《地球温暖化対策背景に 拡大する住宅用太陽光発電システム市場》 環境に価値が出る時代だ。2005年は京都議定書の発効、愛知県で愛・地球博の 開催、クールビズという新語が流行するなど環境が一つの大きな話題を呼ん だ。06年は地球温暖化対策推進についての法律「改正・地球温暖化対策推進 法」とエネルギー使用の合理化についての法律「改正・省エネ法」が4月1日 に施行される。本格化する地球温暖化対策への関心は大きく高まり、地球温暖 化の要因である二酸化炭素など温室効果ガス排出量を抑制させる対策を背景に 太陽光発電や風力発電、水力発電など新エネルギーを利用した環境ビジネスが さらに加速しそうだ。焦点は新エネルギーの分野で特に市場の拡大が望めそう な太陽光発電だ。現況を追った。(池上健史) 《建て替えリフォーム分野で伸びる 大阪府では04年度までに8,357件設置》 昨年2月16日、世界規模で二酸化炭素などの温室効果ガス削減を目的とする気 候変動枠組条約、京都議定書が正式に発効された。ロシアなど先進締約国に対 して二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、代替フロン3種類の6つを温室効果ガ スと定めて排出量の削減を義務づけた。2008年から12年の温室効果ガス排出量 を1990年比で5.2%削減を掲げている。
わが国は10年に90年比で6%減らす義務がある。このため二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を抑える対策 の1つとして太陽光などの自然エネルギー利用が求められており、各地でいま、自然エネルギーを利用した環 境ビジネスが広がりつつある。環境ビジネスに精通する関係者らは「自然エネルギー利用には太陽光発電シス テムが最も適している」と口を揃えていう。 太陽光発電は二酸化炭素を発生せず、発電と需要場所が同じで送電ロスも無く、メンテナンスは極めて簡単と いうのが特徴だ。ただ、夜間や雨天時は発電できない。97年の新エネ法に基づく指針では、太陽光発電の普及 目標は10年度までに設置容量で住宅用システム390万kW、公共・産業用システム92万kW、計482万kWを示 した。また全世界で太陽電池の生産量は年率30%を超え、その約50%を日本が生産し、生産量の約半分を輸出 している。 国内の太陽光発電システム市場は分譲マンションの屋上に設置の集合住宅など住宅用を中心に拡大している。 大阪府では04年度までの設置件数8,375件。住宅用普及は05年度で住宅用システムの技術開発、規模の拡大な どが、国の達成目標に近づいたことから、各種支援策は05年度で終了され、国は06年度から集合住宅など非戸 建て住宅分野への支援に切り替える。また自治体も独自の支援策検討を始める。 《「住宅メーカーが先導を」さらなるコストダウンへ》 新築・既築住宅用における太陽光発電システムの市場を考察したい。太陽光発電、高断熱、オール電化など有 機的な組合せで光熱費ゼロのエコ住宅を完成させ販売が好調な住宅メーカーの話では、新築市場は2000年を境 に全体的に伸び悩んでいるというものの、建替え、リフォームの分野で需要が伸びてきている。 住宅メーカーの声を拾ってみた。「住まい全体のエネルギー活用の最適化は住宅メーカーが新築市場で先導す べき」(関係者A)。「新築用の事例が既築用に応用され、それが太陽光発電を含む新エネルギー関連市場の 拡大につながる」(関係者B)と。また、府内の工事業者は「太陽光発電システムの価格差を均整に」と訴え る。設置業者も「ユーザーは発電効果など安心できる確かな情報を求めている」などと話す。 一方で、太陽光発電システムの焦点はコスト面だろう。薄膜化で使用量の軽減、生産技術の改善、色々な屋根 や場所への取り付け方法の見直しなど、さらなるコストダウンが進んでいる。住宅メーカーはいま、より低価 でより簡単な太陽光発電システム開発をどこまで実現できるか、問われている。 (取材を終えて)住宅用を中心に取材を進めたが、公共・産業業用の設置には新幹線の駅プラットホーム上、 学校や官公庁、民間企業のビル屋上、高速道路の法面、浄水場などで見られる。いま万博記念公園(吹田市) の公園南側で設置工事が進められている日本最大規模の太陽光発電用ソーラーパネルが話題を呼んでいる。本 格化する地球温暖化対策を背景に太陽光発電を導入した環境ビジネスは、まちづくりの世界でも大いに注目さ れるところ。今後、新たな利用開発によってどのように展開されていくのか、楽しみだ。
【写真上は太陽光発電システム住宅用例、写真下は日本最大規模のソーラーパネル設置工事が進む万博記念公 園(吹田市)】 ---------------------------------------------------------------- ■自然エネルギー交流セミナー開催■ 《NEDO技術開発機構ら主催 参加者ら相互理解を深める》 太陽光、風力、水力など自然エネルギーの導入と普及に向けた交流セミナーが1月27日、グランキューブ大阪 (大阪国際会議場)で開催された。NEDO技術開発機構らの主催、近畿経済産業局らの共催、社日本建築学 会、日本太陽エネルギー学会、社日本建築家協会、社全国建設業協会、社建設設備技術者協会近畿支部の後 援。 セミナーは自然エネルギーに関する仕組みや最新の情報提供の共有化、相互に理解を深めることを目的に実施 したもの。府民、設備メーカー、工事・設置事業者、自治体職員ら約150人が参加した。初めに工学院大学名 誉教授で元日本太陽エネルギー学会会長の中島康孝NPO法人建築環境・設備技術情報センター理事長が挨拶 に立ち、「地球人の1人として自然エネルギーを見直していきたい。地球温暖化にブレーキを」と呼びかけ た。 この後、環境コンサルティング事業を進める(株)エイワットの柴田政明代表取締役が講壇に立ち、「京都議 定書が発効され、締約国である日本が温室効果ガスの削減をリーダーとして達成する必要がある。その中でも 自然エネルギーの利用の仕方は重要な問題だ。自然エネルギーを利用するれば、われわれがエネルギーの生産 者に、また消費者にもなる」と言及した。