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鹿島、多床室(相部屋)の入院患者の睡眠環境を最適化する技術を構築

入院患者の睡眠環境を最適化する技術を構築
~良質な睡眠を確保し生体リズムを整え、より良い療養環境をつくる~
  鹿島(社長:押味至一)は、多床室(相部屋)に入院する患者個々に対して、睡眠に与える影響力の大きい「温熱」・「音」・「光」環境を最適化し、睡眠環境を向上する技術を構築しました。
  患者の睡眠環境を整え、生体リズムを安定させることで、患者の療養環境が向上することはもちろん、ナースコールの減少により医療スタッフの業務負荷が軽減するなど、さまざまなメリットが生まれます。
  今後、鹿島はさらなる検証を進めるとともに、患者のニーズにあった睡眠環境を向上する技術を積極的に活用することで、より良い医療施設づくりに貢献してまいります。

  

【技術構築の背景】
  入院生活をおくる患者にとって病室は日常生活の場となりますが、生活環境の変化により不眠を訴える患者は少なくありません。自宅で過ごすような室内環境を病室に整えることで、患者は良質な睡眠をとることができ、それにより生体リズムが安定し、より良い療養生活を送ることが期待されます。
  そこで鹿島は、入院患者の睡眠環境の最適化へ向けて、病室の設計から本質的な解決をはかるべく、本技術の構築に取り組みました。
  技術構築にあたり、東北大学大学院医学系研究科  尾崎章子教授と共同で、多床室の環境特性と患者個々の睡眠状態の実態調査を実施し、その結果、「温熱」・「音」・「光」の三要素が患者の睡眠にそれぞれ大きな影響を与えることが分かりました。また、東京睡眠医学センター長・慶應義塾大学病院講師  遠藤拓郎医師の監修のもと、「温熱」・「音」・「光」環境が睡眠に与える影響を検証する被験者実験を行い、物理的な環境だけでなく、人間の生理面・心理面から見て、より良い睡眠が得られる環境を構築する技術を確立しました。

【睡眠環境向上技術の概要】
■「温熱」環境技術の構築
  病院は住宅に比べると空調設備が整っており、比較的良好な温熱環境ですが、患者それぞれが自分の好みに応じて調節したいという声が多くありました。
  そこで、天井近傍の空気をベッド上に送風する「室内送風装置」を開発し、ベッドごとに送風の入り切りを可能としたほか、風向を調節できるようにしました。身体のなかでも特に発熱量の多い頭部に微弱な風を送風することで涼感が得られ、寝苦しさが解消されます。

■「音」環境技術の構築
  就寝時に病室が静まり返り無音に近い状態にあると、逆に他者の会話声など周辺で発生するさまざまな音が響いて聞こえてしまい、患者の寝付きが悪くなる傾向にあることが分かりました。
  そこで、ベッドの中央に「ブラウンノイズ」を発するスピーカーを設置し、ブラウンノイズと呼ばれる低音から高音まで幅広い周波数を持つ音を適度な音量で発生させるシステムを開発しました。これにより、周囲で発生する話し声などの雑騒音が緩和され、患者は深い眠りにつくことができます。

■「光」環境技術の構築
  人間は、日中に十分な光を浴びることで夜間に深部体温が下がりやすくなり、深部体温が下がると眠りにつきやすくなることが判っています。
  多床室では、窓側と廊下側にベッドが配置されるため、位置によって日中の照度にばらつきが出て、光環境に相違が出てしまいます。
  そこで、窓の上部から入射する光を天井面へ反射させる「ライトシェルフ」を窓面に設置し、反射光を廊下側のベッドまで導きました。ライトシェルフの下にブラインドやカーテンを取り付けることで、窓側の患者への直射日光を防ぎます。直射日光を遮へいしつつ、病室全体に昼光を採り入れられるため、多床室に入院する患者の睡眠環境を均一にすることができます。
  さらに、ベッドサイドに設置するパーテーションと一体型の「模擬窓照明」を開発しました。日中は昼光を通しつつ、足りない照度を組み込まれた照明から補うことで、廊下側の患者も日中に十分な光を浴びることができます。日中一定の照度を保つことで、患者は安定した質の良い睡眠を得られます。

  

  これら3つの「温熱」・「音」・「光」環境を最適化する技術のうち、温熱環境技術の室内送風装置と、光環境技術のライトシェルフは医療法人社団三友会あけぼの病院(東京都町田市)に既に導入されており、高い評価を得ています。

  

【今後の展開】
  鹿島は、このように入院環境のあり方を病室の設計から本質的に見直し、患者のニーズにあった睡眠環境を最適化する技術を積極的に活用することで、新規の医療施設の建設や既存の病室の改修など、より良い医療施設づくりに貢献してまいります。

鹿島建設(株)

http://www.kajima.co.jp/

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