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鹿島、山岳トンネルの切羽前方の湧水データを高精度に計測する「スイリモ」を開発

山岳トンネルの切羽前方の湧水データを高精度に計測する「スイリモ」を開発
超長尺ボーリング削孔時の先端部湧水圧と口元湧水量を連続的に把握
  鹿島(社長:押味至一)は、長大トンネルにおいて有用な地質等の前方探査方法である超長尺コントロールボーリング調査において、これまでは把握が困難だった削孔先端部の湧水圧と口元湧水量をボーリング削孔と同時に連続的に計測するシステム「スイリモ(水(すい)リサーチ・モニター)」(特許出願中)を開発しました。これにより、切羽前方にある湧水区間の状況をこれまで以上に正確に把握でき、本掘削の前に適切な湧水対策工を検討・選択できるため、より安全に工事を行うことが可能となります。
  本システムを、大阪府で施工中の箕面トンネル西工事において削孔中の700mの超長尺ボーリングに適用し、湧水区間の状況を精度よく把握できることを確認しました。

  
■開発の背景
  山岳トンネルでは切羽前方の地質や湧水区間の状況を事前に把握することが、地山の安定性確保や工事の安全上非常に重要です。特に掘削中の突発的な大量湧水は、工程の遅延のみならず、甚大な労働災害につながる恐れがあるため、湧水区間の位置や湧水の程度を事前に把握することが求められます。このため、長大な山岳トンネルにおいては切羽前方の調査手法として、近年500m以上の超長尺コントロールボーリング調査による前方の断層破砕帯等の地質状況の把握が行われています。
  しかし、これまでの湧水に関する調査や計測は、口元で断続的に行う方法であり、複数存在する湧水区間の正確な湧水データを把握することは困難でした。湧水圧の正確な測定方法としては、ボーリング削孔後ロッドを一旦引き抜き、区間湧水圧測定用の管(パッカーシステム)を別途挿入する方法が考えられますが、作業に非常に大きな手間がかかるうえ、再挿入時に孔崩れのリスクが生じる等の課題がありました。
■「スイリモ」の概要
  そこで鹿島は、切羽前方の湧水区間の湧水圧・湧水量を超長尺ボーリング削孔と同時に正確に、かつ連続的に計測できるシステム「スイリモ(水(すい)リサーチ・モニター)」を開発しました。
  本システムは、以下の2つの計測技術を組み合わせたものです。

○先端部湧水圧の測定
  ボーリングマシン先端部に電源内蔵型水圧計ユニットを装備することで、削孔中の先端部の湧水圧の計測を可能にしました。これにより、別途パッカーシステムを挿入するという手間をかけることなく、複数の湧水区間がどこに・どの程度存在しているかということが精度よく把握できます。

○口元湧水量の自動計測
  超長尺ボーリングでは、ボーリング孔口元からの排水量から湧水量を把握しています。この口元に電磁流量計を設置することにより、これまで断続的に作業員が手作業で測っていた口元での湧水量が、連続的に自動で計測できるようになりました。

  *参考資料は添付の関連資料「参考資料2」を参照
■超長尺ボーリングでの「スイリモ」の検証試験
  箕面トンネル西工事では、河川直下で湧水が予想される区間において、700mの超長尺コントロールボーリングによる先進ボーリングを行いました。その際、「スイリモ」を用いて削孔先端部の湧水圧測定と口元湧水量の連続自動計測を行い、ボーリング調査で得られる他の情報と合わせ、総合的に地質を判定し、湧水対策工の要否検討に役立てることができました。「スイリモ」によって得られた湧水区間における湧水圧と湧水量のデータは、実際の地質や水理状況と合致しており、その精度の良さも確認しています。
  同工事では、今後も1,000m級の超長尺ボーリングを予定しており、さらに安定して先端水圧と口元湧水量を計測できるよう、引き続き検証を行う予定です。

  *参考資料は添付の関連資料「参考資料3」を参照
■今後の展開
  鹿島では、今後、さらに長距離化が予想される山岳トンネルに、超長尺ボーリングによる切羽前方の水理情報を高精度に得られる「スイリモ」を積極的に適用し、最適な地山安定工法の選定と、工事の更なる安全性向上を目指していきます。
■工事概要
  工事名:新名神高速道路  箕面トンネル西工事
  発注者:西日本高速道路株式会社  関西支社
  工事場所:大阪府箕面市
  工期:2012年6月~2016年6月
  施工者:鹿島建設株式会社
  工事諸元:トンネル施工延長  上り線2,916m  下り線2,895m、掘削工法  NATM掘削

鹿島建設(株)

http://www.kajima.co.jp/

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