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奥村組、山岳トンネル工事における高速ずり処理システムを開発

山岳トンネル工事における高速ずり処理システムを開発
  株式会社奥村組(本社:大阪市阿倍野区、社長:奥村太加典)は、発破工法を用いた山岳トンネルの掘削工事において、掘削により発生したずり(岩石片)を高速で処理するシステムを開発し、実大規模の実証試験により、その高い処理性能を確認しました(平成28年4月19、20日に、発注関係者や報道関係者に試験を公開)。

【背景】
  幹線鉄道・道路の整備を目的とした長距離大断面の山岳トンネル工事が多数計画されている中、早期開通に向けた急速施工の実現が求められています。発破工法を用いてトンネルを掘削する場合の一連の施工サイクルで多くの時間を費やしている作業の一つに、ずりを処理する作業が挙げられ、急速施工を実現するためには、この作業時間を短縮する必要があります。
  近年、特に長大トンネル工事におけるずりの処理には、坑内の環境面および安全面に配慮して連続ベルトコンベヤー(以下、連続ベルコン)を採用するケースが増加しています。連続ベルコンはトンネル掘削の進捗にしたがって延伸させる必要があり、通常この延伸作業は効率の面から、一発破ごとではなく、ある程度まとまった距離を掘削した後に行います。しかし、この方法では、延伸作業を行うまで切羽から連続ベルコンの前端に配置しているずりを破砕するクラッシャーまでの距離が開いてしまい、切羽からクラッシャーまでのずり運搬に時間を要していました(図1)。また、連続ベルコンで搬送する前に行うずりの破砕作業に要する時間もクラッシャーの破砕能力に依存することから、ずりの処理時間を短縮するには、切羽からクラッシャーへのずり運搬効率の向上と、それに相応したクラッシャーの破砕能力の強化が課題でした。

【本システムの概要と特長】
  今回開発した高速ずり処理システムは、切羽側から、直列に配置した2台のクラッシャー、移動式伸縮ベルトコンベヤー(以下、伸縮ベルコン)および連続ベルコンの順で構成されており(図2、写真1)、以下の特長を持っています。

特長(1):伸縮ベルコンの採用による切羽からクラッシャーへのずり運搬効率向上
  発破時には伸縮ベルコンを縮め、クラッシャーを切羽から約40mの地点まで退避させることで、飛石による損傷を防止します。発破終了後、クラッシャーをずり発生箇所近傍(切羽から約20m)に移動させると同時に伸縮ベルコンを延伸して、クラッシャーから連続ベルコンにずりが搬送できるようにします。通常の施工では切羽とクラッシャーの距離は平均60m程度ですが(図1)、伸縮ベルコンを使用することで、この距離を20m程度まで近づけることが可能となり、切羽からクラッシャーへのずり運搬時間を大幅に短縮できます。

特長(2):直列に配置した2台のクラッシャーによる二段階破砕と分散投入との併用による破砕能力の強化
  サイドダンプ等を用いてずりを切羽側に配置したクラッシャー(以下、一次クラッシャー)に投入すると、一次クラッシャーで大割りされたずりが、そのまま坑口側に配置したクラッシャー(以下、二次クラッシャー)に投入され、ベルコン搬送に適したサイズに小割りされます。この二段階破砕により、1台のクラッシャーのみで小割する従来方式と比べ、クラッシャーの破砕能力を向上させることが可能となります。
  また、一次クラッシャーを経由して二次クラッシャーに投入されたずりの中には、小径で破砕不要なものが相当量含まれるため、二次クラッシャーの破砕能力には余裕が生じます。この余力を利用して、一定の頻度で二次クラッシャーにずりを直接投入するという分散投入を併行して行うことにより、さらに効率よく破砕することが可能となります。

【実証試験の概要と結果】
  茨城県桜川市の採石場において、掘削断面70m2のトンネルを想定した実大規模の実証試験を行いました(写真2)。発破時の退避位置からのクラッシャー移動と伸縮ベルコン延伸の後、クラッシャーへのずり運搬、破砕、伸縮ベルコンによるずり搬送という一連の工程を実施した結果、従来のクラッシャー1台で伸縮ベルコンを使用しない場合と比べ、ずりの処理能力(連続ベルコンへの時間あたりのずり供給量)が60%以上向上することが確認できました。

  今後は、本システムを山岳トンネルの急速施工に寄与する技術として、「長孔発破」との併用も視野に入れ、積極的に提案していきます。

  


(株)奥村組

http://www.okumuragumi.co.jp

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