上永吉代表は学生時代、日本体育大学で全国大学日本一に。卒業後、ヤマハ発動機に入社、日本リーグで活躍 し、天皇杯優勝、日本代表候補に選出された。現役引退後の1993年7月にセレゾン・プロジェクトを設立、サ ッカーの普及に努める。その間、Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府の強化部長も務める。2000年5月にサッカー 選手では初めてフットサル・スタジアムを開設、セレゾン浜松フットサルクラブを設立する。 ――4つ目のフットサル場が、ここ尼崎スポーツの森に先月オープンしたわけですが、施設紹介をお願いしま す。 上永吉:兵庫県が初のPFI事業としてスポーツ複合施設を完成させたものです。プール、フィットネスクラ ブ、ウォーターパーク、グラウンドゴルフ、子供の広場、無料駐車場、我々の運営するフットサルパーク(コ ート3面)があります。 ――機能性は。
上永吉:それぞれの施設が持つ施設価値を相互に利用することで、施設全体に経済的な波及効果を生じさせま す。ただ、スポーツ複合施設はどこにでもある、その発想も当たり前。これからの複合施設には多くの来場客 を呼べるフットサル場が完備されているか、されていないかの違いで、経済面も機能面もリピート率も大きく 変わります。 ――フットサル施設が備わった施設の魅力は。 上永吉:フットサルは幅広い年齢層を集客でき、リピート率も高い。フットサルを始める前にスポーツジムで メディカルチェックを受けて頂いて、必要な筋力トレーニング方法を学び、その効果をフットサルで活かせま す。ということはフットサルのレベルを上げたいという向上心を持ってジムの利用ができる、目標があるから こそトレーニングも継続できます。もちろん、ジム通いの人がフットサルの楽しさを知り、のめり込むという ケースも期待できます。ジムやプールと共有してアスリート的な気分になれます。 ――他施設の利用者も、帰り際にフットサル場で楽しそうにプレーしている選手を見ると、やってみたいとい う人も増えるでしょうね。単体よりも複合化することで生まれる利用価値、施設全体のパワーが発揮されるわ けですね。 上永吉:住宅空間の中に公園や広場をつくるだけでなくフットサル施設を採り入れて頂ければまちは変わりま す。フットサルというスポーツをより知って頂いて、生活空間の中、スポーツ複合施設の中に採り入れたら面 白いという発想をハウスメーカーや地域の建設業者だけではない、まちのつくり手にも求めたいところ。 「セカンドキャリア」。Jリーガーが現役を引退した後の第2の人生をこう呼ぶ。上永吉代表はJリーグで活 躍する選手からサッカービジネスに転向する人を増やし、指導者の育成と強化にも力を入れる。プロとして養 った経験は、サッカーやフットサルを通じて子供達の成長過程に良い影響を与えるという。現役選手へのアド バイス、サッカースクールの設立からレンタルコートの提供、運営ノウハウを広めている。 ――日本リーグ時代は殆どの選手が企業戦士でした。現役を引退しても、企業に守られているという安心感が あったと思います。Jリーグの歴史が浅いためにセカンドキャリアのスタンダードが示されていません。 上永吉:現役時代の選手生活を大切にしてほしいと相談に来られるJリーガーにアドバイスしています。引退 後に何がしたいのかを考え、プロ選手の時にビジネスの基本を学んでほしい。スクール経営者や指導者をめざ すのであれば現役の間に少年時代に通ったスクールの運営に協力して、スクール生を集めるにはどうすればい いか、子供達にどのように教えられるかを体験しておくべきです。 ――将来的にサッカーを生活に結びつけるためにはどうすればいいかという「戦略」を持っていなければいけ ませんね。 上永吉:現役時代の選手の生き方は、引退後の人生に大きな影響を与えます。日本代表の宮本恒靖選手は東京 でフットサルスタジアムをコーディネートしていますし、中村俊介選手も横浜で友人達とフットサル施設を手 掛けています。将来をイメージして、そのためにビジネスのノウハウを学んだり、努力する行為は理想です ね。サッカー選手は引退後も、サッカーに携わっていたい、その想いは殆どの選手が同じだと思います。 ――1つの事に情熱を賭ける経験は人生の中で大きな財産になりますよね。次回もまた、4年後のワールドカ ップ開催時にお話を聞かせて下さい。楽しみにしています。 上永吉英文(かみながよし ひでふみ)=============================== 1959年大阪市生まれ。Jリーグ・ジュビロ磐田の前身であるヤマハ発動機のサッカー選手として日本リーグで 活躍。ラモス瑠偉(現・東京ヴェルディ監督)、木村和司(元日本代表)らと日本サッカー界の黄金期を築い た一人。 =================================================